艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

809 / 1086
239話 ジョンストンの抱き方(3)

夜…

 

「すてーき」

 

「切ってあげる‼︎」

 

ジョンストンの子供用プレートの上に、切ったステーキが置かれて行く

 

「ジョンストンは今日は何したの⁉︎」

 

「びーだまであそんだ。おえかきした」

 

「後で見せてくれる⁉︎」

 

「うん」

 

まるで親子のようなジョンストンとイントレピッドの会話

 

「サムは今日は何したの⁉︎」

 

「学校に行った後、繁華街の掃除したよ‼︎」

 

「そう‼︎助かるわ‼︎」

 

イントレピッドは子供の扱いが上手い

 

未婚で出産経験も無い彼女だが、何故か包容力が高く、子供達、そして若いパイロットに好かれる

 

「ま、あれだ。イントレピッドは母性が強過ぎてカーチャンにしか見えないんだよ‼︎はっはっは‼︎」

 

「ふふ…」

 

イントレピッドの目が捕食者の目に変わり、リチャードの座っている席に向かう

 

「は…はは…」

 

「…」

 

イントレピッドは無言でステーキを焼き石に当てる

 

「はいっ、リチャード‼︎あっつあつのウェルダンよ‼︎」

 

肉汁が沸騰するまで焼かれたステーキを、イントレピッドはリチャードの口に持って行く…

 

「ごめんなさい‼︎」

 

「あ〜んして‼︎」

 

中々食べようとしないリチャードに対し、イントレピッドは何度もステーキを口元に当てる

 

「ヤダ‼︎」

 

「諦めろリチャード。今のはお前が悪い」

 

「は〜い、美味しい美味しい‼︎」

 

「あぢゃぢゃぢゃぢゃ‼︎」

 

リチャードの口に熱々のステーキが放り込まれる

 

「りちゃど、おいしい⁇」

 

「お、おいひい…」

 

死に物狂いでステーキを噛みながら、リチャードは机に頭を置き、隣にいたジョンストンが頭に手を置いた

 

「お風呂入ろうか‼︎」

 

「うん」

 

子供用の椅子の上でジョンストンは両腕を広げる

 

が…

 

「わ」

 

ヴィンセントは相変わらずジョンストンの首の後ろを掴んで持ち上げ、胸元に置いた

 

「行ってくる」

 

「いてきます」

 

ヴィンセントとジョンストンを見送り、イントレピッドは二人を笑顔で見送った後、リチャードの頭を撫でた

 

「ほらほら、スネないのっ」

 

「うぐぐ…」

 

舌を火傷したリチャードは、嫌々頭を上げた

 

「ねぇ、ヴィンセントのジョンストンの抱っこの仕方、エグくない⁇」

 

「まぁ、たひかにな…」

 

リチャードは舌を火傷したので上手く話せないでいるが、腕を組んで威厳は保っている

 

「もぅ‼︎はい、お水‼︎」

 

イントレピッドから水を貰い、リチャードはそれを一気に飲み干した

 

「まぁ、確かに子供の抱っこの仕方じゃないな⁇」

 

「ジョンストンはちゃんと手を広げてるわ⁇」

 

「もしかして知らないんじゃないのか⁇」

 

ジョンストンはヴィンセントに抱っこされる時、ちゃんと手を広げている

 

それをヴィンセントはガン無視して首根っこを掴み上げる

 

ただ、二人の関係を見る限りヴィンセントがジョンストンを嫌い…という事は決して無い様子

 

ジョンストンはこれでもかと思わせる位ヴィンセントに懐いているので問題無い

 

問題はヴィンセントの抱っこの仕方だ…

 

 

 

「ジョンストンは髪長いな」

 

「ながい」

 

ヴィンセントとジョンストンはお風呂に入る時、いつも一緒

 

ジョンストンは長い髪をヴィンセントに洗って貰い

 

ヴィンセントはジョンストンに背中を流して貰う

 

浴槽に浸かる時は、ジョンストンはヴィンセントの膝の上

 

「100数えたら上がろうな⁇」

 

「うん」

 

浴槽に浸かりながら、二人は100まで数を数える

 

「ひゃく」

 

「よしっ、上がろう‼︎」

 

湯船から上がる時、ジョンストンはヴィンセントの首に手を回し、先まわりで抱き着いた状態にする

 

流石のヴィンセントも素っ裸の少女の首根っこを掴む事はなく、そのまま手を添えて湯船から出る

 

「体拭くぞ〜」

 

「んんんんん」

 

体をタオルで拭く度、ジョンストンは震えた声を出した

 

「さっ、今日はどうしようか⁇」

 

「ぽにて」

 

「よしよし‼︎」

 

ジョンストンの髪型のセットはヴィンセントの役目

 

寝る前は大体下ろすか、ポニーテールにする

 

朝は勿論ツインテール

 

完全にヴィンセントの趣味だが、ジョンストンは気に入っている

 

「ぽにて」

 

ポニーテールが出来上がり、ジョンストンは鏡を何度も見ている

 

「ありがと」

 

「さっ、今日はもうお休みだな⁇」

 

「うん」

 

寝室に行くまでは手を繋いで向かう

 

「これ、おえかき」

 

ベッドに入ったジョンストンから、今日皆で描いた絵を貰う

 

「サンドイッチとクッキー食べたんだな⁇」

 

「おいしかた」

 

ジョンストンであろう女の子の周りに、サンドイッチらしき物とクッキーらしき物が描かれている

 

ヴィンセントはそれを見て微笑んだ

 

「おやすみ、びんせんと」

 

「おやすみ、ジョンストン」

 

ジョンストンを寝かせた後、ヴィンセントは食堂に戻って来た


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。