艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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節目節目でご挨拶をする様にしていますが、抜けている場合もございます。ご了承下さい

ここまでお付き合い頂き、誠にありがとうございます

そして、これからもどうかよろしくお願い致します


237話 龍が愛した騎士(2)

「行ってしまわれた…」

 

「煙吹かなきゃ良いがな…」

 

滑走路から飛び立つ、森嶋搭乗南山

 

「そらパーはチョキに弱いわな…」

 

「あれで決まるのは恨みっこなしさ」

 

言ってもキリがないので、結局ジャンケンで決着を付けた

 

俺…パー

 

隊長…パー

 

森嶋…チョキ

 

一撃で二者撃沈

 

森嶋は飛び立った

 

南山が見えなくなるまで、俺達は埠頭で行く末を見ていた

 

森嶋が行う事は大まかに三つ

 

・離陸の確認

 

・標的に対し投下爆弾による試験爆撃

 

・スカイラグーンにて着陸及び給油

 

この三つだ

 

離陸は上手く行った

 

次は試験爆撃だ

 

「クラーケンを使おう」

 

「あれなら範囲内までは追えるな」

 

立体レーダー・クラーケンで南山を追おうと、執務室に来た

 

「来たわね。出てるわよ」

 

執務室に入ると、既に横須賀が立体レーダーを起動していた

 

南山は無事に試験爆撃の標的に近付いて行っている

 

「無線をくれ」

 

横須賀から渡された無線を使い、南山の中にいる森嶋に繋げる

 

「こちらワイバーン。ファイヤナイト、聞こえるか」

 

《ファイヤナイトよりワイバーン。よく聞こえます》

 

「まもなく試験爆撃の標的だ。南山は震電と違って安定性がある。しっかり狙えるまで、何度もやり直していいからな」

 

《了解です》

 

一瞬無線を切り、立体レーダーに向かって話しかける

 

「クラーケン。南山に内部カメラはあるか⁇」

 

《ございます。立体レーダーの上部に表示します》

 

「頼む」

 

クラーケンの対話インターフェイスとの会話を終えてすぐ、立体レーダーに南山のコックピット内が表示された

 

「快適そうだな、ファイヤナイト」

 

《震電より少し広く感じます》

 

「試作機とはいえ、元は爆撃機だからな。標的は見えたか⁇」

 

《見えました‼︎》

 

立体レーダーにもそれはしっかりと表示された

 

《えっ⁉︎》

 

「あ⁉︎ダイダロスだと⁉︎」

 

「味方だぞ‼︎」

 

何故かターゲット表示になっているのは、大湊のレーダー艦、ダイダロス

 

「ファイヤナイト‼︎そいつは味方だ‼︎試験爆撃中止‼︎」

 

《了解‼︎》

 

立体レーダーに表示された南山が、爆撃体勢をやめて空中で大きく旋回する

 

「ファイヤナイト。聞こえる⁇」

 

無線を取ったのは横須賀

 

《聞こえます、クラーケン》

 

「マニュアルを見たとは思うけど、南山に積まれている爆弾は火薬も信管もない、ただ重さを同じにした鉄の塊よ」

 

《ですが‼︎》

 

「向こうも向こうで訓練があるのよ。その代わり、ピンポイントで爆撃なさい。いいわね⁇」

 

《了解しました‼︎再度、爆撃体勢に入ります‼︎》

 

横須賀が無線を切ってすぐ、俺と隊長が意見する

 

「正気か⁉︎いくら火薬も信管も無いとは言え、あんなもん高高度から叩きつけられたらタダじゃすまんぞ‼︎」

 

「ダイダロスにはまともな武装が無いんだろう⁇」

 

俺達の意見を聞き、横須賀はニヤリと笑った

 

「事前情報無しで敵に挑むのは、戦場では日常茶飯事でしょ⁇」

 

この表情と言い方を見る限り、ダイダロスには何か新しい艤装が積まれている

 

《投下‼︎》

 

話している間に、南山が爆弾を投下した

 

「投下コースは完璧だが…」

 

「問題はダイダロスだ」

 

「心配しないで」

 

立体レーダーでは、爆弾を投下した南山が離れて行くのが見える

 

が、ダイダロスは動かない

 

《対爆速射砲、撃ち方始め‼︎》

 

