艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、227話が終わりました

今回のお話は、ネルソンのネックレスの中身のお話です

そして、新しい子が出てきます

果たして誰なのか…


228話 夢のカタチ(1)

「アレン。そう言えばこれには何のデータが入っているのだ⁇」

 

休暇中のアレンとネルソンがいるラバウル

 

朝ごはんを終えて、食堂のソファーで横になりながら雑誌を読んでいたアレンの近くに来たネルソンがネックレスを見せた

 

ずっとネックレスを護っていたネルソンは、気になってはいたが、中身を見る事は無かった

 

「見るか⁇」

 

「うぬ‼︎」

 

早速アレンの部屋に移動してPCの前に座り、ネルソンからUSBを受け取り、PCに挿した

 

何度かアレンがキーボードを叩くと、何かの設計図が出て来た

 

「空中艦隊計画か」

 

「そっ。俺の夢だ」

 

ずっと前に愛宕と見ていた資料より、更に細かい資料がそこにあった

 

「ん⁇これは⁇」

 

ネルソンの目に一つの資料が入る

 

「”ツクモ型エンジン”の設計図さ」

 

「ツクモガタエンジン⁇」

 

「複合サイクルエンジンさ。少しの燃料で最初の発電器を動かして、それらで別の発電器を動かす。それを用いて充電して静かな状態で物を動かせるエンジンさ」

 

「潜水艦に向いてそうだな」

 

「マーカスのタナトス級に、この”イヅナ型”が乗ってる」

 

イヅナ型エンジンは燃料で起動した後、水力発電で動き、その余力で風力で発電し、それらで溜まった電力を動力にしたり、兵装を管理している

 

簡単に言うと、ガソリンでの起動と電力によるクリーンな起動の二つが可能なエンジンだ

 

最初だけガソリンで起動さえしておけば、後は様々な発電方法でエネルギーを産み出せる

 

「こいつはなんだ⁇」

 

「こいつは…」

 

ネルソンの目線の先には、何やら完成間近の設計図

 

そしてAIがあった

 

「巡航管制艦”ダッキ”、管制AI”タマモ”…良い名だなっ」

 

「まっ…上手く行かないのはいつもの事さっ」

 

顔を見合わせて微笑み合う二人

 

アレンはネルソンと軽いキスをした後、機体のある場所に行った

 

ネルソンはアレンを見届けた後、PCに目を戻した

 

「色々考えていたのだなっ…」

 

多量にある設計図を見ながら、ネルソンは微笑む

 

完成間近まで来ていた、火力プラットフォーム

 

載せる機材まで事細かに描かれた、電子プラットフォーム

 

そして、無人管制による重巡航管制機…

 

何らかのアーセナルシップとしても活躍が期待されていたみたいだが、途中で頓挫してしまっている

 

アレンの夢の塊がそこにあった

 

そして、最後にAIに目をやった

 

”玉藻”と名付けられたそのAI

 

「そうか…ふふっ」

 

ネルソンは気付いた

 

このAIは、今までずっとネルソンと一緒にいたのだ

 

アレンから預けられた大切なデータだと思っていたが、AIと聞いてその思いが変わった

 

「良い子だぞ、タマモ」

 

そう言って、ネルソンはタマモが入っているPCを撫でた…

 

 

 

 

それから数日…

 

「よいかタマモ。これはオムレツだ」

 

夜中にネルソンは眼鏡を掛けてPCにネックレスの中にあるUSBを挿して座り、PCに話し掛けていた

 

「何してるんだ⁇」

 

アレンがコーヒー片手に、ネルソンが座っている椅子に腕を置きながらPCを眺めている

 

「タマモに色々教えているのだ」

 

アレンはコーヒーをすすり、ネルソンではなくPCを見ている

 

「レイには遠く及ばないなっ…」

 

「比べる必要は無い。アレンはアレン。タマモはタマモだ。よいかタマモ…」

 

何気無いネルソンの言葉を聞き、アレンはネルソンの後頭部を見て微笑んだ

 

アレンはずっと気になっていた

 

自分は何かとレイの二番手な事が多い

 

潜水艦だって、艤装だって、医療だって…

 

それが今、ネルソンのたった一言で吹き飛んだ

 

アレンはそっとネルソンから離れ、何かを持って来た

 

「ん⁇」

 

ネルソンの耳にインカムを付けた

 

「タマモは話せないが、ネルソンの声は聞こえてる」

 

「おぉ‼︎そうか‼︎」

 

アレンはずっとネルソンを見ていた

 

人に何かを教えるネルソンの姿を久々に見たからだ

 

アレンはそんな姿ネルソンの姿を見るのが好きでいた…


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