艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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245話 ピンクの悪魔(5)

「ひとみ‼︎いよ‼︎今どこにいるんだ⁉︎」

 

通信の相手はひとみといよ

 

ステルスでも使っているのか、居場所が分からない

 

《ぶっこおいすうか⁇》

 

《ろ〜しゅる⁇》

 

「危ないからすぐに工廠に来るんだ‼︎」

 

《ぶっこおいすうか⁇》

 

《ほっといたあ、きけんれすお》

 

ほんの一瞬だけ、二人を信じてみようと思った

 

「…出来るのか⁇」

 

《れきう‼︎》

 

《みといて‼︎》

 

ひとみといよが急に黙った

 

《あ〜…》

 

《う〜…》

 

透き通った声がタブレットから聞こえて来た時、ガリバルディがミサイルを二発放った

 

「ガリバルディ、ミサイル発射‼︎目標…ガリバルディ⁉︎」

 

ミサイルは先程と違い、一旦上空で距離を取った後、発射した艦であるガリバルディに向かう

 

「ミサイル着弾‼︎命中です‼︎」

 

二発共ガリバルディに直撃し、一発は速射砲を破壊

 

もう一発は甲板に打撃を与えた

 

《どあ‼︎》

 

《あたたか⁉︎》

 

「凄いぞ‼︎どうやってやったんだ⁉︎」

 

《もっぱついくか⁇》

 

《ちんでもあいましぉ‼︎》

 

ガリバルディに打撃が入った事により、外で歓声が上がる

 

ひとみといよが何処からかガリバルディのミサイルを操り、ガリバルディ自身に当てて打撃を与えている

 

その攻撃は数分間に渡って続き、ガリバルディは見るも無残に大破して行く

 

《ど〜だ〜‼︎》

 

《あいったか‼︎》

 

遂にガリバルディは動けなくなり、甲板から乗組員が海に逃げている

 

それを見て、親潮の持っていた無線器に話し掛けた

 

「横須賀‼︎聞こえるか⁉︎」

 

《聞こえるわ‼︎どうやったの⁉︎》

 

無線の先の横須賀でさえ驚いている

 

「後で説明する。艦娘達はどうした⁉︎」

 

《動ける子は海に逃がしたわ。呼び戻してガリバルディの乗組員を逮捕していいかしら⁇》

 

「頼んだ‼︎」

 

数分後には外洋から艦娘達が戻り、ガリバルディの乗組員の逮捕が始まる

 

 

 

俺と親潮は工廠で臨時の救護所を作り、きくづきやダイダロスの乗組員の手当てをしていた

 

「ダイダロスさん…」

 

ダイダロスはガリバルディに体当たりをしたまま動いていない

 

最悪の事しか頭に過ぎらない

 

「かっこつけるからっ…こうなるんですっ…‼︎」

 

そんな中、涼月の声が聞こえた

 

「ねー頼むよハニー…もう少し丁寧に…」

 

「ダメですっ…‼︎ダイダロスを潰したお仕置きですっ…‼︎マーカスさんにっ…痛い注射をして貰いますっ…‼︎」

 

ダイダロスさんを頭の上で担いだ涼月が来た

 

ダイダロスさんは身体中傷だらけだが、いつも通り涼月の尻に敷かれている

 

いつも通りの二人、元気そうなダイダロスさんを見て、その場に居た皆が安堵の息を吐いた

 

「どうしようもない方を連れて来ましたっ…‼︎治せますかっ…⁇」

 

「ここに寝かせてくれるか⁇」

 

過去に長門が使っていた臨時用のカプセルがある

 

浴槽型の艦娘用のカプセルで入渠専用だが、ダイダロスさんの傷レベルなら問題なく治せる

 

涼月はダイダロスさんを頭の上で担いだまま浴槽の前に立ち、少しプルプルした後…

 

「ほれ」

 

と言って浴槽に放り投げた

 

ボチャァァァアン‼︎と凄い音と水しぶきが出たが、ダイダロスさんはちゃんと浸かっている

 

「ハニー」

 

「何ですかっ…‼︎」

 

「ありがとう」

 

「死にたがりの面倒を見るのはっ…これが最初で最後ですっ…‼︎」

 

涼月は流し目でダイダロスさんを少し見た後、最後に笑った顔を見せて工廠を出て行った

 

「どこ行くんだ⁉︎」

 

「本物の試射をっ…見せてあげようかと思いましてっ…‼︎」

 

入り口付近で振り返った涼月は満面の笑み

 

涼月が向こうを向いた時、工廠の中からは何故か拍手が上がっていた

 

 

 

「レイ。軽い診察なら手伝うぞ⁇」

 

「頼んでいいか⁇机の引き出しに聴診器がある」

 

「オーケー」

 

アレンの助太刀が入り、治療はスムーズに済みそうだ

 

「ないぞ〜⁇」

 

「んなバカな…」

 

いつもの場所にあるはずの聴診器が無い

 

「ここにスペアがあったんだが…」

 

「医務室に置いてきたんじゃないか⁇」

 

「だといいが…よしっ‼︎これでオーケーだ‼︎」

 

「ありがとうございます」

 

話しながらも処置を進め、包帯巻きが終わる

 

そこに横須賀が来た

 

「レイ。ありがと」

 

「いいさ。捕虜にするのか⁇」

 

表ではガリバルディの乗組員がゾロゾロと救助され、捕虜として捕まえられている

 

「そうね。ちょっと流石に強請るわ」

 

「女の子の方のガリバルディはどうなった⁇」

 

「それが見付かってないのよ。捜査範囲を広めるわ」

 

「分かった。こっちはもう上がれる。重体が少なかったのがまだ救いだ」

 

死人が出なかったのがまだ救いだな…

 

それにしてもガリバルディは何処に…


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