それからもネルソンは合間を見つけては、タマモに色々な事を教え続けた
例え寝る前10分だけでも、毎日話す時間を作った
それでも、夫婦生活やラバウルの皆とは仲良くやっていた
そして、ある日の夜…
「タマモ。これは団子だ」
PCの画面に団子の画像を出し、タマモに話し掛ける
勿論、答えが返ってくる訳ではない
「ん⁇」
突然メモが開き、文字が打たれて行く
”団子 オムレツ”
「おぉぉぉお‼︎アレン‼︎おいアレン起きろ‼︎」
「ん〜⁇」
驚いたネルソンはすぐにアレンをバシバシ叩いて起こし、PCの画面を見せた
「これ…タマモがか⁉︎」
たった一行の文だが、目を擦っていたアレンは一気に目が覚めた
自分が産み出したAIがコミュニケーションを取ろうとしているのだ
「そうだっ‼︎タマモ、余の名前はネルソンだっ‼︎」
ゆっくりとだが、メモに書かれて行く文字
”ネルソン”
「俺はアレンだ‼︎」
”アレン”
二人の声を聞き取り、ちゃんと答えを返した
「凄い…」
”父上 母上”
「そうだぞっ‼︎余はタマモの母だっ‼︎」
「俺がお父さんだ‼︎」
”タマモ”
「そうだっ‼︎貴様の名前はタマモだっ‼︎」
「き、記録だ…記録‼︎」
アレンはビデオカメラを持って、ネルソンとPCを映し始めた
「よいかタマモ。余が好きなのは紅茶だっ‼︎」
”紅茶 紅茶はダージリン”
「偉いぞタマモ‼︎余が好きな菓子は分かるか⁉︎」
”スコーン”
スコーンと画面に文字が打たれ、ネルソンはアレンの顔を見た
「凄い…」
「偉いぞタマモ‼︎流石は余とアレンの”子供”だっ‼︎」
ネルソンはPCの中にいるタマモに向かって話し掛けている
再びネルソンの何気無い一言で、アレンの思いが変わる
そっか
ネルソンにとっては、タマモは子供なのか
だからこんなにタマモに教えているのか…
…そう言えば、ジェミニもそうだ
ひとみちゃんといよちゃんと出会って、ジェミニは随分母親らしくなった
AIには母性本能をくすぐる何かがあるみたいだな…
”父上”
「ほらっ、アレン‼︎」
ネルソンからインカムを貰い、それを付けた
「どうしたタマモ」
ゆっくりと文字を打つタマモ
打たれて行く文字を見て、アレンもネルソンも息が詰まった
”タマモ いらない子⁇”
「そんな訳あるか。俺の大事な子だ」
”どうして ネックレスに 入れて 母上の 所に?”
そう文字が打たれ、言葉が詰まった
そんなアレンを見て、ネルソンはアレンからインカムを取り、再び付けた
「アレンはな。タマモが死んで欲しくなかったから、余に預けたのだ」
ネルソンの問い掛けに、タマモの返答は無い
「今の今まで、アレンは余達を護ってくれていたのだぞ⁇」
”本当⁇”
「あぁ。本当だ。アレンは立派な父親だぞ‼︎」
”よかった”
「ふふ…」
生身の我が子を撫でるかのように、ネルソンはPCを撫でた
「さっ。今日はもう休もう。タマモ、また明日なっ」
”おやすみなさい 母上”
「おやすみ、タマモ」
”おやすみなさい 父上”
タマモは二人に返事を返した
それだけでも、二人の親は心躍った
その夜、アレンとネルソンは同じベッドで沢山の話を話した
明日は何を教えようか…
明日は何を見せてあげようか…
一分一秒進む毎に、親の顔になっていく二人…