ダイダロス艦内の無線が聞こえた瞬間、一発だけ砲撃音が響いた後、爆弾が空中で消えた

 

《爆弾、空中で消滅‼︎》

 

「こちらでも確認したわ。試験爆撃成功よ‼︎」

 

《このままスカイラグーンに向かいます‼︎》

 

「ゆっくり休憩して帰るのよ。少し遅くなっても構わないからね⁇」

 

《了解です‼︎ふぅ…》

 

スカイラグーンに行くまでの最後の無線通信を終え、横須賀は無線を切った

 

「ダイダロスに対爆速射砲を搭載したの。それの試射をさせて貰ったわ⁇」

 

「なるほどな。互いに実戦に近い経験を積ませた方が良いからな」

 

「頼むから次からは俺達には言ってくれ」

 

「いやよ。毎度毎度敵が事前情報くれるわけないじゃない」

 

「ったく…分かったよ‼︎」

 

「聞き分けの良い子は好きよっ」

 

喋りながらも立体レーダーは見ていたが、再度無線を手に取った

 

「ワイバーンからファイヤナイト。そっちの調子はどうだ⁇」

 

《快適で…ゲホッ‼︎》

 

「ファイヤナイト‼︎ファイヤナイト応答しろ‼︎」

 

いざほとんどの工程が終わろうとした時、秋津洲謹製の悪い癖、白煙噴出が出てしまった

 

《エッ、エンジンから煙がっ‼︎前がっ、ゲホッ…見えません‼︎》

 

「しっかりしろ‼︎操縦桿を握るんだ‼︎いいか⁉︎絶対離すな‼︎」

 

《…》

 

一瞬、森嶋からの無線が途絶えた

 

「ファイヤナイト‼︎」

 

《息がっ…》

 

「ベイルアウトしろ‼︎お前の方が大事だ‼︎」

 

《了解しま…》

 

「ファイヤナイト‼︎おい‼︎森嶋‼︎」

 

森嶋からの無線が完全に途絶えた

 

「ベイルアウトは‼︎」

 

「確認した‼︎救助を出す‼︎」

 

「横須賀‼︎」

 

「今スカイラグーンに打電したわ‼︎」

 

ベイルアウトした地点はスカイラグーンから目と鼻の先

 

既にスカイラグーンから救助が出ている

 

「俺達も行こう」

 

「よし。横須賀、ここは任せた」

 

「上空から森嶋と南山の視認をお願いします。レイ、頼んだわ‼︎」

 

急ぎ足で執務室を出て、それぞれの機体に向かう

 

「あ‼︎お二人さ〜ん‼︎」

 

何も知らない秋津洲が来た

 

「秋津洲の南山はどうかも⁇」

 

「途中で消息を絶った。私達が今から確認して来る」

 

「え…」

 

秋津洲の顔が一気に青ざめる

 

「機体を潰したのは謝る。だが、今は森嶋の安否確認が先だ」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「気にするな。ベイルアウトはしてる」

 

「ごめんなさい…」

 

目が一点を見つめる状態になってしまった秋津洲を脇目に見て、二機はスカイラグーンに向けて飛び立つ…

 

 

 

 

「今救助を出したわ‼︎もう少し耐えなさい‼︎」

 

《…》

 

「心拍数が上昇していますが、バイタルに異常はありません」

 

「気絶してるのかしら…」

 

「恐らくは。親潮ももどかしいです。今は創造主様達を信じま…レーダーに反応‼︎」

 

横須賀と親潮が立体レーダーに目をやる

 

「スカイラグーンからの救援かしら…」

 

「いえ、違います。ただ、敵対組織では無い様子です」

 

立体レーダーに目をやりつつ、森嶋に繋ぎっぱなしの無線に耳を傾ける

 

森嶋がベイルアウトした地点に近付く、味方反応が一つ

 

《あれぇ〜⁇》

 

語尾の伸び代に特徴がある若い女性の声が無線から聞こえた

 

「森嶋少尉に接近…」

 

その女性が海上から森嶋を抱き上げる音が無線で聞こえた

 

《美味しそうですねぇ〜、頂いちゃいましょうかぁ〜》

 

女性は森嶋を肩に担ぎ、そのまま何処かへ連れ去って行った…


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