艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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230話 カントリーガール、襲来(3)

隊長達を見届けた後、再び牛舎の所に足を運ぶ道中、横須賀が急に言った

 

「新しい子か⁇」

 

「そっ。最近初等部に来た子なんだけど、牛とかアヒルに詳しい子なの」

 

「初等部って事は小学生辺りか⁇」

 

「そうね。高学年行ってるか行ってない位よ⁇」

 

牛舎に戻って来た

 

牛舎自体は出来たが、実はサイロがまだ未完成だ

 

ここは妖精達に任せれば明日には終わるので放っておいて良い

 

とは言え、一応餌は出る

 

その餌の出口に、彼女は居た

 

麦わら帽子を被り、サイロの出口で屈んでいるその少女は、後ろ姿を見ただけでも田舎娘の雰囲気を醸し出している

 

「”峯雲”‼︎」

 

「あ、はい」

 

横須賀に峯雲と呼ばれた少女は立ち上がり、此方を向いた

 

「この人がマーカスよ」

 

「貴方がマーカスさん…話はお聞きしています‼︎私、峯雲と言います‼︎」

 

「宜しくな、峯雲」

 

口と顔は平然を装っているが、目線は自然と一部分に行っていた

 

デカい…

 

はまかぜで慣れたとは思ってはいたが、やはり目が行ってしまう

 

「サイロは言っている間に完成する。後は必要な器具があればこっちで準備する」

 

「粗方は揃ってます‼︎妖精さん達が作ってくれましたので‼︎」

 

「今、明石と夕張に搾乳器造らせてるから、後は…」

 

「搾乳器…」

 

一人悶々と考えている時、早霜が足元に来た

 

「おっ、早霜。モーモーさん見たか⁇」

 

「ちょっとだけ…見た…」

 

「早霜連れて行って来る。峯雲、何かあったら言ってくれよ⁇」

 

「畏まりました‼︎」

 

早霜と手を繋ぎ、牛舎に来た

 

「モーモー」

 

「早霜、モーモーさん…好き…」

 

鳴き声を上げた牛に、早霜は頭に手を置いた

 

そして、次の一言で全員が一斉に動き出す事になる

 

「照月さんも…喜ぶ…」

 

もうそろそろ繁華街でご飯にしようとしていた、アレン、涼平

 

気を抜いていた妖精達

 

それらが一斉に早霜の方を向いた

 

「…忘れてた」

 

「わぁ〜っ‼︎モーモーさんだぁ〜っ‼︎」

 

時既に遅し

 

入口には目を輝かせた照月がいる‼︎

 

「照月さん…早霜と、遊んでた…」

 

照月はいつも高速艇で帰る

 

それを忘れていた…

 

「そ、総員退去‼︎退去だ‼︎」

 

妖精達がワーキャー‼︎言いながら、牛舎付近から猛ダッシュで逃げ

 

アレンと涼平は退去誘導をする為、その場に残った

 

「モ''〜〜〜モ''〜〜〜ざんだぁ〜〜〜」

 

牛に向かってヨダレを垂らしながら笑顔で飛び掛かる照月を見て、時間が緩やかになる…

 

照月の対策をしていなかった…

 

終わった…

 

五分で壊滅だ…

 

「い''〜だ〜だ〜ぎ〜まぁ〜〜〜ず〜〜〜‼︎」

 

それはもう残酷な事になるのは目に見えていた

 

早霜の目を隠し、その場に屈み込んだ…

 

………

 

……

 

 

「…あれ⁇」

 

照月の方をチラ見してみる

 

「牛乳さんまだかなぁ〜⁇」

 

照月は何処からか出した搾乳器を使い、一頭の牛から乳を搾っていた

 

「て、照月…それは…」

 

「あ‼︎お兄ちゃん‼︎あのね、夕張さんと明石さんが、これを試して来て欲しいって言われたから、照月、試しに来たの‼︎」

 

試作品ではあるが、ちゃんとタンクも下に置いてある

 

照月は食が絡むと意外に真面目である

 

「も、モーモーさんは食べないのか⁇」

 

「食べないよ⁇牛乳さん”無限”に出すんだから勿体無いよ⁉︎食べるならあっち‼︎」

 

照月の目線の先には、あの暴れ牛がいる

 

「出来たぁ‼︎お兄ちゃん、照月、これを明石さんに届けなきゃいけないの」

 

搾乳器を外し、照月は牛乳が溜まったタンクを持ち上げた

 

「そ、そっか‼︎照月は偉いな‼︎」

 

「うんっ‼︎照月、頑張るよ‼︎」

 

照月はそのまま牛舎の出入り口まで来た

 

「あんまり暴れると、照月が頭から食べちゃうからね〜‼︎」

 

「ウモ…」

 

入口近くにいる暴れ牛の頭をポンポンしながら、照月は怖い事を言い、牛舎から出て行った

 

「ふぅ…死ぬかと思った…」

 

早霜はキョトンとしている

 

「帰ろう、お父様…」

 

「…帰ろっか‼︎」

 

照月が意外に理解がある事が分かり、ようやく落ち着きを見せた…

 

 

 

 

その日の夜、横須賀に搾乳器を使った事を、また清霜の絵日記にされたのはまた別のお話…

 

 

 

 

 

 

峯雲が横須賀牧場に来ました‼︎




峯雲…カントリーちゃん

最近初等部に来た田舎娘

牛やアヒルの扱いに長けており、簡単な農業だって出来る

牛乳や野菜はキチンと検査された上で繁華街の料理に使われたり、繁華街開放日に売られたりする

はまかぜよりは小さいが、それでもデカい。凄いね‼︎




横須賀牛乳…2リットル250円

横須賀牛乳と書かれているが、横須賀にいる牛の牛乳なので、名前にある人から搾った物ではない

繁華街開放日に売られる美味しい牛乳

栄養価も高く、瑞鳳のプリンにも使われている

繁華街開放日の売り子は日によって違うが、横須賀が売り子をするとものの数分で売り切れる

理由は分からない

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