艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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24話 二つのタマゴ(3)

「…」

 

「提督」

 

キッチンにいたはまかぜが、机に何かを置いた

 

「これは”シュトーレン”と呼ばれるお菓子らしいです。ちょっと食べて下さい」

 

「いただきます」

 

その場にいた全員がシュトーレンを口に入れた

 

「美味しいですか⁇」

 

「うん、フルーツケーキみたいで中々」

 

「甘くて美味しいわ。これは初めての食感かも」

 

「ン〜…シットリ⁇フワフワ⁇フシギナショッカン…」

 

「これをあの二人に振る舞います」

 

「ナイスなアイデアだな‼︎」

 

「これなら、あの二人も安心して食べると思います。後は晩御飯のお楽しみです」

 

「楽しみにしてるよ」

 

タバコに火を点け、何気無しにテレビをつけた

 

《…在、この機体の情報を集めています》

 

「おいおいおいおい‼︎」

 

「あら、懐かしいわね」

 

偶然テレビに映ったのは、黒い戦闘機

 

「⁇」

 

はまかぜとチェルシーは不思議そうな顔をしているが、私とローマはテレビに映った機体を知っていた

 

《繰り返しお伝えします。本日未明、所属不明の戦闘機の残骸が砂漠で発見されました。この戦闘機の残骸は、損傷から見て数年前の…》

 

「ったく…人の過去をニュースにするなっての‼︎」

 

「まぁ、聞きなさいな」

 

《この機体は数年前、国連軍最強と言われた空戦部隊”サンダーバード隊”の機体と思われ、現在その行方を追っています》

 

「残念だな。そりゃブラック・アリス隊の時のエンブレムと機体だ‼︎」

 

テレビのニュースに突っ込みながらも、気になってしまう

 

《サンダーバード隊の隊員は、深海棲艦反攻作戦の時に全員消息を絶ち、現在も行方を捜索中との事です》

 

「…嫌味な奴だ」

 

みんな死んで、横須賀と俺しか残ってないってのに…今更何を

 

《では、次のニュースです…》

 

その後のニュースは至って普通のニュースだった

 

政治がどうとか

 

法律がどうとか

 

ま、政治家が国を牛耳ってる内は平和だろうに

 

国がヤバくなったら、真っ先に逃げるのはこいつらなのに…

 

気付かぬ間に、拳に力がこもる

 

「政治は嫌い⁇」

 

「…あぁ」

 

「昔、何かあったの⁇」

 

「よく分かったな」

 

「目を見れば分かるわ。怒ってる」

 

「ま…いつかは話す時が来るから、今言っておくよ」

 

「なぁに⁇」

 

「…昔、政治家の乗ったヘリを叩き落とした。それも三機」

 

「あら」

 

 

 

そう、あの時だ

 

自分の故郷と良く似たあの街だ

 

今からまさに護ろうとしていた街から、五機のヘリが飛び立った

 

地上では、まだ市民が逃げ回る中、政治家達はいの一番でヘリで街から離脱しようとしていた

 

私はその時、無性に腹が立った

 

そして、気付いた時には部下にヘリの撃墜を命令していた

 

無論、搭乗者は全員死亡

 

軍からは滅多打ちに怒られたし、他の隊からの反感も凄かった

 

だけど部下のみんなや、当時まだ整備士だった単冠湾君はこう言ってくれた

 

”隊長の言った事に間違いなんか無い”

 

あれからだろうな

 

国から出動要請が来なくなったのは

 

現に提督業も横須賀君から言われてしている


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