「ん⁇」
優しく微笑むゲルダがそこにいる
「ウォースパイト、か。良い名前だなっ」
動揺を隠し切れない…
「戦争を軽蔑する者。そう言う意味です」
頷く事しか出来なかった
今度は右足のパーツの裏側に
”War Spite”
と彫り、ゲルダの所に戻って来た
「リヒターさん…」
「ん⁇」
義足を着けながら、ゲルダの言葉に耳を傾ける
「探していた人は…」
その問いには、ちゃんと笑顔で返せた
「もう見つけたよ」
「そう…」
ただ、探していたのはゲルダだったとはこの時は言えずにいた
「帰ろう」
「えぇ」
ゲルダに目を閉じさせ、過去へと戻る…
戻って来たのは、あの日から数ヶ月後の、街を見渡すあの小高い丘の上
まだまだ復興は終わってはいないが、少しずつ活気が戻って来ているのが見えた
「お別れ、ですか⁇」
「そうだな…ゲルダはどうするんだ⁇」
「私は何処か別の所で生きようかと思います」
「そっか…」
最後にゲルダであった少女の顔を目に焼き付けておく
何処かで見た真顔だ…
最後に街を見渡しながらタバコを吸い、鼻歌を歌う
ゲルダはその横で俺の肩に頭を置き、何度も頭を動かしていた
「お〜い‼︎アンタ達‼︎」
後ろにジープが来た
「俺達今から都心にみんなを送って行くんだが、アンタらも乗るか⁉︎」
何処かの軍隊だ
「行くんだ」
「リヒターさん…」
ゲルダは最後にキスをしてくれようとした
だが、それはしてはならないとすぐに思い、人差し指で止めた
「俺の事は忘れるんだ。いいね⁇」
「やっぱり嫌です‼︎そんな事出来ません‼︎」
「…君はこれから長い時間を生きる。その中で、きっと良い人が見つかる」
「嫌っ‼︎」
我が強いのはこの時から変わってないみたいだ…
仕方ない…
「もし…もしだ。これから長い人生の中で、もう一度俺を見かけて声を掛けたら…」
俺は母さんから貰った指環付きのネックレスを”母さん”に託した
「これを俺に返しに来てくれ」
「こんな高価な物…‼︎」
「今日は特別な日になるといいな」
「…えぇっ‼︎」
ゲルダはネックレスの先の指環を大切そうに握り締めた
最後に笑顔のゲルダの頭を撫で、ジープに乗せた
「必ず貴方を探すわ‼︎だから待ってて‼︎」
その言葉に、無言で頷く
「アンタは良いのか⁇」
「俺はいい」
「そっか。達者でな〜」
ジープの運転手のドッグタグの名前が見えた
リチャード・オルコット
後にゲルダと繋がる男だ
「ありがとう、リヒターさん‼︎」
ジープが見えなくなるまで、ゲルダに手を振り続ける…
こうして、俺の人探しは終わりを迎えた…