艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

778 / 1086
231話 疑惑と謎(3)

「呉さんとヴィンセントだ⁉︎」

 

「ヴィンセントさんに付き添いのお手伝いお願いされた時に呉さんもいたの‼︎極秘事項だから、お兄ちゃんにもお話しちゃダメだって言われて…」

 

「呉さんは味方か⁇」

 

「うんっ‼︎ヴィンセントさんと一緒に深海の危ない兵器を処理してるの‼︎」

 

「ちょっと待ってろ」

 

タブレットを弄り、すぐにヴィンセントに通信を繋げた

 

「ヴィンセントか⁇」

 

《マーカスか⁇どうした⁇》

 

「棚町の事で、何か知っているなら教えて欲しい」

 

《君は棚町にこれ以上関わりたく無いだろうと思ったが…》

 

「頼む。友人の間に更生させてやりたい」

 

《分かった。キヨマサを執務室に召集しておいてくれ》

 

「了解した」

 

ヴィンセントとの通信を切り、今度は横須賀と涼月が話す

 

「三人はまだ大湊ね⁇」

 

「はいっ…‼︎お父さんの部屋に居ますっ…‼︎」

 

それを聞いた横須賀は内線のスイッチを押した

 

「私よ。あきつ丸、龍驤。憲兵数人を連れて、大湊の岩井艦長の自室にいる、岩井艦長、ボス神威、ダイダロスさんの三人を救出して来て欲しいんだけど、出来そうかしら」

 

返答はすぐに返って来た

 

《あきつ丸にお任せであります‼︎》

 

《任しとき‼︎すぐ行ったるわ‼︎》

 

「頼んだわよ」

 

「早い…」

 

照月が言った事に間違いは無かった

 

横須賀は行動が速い

 

普段は怠惰丸出しだが、いざと言う時に何だかんだ把握してくれている横須賀に頼る

 

「えと…お兄ちゃん…」

 

「…鹿島が危ない」

 

デスクに手を置き、下を向きながら考える

 

鹿島が危ない

 

それに、時津風も…

 

「ダメよレイ。アンタが行く必要無いわ」

 

顔を上げ横須賀の方を見るが、横須賀の目はPCに向かっている

 

「横須賀俺は…」

 

「行く必要無いつってんの‼︎」

 

急に声を荒げ、俺含め、そこに居た全員が一瞬強張った

 

こんなに怒鳴る横須賀は久々に見た

 

しかし、それでも横須賀はPCから目を離さず、俺の目を見ようとしない

 

「あきつ丸達に任せなさい。私は会議室の準備して来るから。朝霜、隊長とSS隊に連絡入れて召集して頂戴」

 

「お父さんに頼みゃい〜だろ」

 

「いいから入れなさい。分かったわね」

 

横須賀は怒ったまま、執務室から出て行った

 

「ったく…一大事に私情挟むなっての‼︎面倒っちぃなぁ‼︎」

 

悪態を吐きつつも、朝霜は連絡を入れ始めてくれた

 

「どうしてっ…マーカスさんは出られないのですかっ…‼︎」

 

「分からん…」

 

「横須賀さん、どうしちゃったんだろ…」

 

本気で悩む俺達を見ながら、朝霜は軽く唇を噛み締めていた…

 

 

 

 

 

横須賀が帰らないまま、また執務室のドアがノックされる

 

「ヴィンセントだ」

 

「清政です」

 

「開いてる」

 

呉さんを連れたヴィンセントが来た

 

二人共、脇に鞄を携えている

 

「すまないマーカス。もっと早くに話すべきだった…彼は君と因果があると聞いて…」

 

「いいんだ。それより、彼奴の周りの人間を何とかしてやりたい」

 

「そう言うと思ったよ。キヨマサ‼︎」

 

「はっ」

 

ヴィンセントは呉さんから鞄を受け取り、中から書類を取り出した

 

「我々は秘密裏にセイレーン・システム及び深海の艤装の回収を行っている。まぁ見てくれ」

 

ヴィンセントと呉さんが持って来た書類に目を通す

 

そこには、深海の影響を受けた人物や身内が事細かに記されていた

 

何処の基地にも深海の影響を受けた人物や艦娘がいるが、そのほとんどは

 

”影響無し”

 

”生活復帰状態”

 

と書かれ、観察自体続いてはいるが、特に大々的な計画を立てた形跡は無い

 

「大湊がない…」

 

「そう。無いんだよ…全く」

 

ヴィンセントに言われ、机に書類を置く

 

言われてみれば確かにそうだ

 

何処の基地にも深海上がりや、俺見たいに人が深海の所もある

 

関係無いと言われればそれまでだが、これだけ周りがいる中、一人だけいないのは確かに怪しい

 

「俺達の基地はどうなんだ⁇」

 

「大尉と隊長の基地には数人在籍していますが、元帥や大尉達を見た限り、大丈夫と判断したまでです」

 

「大湊は探しても何も出て来ない。だからこそ怪しい」

 

「会議室の準備が出来たわ」

 

「分かった。行くよ」

 

「アンタは来なくていいわ」

 

「何だと⁉︎」

 

横須賀に止められ、足が止まる

 

「ですが元帥、彼の力が…」

 

「とにかく‼︎アンタは今回の事に関わらないで。良いわね、命令よ」

 

「大尉、仕方ありません。ここは我々にお任せを」

 

「心配するな。何とかなるさ」

 

「…あぁ」

 

「行きましょう。照月、涼月、引き出しにお菓子あるから食べていいわよ」

 

「ありがと〜‼︎いただきま〜す‼︎」

 

「いただきますっ…‼︎」

 

大人は男一人、俺だけ執務室に取り残された


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。