艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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236話 ミラクル☆オヤシオ(3)

横のスタジオでは橘花☆マンの撮影をしている

 

今日はいつものアクションシーンではなく、会話シーンの撮影らしい

 

その為、いつもとスタジオが違うのだが…

 

「橘花、景雲、メッサーシュミット262…ジェットの先触れがこうも揃うとはな…」

 

「敵の量産型コメットも含めるとかなりだな」

 

健吾とアレンが飲み物片手に真面目に話しているシーンだ

 

「橘花☆マンもメッサーシュミッターもカッコイイよな…」

 

朝霜も橘花☆マンが好きらしい

 

健吾とアレンの普通の会話シーンみたいだが、三つのアクタースーツがズラリと並んでいる光景は圧巻であり、会話しているだけでもカッコイイ

 

…マジカル☆ジェミニと随分違う

 

「あらレイ‼︎迎えに来てくれたの⁇」

 

撮影を終えた横須賀が出て来た

 

「朝霜の社会見学を兼ねてな。マジカル☆ジェミニねぇ…」

 

「橘花☆マンの後に放送する女の子向けの特撮よ⁇」

 

つまり、日曜の朝っぱらからマジカル☆ジェミニは放送するらしい

 

「女の子向けの特撮なぁ…」

 

流石の朝霜も若干引いている

 

「なによ」

 

「女の子向けの特撮でおもっクソ物理攻撃はアタイでもダメだと思うぜ…」

 

「マジカルなんだから魔法使えよ…」

 

「放送見たら分かるわよ‼︎」

 

「創造主様‼︎朝霜様‼︎」

 

親潮と涼月も出て来た

 

「おー‼︎親潮‼︎似合ってんぜ‼︎」

 

「ありがとうございます、朝霜様‼︎」

 

朝霜に褒められ、親潮はご満悦

 

「涼月もなっ⁇」

 

「良かったですっ…‼︎」

 

危ない…

 

真顔でピンに手を掛けていた…

 

「親潮と朝霜はいつもあんな感じか⁇」

 

俺、横須賀、涼月の目線の先には、親潮がポーズを取る前で朝霜がタブレットで写真を撮っている

 

「そっ。仲良くて助かるわ⁇」

 

「親潮さんはジェミニさん。朝霜さんはマーカスさんに似ていますっ…‼︎」

 

「よく言われるよっ‼︎」

 

「よく言われるわっ‼︎」

 

「終わったぁー‼︎」

 

「くぁー‼︎」

 

橘花☆マンの撮影が終わった健吾とアレンが、大きく伸びをしながら出て来た

 

「健吾、アイちゃん来るまで飯でも食うか‼︎」

 

「うんっ‼︎あ、レイさん‼︎」

 

「よっ‼︎」

 

「おっ、そうか。今日は確か新番組の撮影があったんだな⁇」

 

「マジカル☆ジェミニだよ」

 

「マジカル…」

 

「ジェミニ…」

 

健吾もアレンも横須賀に目を向ける

 

「アンタ達の橘花☆マンとメッサーシュミッターみたいなもんよ‼︎」

 

「俺達が男の子向けなら、ジェミニさんは女の子向けの特撮ですね‼︎」

 

「健吾は物分りが良いから好きよ。ね⁇レイ⁇アレン⁇」

 

「橘花☆マン超えると良いな」

 

「ま、まぁ…あれだ。視聴者層が違うから…なっ⁇」

 

「まぁいいわ。さっ‼︎みんなでお夕飯にしましょう‼︎レイのおごりだって‼︎」

 

「ちょ‼︎な、何だと⁉︎」

 

横須賀は着替える為に二人の背中を押し、別の部屋にそそくさと消えた

 

「ま、まぁいい‼︎ここには食う所はタッチバックスしかねぇからな‼︎たかが知れてらぁ‼︎はっはっは‼︎」

 

腰に手を当てて高笑いをする

 

コーヒー位の打撃ならたかが知れている

 

これなら大丈夫そうだ

 

「コマンダンテストのフランス料理店があんぜ」

 

朝霜がタブレットで都市型居住区の地図を開けている

 

「はっはっは…は⁇」

 

高笑いが止まる

 

凄く高そうな料理の名前が聞こえた

 

「朝霜ちゃん。あのビルの最上階か⁇」

 

「だな‼︎新しく出来たみたいだから、お母さんも視察したいんかもな‼︎」

 

「なっ…あ…」

 

アレンと朝霜が窓から場所を確認している

 

ふ、フランス料理だと…

 

これは財布大爆発だぞ‼︎

 

「れ、レイさん…」

 

気まずそうな健吾が肩に手を乗せようとしてくれた

 

「…横須賀褒めた方が良いかな」

 

「今からでも遅くないですし、フランス料理じゃないかも知れませんよ⁇」

 

「よし」

 

朝霜とアレンが窓際で楽しそうに話しているのを余所に、俺と健吾は横須賀を待ち受ける

 

「さー‼︎いっぱい食べましょうねー‼︎」

 

「親潮、初めてです‼︎」

 

「涼月もですっ…‼︎」

 

「横須賀‼︎マジカル☆ジェミニ可愛かったぞ‼︎」

 

「なによ」

 

「そりゃあもう女の子やら若い奴にはバカウケだ‼︎色気もあるしな‼︎な‼︎健吾‼︎」

 

「勿論ですっ‼︎」

 

「今更言っても遅いわよ〜だ‼︎べ〜っ‼︎さっ‼︎行きましょうね〜‼︎」

 

横須賀は俺と健吾に舌を見せ、一足先に二人を連れてエレベーターで下に降りた

 

「終わった…」

 

それと同時に、俺は膝から崩れ落ちた

 

「ははははは‼︎一本取られたなレイ‼︎」

 

「ゴチんなんぜ‼︎」

 

「うぬぐぐぐ…こうなりゃ‼︎」

 

俺はエレベーターに走り、自動扉を開けようとした

 

「レイ‼︎」

 

「レイさん‼︎」

 

「お父さん‼︎」

 

三人に羽交い締めにされ、食い止められる

 

「離せ‼︎こうなりゃエレベーターのケーブルを切り落とすしかねぇんだ‼︎」

 

勿論やるはずはないが、現状そうでもしないと財布が爆発する‼︎

 

「冗談だよ‼︎」

 

「フランス料理なんてねぇって‼︎ちょい遅めのエイプリルフールだって‼︎なっ⁉︎」

 

それを聞き、体の力を抜いた

 

「じゃあ何食うの」

 

「”かむかむ”って店の焼肉だってお〜」

 

「何だそれ」

 

「焼肉だよ。国産和牛のな」

 

「やっぱケーブル落とす‼︎」

 

再び体に力を入れる

 

国産和牛もマズい‼︎財布が爆発する‼︎手持ちが足りない‼︎

 

「食べ放題があっから‼︎」

 

「ジェミニも考えてるっての‼︎」

 

「そうっすよ‼︎」

 

「よし…お前達を信じよう」

 

これ以上抵抗してももう変わらない

 

意を決して、エレベーターを降りた…


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