艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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このお話はリチャードと高山のお話になります

題名にある艦娘と邂逅するのは果たして何方なのか‼︎


第二クリスマスプレゼント運搬部隊 ソウリュウ

第二運搬部隊、横須賀所属ペトローバ隊一機

 

呉所属サンダルフォン隊一機

 

ケプリ機

 

パピヨン機

 

本部隊はトラック基地及び舞鶴基地へ物資運搬

 

 

 

 

「サーイレンナーイ、ホーゥリーナーイ」

 

《中将はいつもこの様に⁇》

 

鼻歌を歌いながら飛ぶリチャード

 

それとは対象的に真面目に飛ぶ高山

 

「ん⁇まぁな〜」

 

《中将⁇また足で運転してないですよね⁇》

 

「硬い事言うなジェミニ〜。平和な空だぞ平和な〜」

 

《…まさかとは思いますけど、酔ってます⁇》

 

「シラフだシラフ‼︎アヴェンジャーに失礼だろ‼︎」

 

レイが戦闘機思いなのは、父親譲りの様だ

 

「さ〜てっ‼︎よいしょっ‼︎」

 

リチャードは足で操縦していた体勢を止め、操縦桿を握った

 

「トラックが見えて来た。パピヨン、そっちは任せたぞ」

 

「了解」

 

パピヨン機との無線を切り、本気の目に変わるリチャード

 

その目には、トラック基地の滑走路が映っている

 

流石は歴戦の空母率いる基地

 

滑走路も煌々と照らされている

 

《中将、その基地だけは着陸せずに投下して下さい》

 

「投下⁉︎何でだ⁉︎」

 

《その基地には蒼龍が居ます。トラックさんからのお達しです》

 

「はは。取って食う訳じゃないだろうよ。降りるぞ〜」

 

《取って食べる子なんですよ‼︎》

 

「何⁉︎うぉっ‼︎」

 

リチャードが着陸しようとした瞬間、地上から戦闘機が離陸し、アヴェンジャーを掠めていった

 

《外しちゃいましたねぇ〜》

 

混線なのか、何処からか無線が入った

 

「ど、何処からだ‼︎」

 

滑走路のど真ん中にツインテールの女の子が立っており、此方の顔を”ニタァ…”と見ているのが見えた

 

《中将‼︎蒼龍から離れて下さい‼︎》

 

「あれがサンタ狩り部隊か⁉︎」

 

《違います‼︎元から蒼龍はあんな感じなんです‼︎》

 

「と、投下ぁぁぁあ‼︎」

 

リチャードは逃げながらコンテナを投下し、そのままトラック基地から離脱した

 

《あれぇ〜⁇逃げるんですかぁ〜⁇まぁ〜、今日はこれ位で許してあげますぅ〜》

 

「ひぃ〜おっかねぇ〜」

 

トラック基地から離陸した戦闘機も引き返して行った…

 

 

 

 

「いらっしゃい。補給⁇それとも、お知らせ⁇」

 

「報告にあった物資の輸送です」

 

「あぁ〜」

 

舞鶴に降り立った高山は、その基地の女性提督、ふちに躍らされていた

 

何せ、ふちはかなりの天然

 

考えがしっかりしている高山からすれば、ただただ翻弄されるだけの存在

 

今でさえ、クリスマスプレゼントの配達をも忘れかけていた

 

「え〜と〜…あ、これだね。羽黒、ちょっとお願いね。まるゆ呼んでくるから」

 

ようやく書類を見つけ、ふちはまるゆを呼びに行った

 

「大変ですね」

 

「この位は楽です」

 

折角羽黒が珍しく気を使ってくれたのに、高山は素っ気なく返した

 

「煙草は⁇」

 

「吸っていいなら」

 

羽黒は執務室の机の引き出しから携帯灰皿を取り出し、高山に投げた

 

「煙草吸って大人しく待ってて。コーヒーでも淹れてあげるわ」

 

「お気遣いなく」

 

羽黒はこの年代の男性の扱いに慣れて来ていた

 

特にマーカス、アレンのコンビ

 

そしてマーカス、ウィリアムのコンビ

 

この二組が来て「コーヒーでも淹れてあげる」と言えば

 

「砂糖とミルク二つずつな」

 

「俺は一個ずつ」

 

「私はミルクだけで」

 

と、注文まで付けてくる始末

 

しかし、羽黒は最近そっちの方が気楽と思い始めている

 

「好きに入れて」

 

「ありがとう」

 

コーヒーと砂糖、そしてミルクを高山の前に置く

 

高山は砂糖とミルクに手を付けず、ブラックで飲み始めた

 

高山がコーヒーを飲み、羽黒が書類整理をしていると、基地が揺れた

 

「何だ⁉︎地震か⁉︎」

 

「まるゆが来たわ」

 

高山はコーヒーを置き、廊下に出た

 

「ありがとまるゆ。今日はクリスマスだったんだね」

 

「厳密に言うならイヴなるものだ。本陣は明日だ」

 

大人の男性が数人掛かりでようやく持ち上がるコンテナを、まるゆは軽く肩に乗せて持ち歩いていた

 

「そっかそっか。チキン食べなきゃね」

 

「我はササミを頂きたい」

 

「うわ…」

 

普通なら怖気付くのだが、ふちはいつもの事なので普通に会話しながら横を歩いている

 

「ここに置いて⁇」

 

「うぬ」

 

「ちょっ‼︎」

 

ドガン‼︎

 

再び基地が揺れる

 

執務室の真ん中にコンテナが置かれ、高山はそれを避けた

 

「うぬが運搬してくれたのか⁇有難き幸せ。このまるゆ、うぬの気持ちをしかと受け止め、感謝しよう」

 

「ありがと〜ございます」

 

「あ、は、はい…どうも…」

 

まるゆとふちに頭を下げられ、高山も自然と頭を下げていた

 

「機体の補給は済ませておいた。客人、しかと休まってから飛び立つといい」

 

「あ、ありがとう…」

 

「ではな。我は寝なければならない。”ぷれぜんと”なる物を頂けなくなるからな」

 

「そ、そうだな…」

 

「そうだ。うぬにもぷれぜんとを差し上げよう」

 

まるゆは鎖で足に繋いでいた”運”と書かれた丸い筒から粉を取り出した

 

「我が配合した特殊なプロテインだ。筋肉増強、新陳代謝も上がるぞ」

 

「頂くよ…」

 

断ったら潰されると感じた高山は、素直に受け取る事にした

 

「では、また機会があれば」

 

「次は繁華街にも寄って下さいね〜」

 

「気をつけてね」

 

「さらばだ客人」

 

ほぼ思考が止まった高山は、何故か”また来たい”と思いながら、舞鶴を飛び立った…


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