艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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228話 夢のカタチ(4)

「そろそろ終わった頃合いだな」

 

「行くか⁇」

 

「行こう」

 

「余も行こう‼︎」

 

ネルソンもタマモの成長を見る為、アレンの部屋に戻って来た

 

「どうだタマモ。終わったか⁇」

 

タマモの返答は無い

 

「…タマモ⁇どうしたのだ⁇」

 

「タマモ、どうした⁉︎」

 

「具合でも悪いのか⁉︎」

 

三人が語り掛けるも、タマモからの応答は無い

 

「きそを呼んでくれ」

 

レイはインカムを外しながら俺達にきそちゃんを呼ばせるように言った後、キーボードを叩き始めた

 

「余が行こう。アレン、タマモを頼んだ」

 

「頼んだぞ‼︎」

 

ネルソンが出た後、レイはキーボードを叩き続けながら、俺にインカムを渡した

 

「初仕事だ”父上”。タマモに語り掛けてくれ。俺は居場所を探す」

 

「分かった‼︎タマモ、何処にいるんだ⁉︎」

 

どうやらタマモは俺のPCから抜け出したみたいだ

 

その居場所をレイが探し出し、俺はタマモに語り続ける

 

「はいはい、どうしたの⁇」

 

きそちゃんが来てくれた

 

「これを見てくれ」

 

「AIの通貨経路だね」

 

「何処に行ったか分かるか⁇」

 

「うん。工廠付近にいる」

 

それを聞いたレイがゆっくりと此方を向いた

 

「あ、アレン…」

 

「何だ⁉︎」

 

「え、AIってのはな⁇その…イレギュラーが多いんだ…」

 

何故かレイは目が泳いでいる

 

「タマモは大丈夫なのか⁉︎」

 

「大丈夫どころか〜、その〜…工廠に行けば分かる‼︎」

 

「なら行くぞ‼︎」

 

ネルソンを連れて行き、レイ達より一足早く工廠に向かう

 

「立派な父上だこと」

 

「僕は何にもしてないよ⁉︎」

 

「分かってるさ。あの子の意思さ」

 

レイ達も小走りで工廠に向かう…

 

タマモが居なくなったPCの片隅に、小さく文字が表示されていた

 

”建造中”と…

 

 

 

「開けるぞ」

 

「うぬ」

 

「待て待て待て‼︎」

 

「ちょっと待って〜‼︎」

 

追い付いたレイ達が、工廠の扉を開けようとした俺達を止めて扉の前に立った

 

「アレンさん、ネルソンさん。この扉開けると引き返せないよ⁇」

 

「二人にその覚悟はあるか⁉︎」

 

「よく分からんが余達の子供だぞ‼︎」

 

「何かあってからじゃ遅いんだ‼︎」

 

「じゃあ開けるぞ⁉︎」

 

「行くよ‼︎」

 

工廠の扉が開かれる…

 

「タマモ‼︎」

 

「何処だタマモ‼︎」

 

俺もネルソンも工廠の中で叫ぶが、何処にもいない

 

「おいレイ‼︎来てくれ‼︎」

 

「ここから見てるよ」

 

「家族は誰にも邪魔されちゃいけないからね」

 

「なに⁉︎」

 

そう言って、レイときそちゃんは入り口に立って微笑み合っている

 

「父上‼︎母上‼︎」

 

呼ばれ覚えのある呼ばれ方が工廠に響いた

 

その声が聞こえるなり、ネルソンはゆっくりと歩みを速め、声のした方に走った

 

そして、声の主を抱き締めた

 

「タマモ‼︎」

 

「母上じゃあ母上じゃあ‼︎」

 

ネルソンにはすぐに分かった

 

目の前にいる少女がAIのタマモだと…

 

「なっ…タマ…⁉︎」

 

焦ってレイの方を見返すと、顎で”早く抱き締めてやれ”と合図した

 

「父上‼︎」

 

