艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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223話 その笑顔に、俺は落ちたんだ(2)

「これは何と読む⁉︎」

 

''首

速''

 

「ゔっ…」

 

実に反応しづらい文字だ

 

「この文字は何だ」

 

ネルソンはうつむき、Tシャツの文字を見た

 

「ハイウェイだ」

 

「これはやめておこう。おぉ‼︎こいつは気に入った‼︎」

 

た''

3こ

0焼

0き

''円

 

文字の下には、笹舟に乗ったたこ焼きの絵がプリントされている

 

「たこ焼きだ。日本のB級グルメだ」

 

「よし」

 

これもカゴに入れた

 

「そうだアレン。アイオワの服のサイズは何だ⁇」

 

「確か…」

 

「3L」

 

アレンが詰まっていた時、横から誰かが言ってくれた

 

「グラーフ‼︎」

 

後ろに居たのはグラーフだった

 

手には

 

”わたがし”

 

と文字があり、その下に棒付きの綿菓子の絵がプリントされているTシャツを持っていた

 

「確か貴様はサンダーバードの…」

 

そう言いつつ、ネルソンはこっそりアレンに腕を絡めた

 

「そう。グラーフ。宜しくね」

 

「余はネルソンだ」

 

グラーフはちゃんと頷いた後、アレンを見た

 

「アレン、アイちゃんは3L」

 

「そんなデカイのか⁇」

 

「胸、あるから」

 

それを聞いてこのサイズを聞いて、アレンはようやく「あぁ…」と漏らした

 

グラーフは精算を済ますと、すぐにムッシュを出て行った

 

「確かアレンが余に会う前に好いていたと言うのは彼女か」

 

「そう。ずっと昔だけどな」

 

アレンが顔を下げると、ネルソンは上目遣いで軽く顎を下げ、ほんの少しだけ嫉妬し、大半は嬉しい顔をアレンに見せた

 

「アイオワに服を買ってやりたい」

 

「いいのか⁇」

 

「余はもっとアイオワと話をしたい。もっとアイオワを知りたいんだ‼︎これなんかどうだ⁉︎」

 

いつもは頼もしく、勇ましい顔付きをしているネルソン

 

しかしこの時、瞬間、ネルソンはアレンしか知らない乙女で優しい笑顔を見せていた…

 

少し離れた場所にいた択捉と国後でさえ、その瞬間を見た時、アレンさんはあの笑顔に落ちたんだな…と悟った

 

「よし‼︎こいつにしよう‼︎店主、幾らだ」

 

「全部で1400円っ呪」

 

「出すよ」

 

「余が出すと言ったぞアレン」

 

軽く笑みを送り、軽く首を傾げるネルソン

 

たったそれだけでインパクトがあるが、アレンは素直に従った

 

「分かったっ」

 

鼻で息を吐き、軽く微笑みながらアレンは財布を仕舞った

 

「それはプレゼントにしたい。包んでくれるか」

 

「お安い御用っ呪」

 

占守にアイちゃんのプレゼントを包んで貰い、ムッシュを出て来た

 

「アレン」

 

「ん⁇」

 

「余はこれがしたかった」

 

「いつでも来れるさ」

 

「幸せだぞ、アレン」

 

デレデレの顔をアレンに見せるネルソン

 

ネルソンのそんな顔を見てアレンは言葉を失い、ただただ微笑みを返す事しか出来なかった…

 

 

 

 

 

「帰ったぞ‼︎」

 

「ただいま‼︎」

 

「お帰りなさい‼︎ご飯食べましょ‼︎」

 

「アレン、ここ」

 

愛宕とガンビアに出迎えられ、アレンだけが席に座った

 

「お帰り、Nelson‼︎」

 

「うぬっ‼︎ただいまだ‼︎」

 

アイちゃんに出迎えられたネルソンはキチンと返事を返し、プレゼントを前に出した

 

「コレは⁇」

 

「余はアイオワともっと話したい。もっとアイオワ知りたい。だから、すこしだけでいい。時々は余とも話して欲しい…んだ…」

 

「も…勿論よ‼︎Sorry、Nelson…」

 

アイちゃんはネルソンにギュッと抱き着いた

 

こんなにも自分を知ろうとしてくれていた人を突き放していたのだ

 

「謝るのは余だ…混乱させてしまったな…」

 

そんなアイちゃんの頭を、ネルソンはそっと撫でた

 

「そうだ。プレゼントを開けてくれ」

 

「ウンッ‼︎」

 

アイちゃんがプレゼントの袋を開ける

 

「オォー‼︎」

 

中からは紺色のパーカーが出て来た

 

「アハ‼︎可愛い柄ね‼︎」

 

パーカーの胸部分には

 

”たいやき”

 

との文字と絵があり、背中部分には巨大なたいやきの絵がプリントされている

 

「Thank you、Nelson‼︎」

 

「今度は一緒に買いに行こうな」

 

「ウンッ‼︎」

 

こうして、アイちゃんとネルソンの問題は解決に終わった…

 

 

 

 

 

 

 

横須賀では…

 

「うははははは‼︎ダッセェなんだそれ‼︎」

 

「なによ」

 

「服に唐揚げ定食大盛りはねぇだろ‼︎」

 

執務室では、パッツンパッツンのクソTを着た横須賀が真面目に執務していた

 

「外見なさいよ」

 

「どれ…」

 

外を見ると、至る場所でクソTを着た艦娘が歩いている

 

「おおおおお…」

 

もうワンパンチ当てられると膝から崩れ落ちそうな時に、最後にド派手なアッパーをブチ込んで来た子がいた

 

「お帰りなさいませ、創造主様‼︎」

 

「ははははははは‼︎」

 

「創造主様⁇」

 

あの生真面目な親潮もクソTを着ている

 

それもまた

 

”タ

1500円〜”

 

と、絶妙に訳の分からない文字が描かれ、御丁寧にタイヤの絵までプリントされているから、笑いが止まらなくなった

 

この日からクソTはしばらく流行り、しばらく俺の笑いは止まる事はなかった…


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