艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

812 / 1086
240話 吹雪ちゃんとシチュー(2)

次の日の朝…

 

執務室のワンコの足元でヨチヨチ歩きながらぬいぐるみで遊ぶ吹雪

 

「吹雪〜⁇」

 

ワンコの声に反応し、吹雪は上を向いた

 

「僕はワンコ。ワンコだよ」

 

「ぱ」

 

「ふふっ‼︎」

 

一文字でも話してくれたワンコは、無性に嬉しくなり、吹雪の頭を撫でた

 

「今日は一日休みダズル‼︎」

 

「おはよう榛名」

 

「おはようダズル」

 

「しろ」

 

榛名の顔を見るなり、開口一番に”しろ”と言う吹雪

 

「よっこらせぃ‼︎」

 

榛名はワンコの足元に居た吹雪を抱き上げ、カーペットの上に連れて来た

 

「しろ、ごはん」

 

「腹減ったダズルか」

 

「ごはん」

 

「分かったダズルよ」

 

榛名は棚から赤ちゃん用のおせんべいの袋を取り出して来た

 

「いただきます、ダズル」

 

榛名は吹雪に見える様に手を合わせる

 

吹雪はちゃんと榛名の手を真似て、体の前で手を合わせた

 

「はい、どうぞダズル‼︎」

 

ぬいぐるみ片手におせんべいを食べる吹雪を、榛名は愛おしそうに眺める…

 

そんな榛名を、ワンコがこっそりと眺める…

 

サクサクと音を立て、吹雪は5、6口で一枚を食べ終えた

 

「しろ、ごはん」

 

「お昼までもう少しダズル。これが最後ダズルよ」

 

もう一枚だけ吹雪に渡し、その隙に榛名は赤ちゃん用のおせんべいの袋を棚に戻した

 

「おしゃぶりでも咥えてるダズル」

 

吹雪におしゃぶりを咥えさせ、またワンコの所に置いて榛名は執務室を出た

 

「おはよ〜ニム」

 

「おはよう、ニム」

 

次はニムが執務室に来た

 

「吹雪もおはようニム」

 

ニムが吹雪の前に来ると、吹雪はすぐに擦り寄り、ニムはその前に座ってぬいぐるみで一緒に遊び始めた

 

吹雪は単冠湾のほとんどの人に懐いてはいるのだが、序列的に言うとニムは二番目

 

やっぱり一番はリシュリュー

 

そして三番目に榛名

 

その他一人を除いて残りは同率

 

その一人とは…

 

「おはようございます、提督」

 

「おはよう、HAGY」

 

扉が開くと同時に、吹雪はその方向を見た

 

「お、おわ‼︎」

 

そしてすぐにぬいぐるみを床に投げ捨て、ニムに抱き付いた

 

吹雪はニムに抱き付いた後、ニムのお腹付近に顔を埋めて小刻みに呼吸し、全く動こうとしない

 

「大丈夫ニムよ」

 

吹雪の背中をさするが、吹雪は一向にこっちを向かない

 

「お昼ご飯の準備をして参りますね‼︎」

 

HAGYがそう言った瞬間、吹雪の荒い呼吸が一瞬ピタリと止み、HAGYが部屋を出てすぐに呼吸を整えた

 

「なはは…吹雪は分かってるニムね」

 

吹雪が顔も合わせたくない相手は、今しがた執務室を出て行ったHAGY

 

その理由は昼ごはんで明らかになる


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。