巫女服に身を包んだ”娘”を抱き締めるのに、言葉は要らなかった

 

「タマモっ‼︎」

 

「父上‼︎」

 

タマモを抱き上げ、高い高いする

 

「ずっとこうしたかったんだ…」

 

画面の向こうやネックレスの中にいた自分の子供が今、こうして自分の元に現れた

 

こんなに嬉しい事はない

 

「…やっぱりレイの友達だね⁇」

 

「…あぁなるんだよ。そのうち分かるさっ」

 

そう言って、レイはきそちゃんの頭を撫でた

 

「ふふっ‼︎あ、そうだ。名前を決めなきゃ‼︎」

 

「タマモじゃダメなのか⁇」

 

「余はタマモで構わん‼︎」

 

「わっちもタマモがよい‼︎」

 

俺達はタマモに新しい名前を付ける事を反対したが、きそちゃんは引き下がらなかった

 

「新しく産まれて来たんだ。新しい名前も必要だよ⁇」

 

「なら…」

 

「待て。余が決めたい」

 

考えようとした矢先、ネルソンに止められた

 

「実は何と無く決めていたのだ。タマモは日々学ぶ子だ。知能も日々進んでいる。日々学び、日々進む…”日進”はどうだ⁇」

 

「「「おぉ〜…」」」

 

そこにいた全員が納得した、意味も響きも綺麗な名前

 

誰も反対する奴は居なかった

 

「凄い良い名前じゃん‼︎」

 

「こりゃ決定だなっ」

 

「日進…か」

 

「わっちは幸せもんじゃあ‼︎」

 

全員が日進の方を向く

 

「わっちは、父上にも母上にも名前を付けて貰うた。わっちはどっちも好きじゃ‼︎」

 

「日進…貴様は良い子だ‼︎」

 

「良い子だっ‼︎」

 

俺もネルソンも日進を撫で繰りまわす

 

「さっ‼︎俺は帰りますかねっ‼︎」

 

「邪魔しちゃいけないしね‼︎」

 

「レイ‼︎きそちゃん‼︎ありがとう‼︎」

 

「気にすんな。お互い様だっ」

 

「またね〜‼︎」

 

引き際を理解しているレイときそちゃんは、そう言い残すと工廠から出て行った…

 

「さぁ日進‼︎皆の所に行こう‼︎」

 

「うぬ‼︎楽しみじゃ‼︎」

 

「行くぞアレン‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

日進を中心に手を繋ぎ、俺達は皆の待つ場所へと帰った…

 

 

 

 

 

水上機母艦”日進”が産まれました‼︎




日進…巫女服ちゃん

アレンがネルソンに預けていたAI”玉藻”が体を持った姿であり、アレンとネルソンの子供

巫女服を着て産まれて来た理由は、アレンがベッドの下に隠していた漫画をネルソンが見せた為

一人称がわっち、言語が広島弁なのもそこから

管制AIな為、物覚えや知識の吸収が早い

元がアーセナルシップの為、何らかの特殊艤装を持てる可能性がある

現在はラバウルで愛宕や大和達と共に家事をしている

好きな物は一番最初に覚え、一番最初に作れるようになったオムレツ



重巡航管制機”妲己”…アレンの”夢の形”

アレンが考案していた空中艦隊計画の旗艦

空母能力及び何らかのアーセナルシップの役割もこなし、それらを撃ち出す能力があった

莫大な費用が掛かる為企画は頓挫したが、設計図はネルソンのネックレスに入っていた



九十九型エンジン…複合サイクルエンジン

アレンが考案し、実現可能にした傑作エンジン

初期動作だけ少量のガソリンで行い、クリーンな電力を次々に生み出す

例…初期動作→水力発電→風力発電→タービン回転時の回転エネルギー

タナトス級には”飯綱型”と呼ばれる頑丈で静かなエンジンが載っている



マーカスが外国の神様やそれに近い名前を付けるのに対し、アレンは漢字の名前を付ける。面白いね

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