艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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22話 雄鶏の弱点(3)

「そろそろ…厳しい指導が必要ですか⁇」

 

「単冠湾‼︎真面目にやれ‼︎死ぬぞ‼︎」

 

「は、はいっ‼︎」

 

そうして、一時間が過ぎた

 

「はいっ、よく出来ましたね。今日はおしまいですよ」

 

「てんて〜ご褒美下さい‼︎」

 

思い出したかのように、大佐が手を挙げた

 

「はいっ。二人共よく頑張りましたね‼︎」

 

先生は私達二人を抱き締めた

 

左右の胸に、一人ずつ埋まる

 

「今日はず〜っと、先生の胸を見てたでしょう⁇では、明日も頑張りましょうね」

 

「頑張れる…かも」

 

「昔と随分違いますね…」

 

「”地獄の香取講習”なんて言われてたんだぞ⁉︎」

 

「思い出すだけで怖い…」

 

「さぁ、そろそろお前も行け」

 

「では、また明日‼︎」

 

単冠湾君が去った後、また手持ち無沙汰になり、脱走と言う言葉が頭をよぎった

 

「あらあら、忘れ物しちゃったわ」

 

「先生‼︎」

 

プリントを忘れたのか、先生が戻って来た

 

「…今は大佐なのね」

 

「…あぁ」

 

二人の表情と話し方が一気に変わる

 

「じゃあ、もう私は先生じゃないわね」

 

「いや、先生だ」

 

「あっ…」

 

先生を無理矢理引き寄せ、膝の上に座らせた

 

「こ、こら…」

 

「俺に”恋”を教えてくれた、永遠の先生だ」

 

「…懐かしいわね。貴方とこうするのも、貴方が空軍に行って以来…」

 

「そうだったか⁉︎横浜で一度逢ったろ⁇」

 

「ちゃんぽん食べた時⁇」

 

「そう…俺にとっての、初めてのデート」

 

「嬉しいわ。私も初めてだったのよ⁇」

 

「そう⁇もっと行ってるかと」

 

「ずっと断ってたの。みんな私を変な目で見るでしょう⁇絶対そんな行為になるって思って…その…」

 

「なら、何故俺はオッケーした⁇」

 

「あれは、その…折角帰って来たのに、私を誘ってくれたから…その…」

 

「その⁇」

 

「い、言わせないで頂戴‼︎もう…」

 

急に照れ始めた先生を、より一層強く抱く

 

「あっ…」

 

「俺を眼鏡フェチにした癖に」

 

「貴方眼鏡フェチなの⁉︎だから艦隊に…」

 

「俺の艦娘に逢ったのか⁇」

 

「えぇ。たいほうちゃん、はまかぜちゃん、武蔵さんにローマさん。後、チェルシーって子も居たわ⁇」

 

「そっか…」

 

「もう結婚相手は決めたの⁇」

 

「みんな同じ質問なんだな…」

 

「ホントは決まってるんでしょ⁇」

 

「…うん」

 

「なら、これをあげるわ」

 

先生はポケットから小さな箱を取り出した

 

「これは、仮だけどケッコンする為の物よ」

 

「何でこんなのを⁉︎」

 

「さっき横須賀君から、渡せって言われたのよ」

 

「貰えないよ、こんなの」

 

「ダメよ。これは先生の最後の授業よ」

 

手に握った箱を無理矢理握らされ、先生はそのまま立った

 

「先生は結婚してるのか⁉︎」

 

「さっき貴方の横に居たでしょう⁇」

 

そう言って、左手に付けた指輪を見せた

 

「た、単冠湾とか⁉︎」

 

「えぇ‼︎今は練習巡洋艦”香取”として、単冠湾の基地にいます。後は貴方だけですよ⁇大佐っ」

 

微笑みながら先生は出て行った

 

「単冠湾の野郎、やるな…」

 

しかし、ケッコンか…

 

仮とはいえ、やはり緊張感する

 

渡す相手は決まっている、が…

 

 

 

 

 

数日後、何とか退院は出来たが、幾つか検査はしなくてはいけないらしい

 

「大佐‼︎おかえりなさい‼︎」

 

真っ先に出迎えてくれたのは、やはり単冠湾君だった


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