艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、222話が終わりました

今回のお話は、アイちゃんとネルソンの悩みと、題名は変わりますが、楽しいお話になります

いきなりラバウルに来たネルソン

他の皆が慣れていく中、アイちゃんだけが少しだけ複雑な思いを抱きます


223話 複雑な親娘

ある日のラバウル…

 

「ネルソン、ほんっとコーヒー淹れるの上手ね‼︎」

 

「お手伝いも、してくれる」

 

「執務も手助けして頂いてますよっ」

 

「気に入って貰えて光栄だっ‼︎」

 

キッチンに立ったネルソンは、カウンター席に座っている、愛宕、ガンビア、ラバウルさんにコーヒーを淹れていた

 

「ネルソン⁇アレンと上手くやってる⁇」

 

ネルソンは新妻。それも愛宕と言う嫁がいる中で来た

 

「うぬ‼︎愛宕に感謝せねばな。ありがとう、私を受け入れてくれて」

 

「大丈夫よ‼︎アレンの好きな人は、私も大切にしなきゃ‼︎」

 

「アレンには、勿体無い」

 

笑い合う二人の傍らで、ガンビアは嬉しさ半分、申し訳無さ半分の顔をしている

 

愛宕がネルソンを受け入れるには、そう時間はかからなかった

 

言われた時は勿論少しは驚いた

 

だが、すぐに気付いた

 

ネルソンはアレンの大事な人

 

アレンがもう一つの指環を誰にも渡さなかった理由も、愛宕は知っていた

 

その相手を、アレンはようやく連れて来た

 

ならば自分もネルソンを好きになる

 

きっと、私も好きになってくれる

 

たったそれだけの理由で、愛宕はネルソンを受け入れた

 

皆が平和な時間を送る中、アイオワが食堂の前の廊下を通って行った

 

「アイちゃん‼︎ネルソンがココア淹れてくれたわよ‼︎」

 

「いらない」

 

「お、おい‼︎アイオワ‼︎」

 

心配になったネルソンが厨房から出て、アイちゃんに手を伸ばした

 

「Don't touch Me‼︎Nelson‼︎」

 

「あ…」

 

アイちゃんに吠えられ、ネルソンは手を下げた

 

アイちゃんはそのまま何処かへ行ってしまった

 

「すまない…余が悪い…」

 

「気にしない気にしない‼︎アイちゃんはまだ慣れてないのよ‼︎」

 

「ん…だと良いが…」

 

ネルソンはアイちゃんに避けられ、見るからに落ち込んでいた…

 

 

 

 

「Papa」

 

「おぉ、アイちゃん。どうした⁇」

 

格納庫で作業をしていたアレンの所に、アイちゃんが来た

 

「ここに居ていい⁇」

 

「おぉ。いいぞ」

 

アイちゃんは格納庫の隅にあった椅子に座って、下を向き始めた

 

明らかにいつもの快活なアイちゃんではない

 

「どうした⁇」

 

「ン〜ン…なんでもナイ…」

 

「ココアでも飲むか⁇」

 

「ン…」

 

アレンが淹れたココアはちゃんと飲むアイちゃん

 

「PapaはNelson好き⁇」

 

アイちゃんが悩んでいるのを見て、アレンはアイちゃんの前に座った

 

「好きさ。ネルソンといると、何度も生き甲斐を感じた」

 

「Mamaはもう嫌いなの⁇」

 

「それはないな。愛宕も好きさ」

 

アイちゃんはココアを飲みながら、アレンの話を聞く

 

「アイちゃんも分かるさ。絶対に」

 

「ねぇ、Papa。Iowa…」

 

「ん⁇」

 

「ンーン…やっぱりいい」

 

聞きたい事は山程あった

 

だが、アイちゃんは聞けずにいた

 

聞いてしまうとアレンを傷付けてしまうかもしれない

 

そんな気持ちが何処かにあった

 

アレンが作業に戻り、アイちゃんは自室に戻って来た

 

テレビを見ながらボーッと考えていると、部屋の扉がノックされた

 

「ハーイ‼︎」

 

自室に戻ったアイちゃんは元のアイちゃんに戻っていた

 

「あ。アイちゃん。お菓子持って来たんだけど…」

 

来たのは健吾

 

手にはお盆があり、お菓子と飲み物が乗っている

 

「Iowaにくれるの⁉︎」

 

「うん」

 

「OK‼︎Come on‼︎」

 

健吾を自室に入れ、一緒にお菓子を食べ始めた

 

「アイちゃんはネルソン嫌い⁇」

 

「嫌いって訳じゃないワ…ただ…どう接していいのか…」

 

「そっか…迷うよね…」

 

アレンには吐けなかった思いを、健吾にはスッと吐けた

 

他人だからこそ、吐けたのかも知れない

 

アイちゃんはネルソンを嫌いな訳ではなかった

 

ネルソンとどう接して良いか分からないでいた

 

だからさっきもネルソンにキツく当たってしまった

 

「俺、思うんだけどね…」

 

「ウン…」

 

お菓子を食べる手を止めた健吾に反して、アイちゃんは気を紛らわせるかのように口いっぱいに食べている

 

「アレンはきっと、ネルソンに愛情を教えて貰ったんじゃないかな」

 

「NelsonがPapaに⁇」

 

「多分、ね⁇」

 

「じゃあMamaは…」

 

アイちゃんが気になるのは愛宕の事

 

「愛宕は…」

 

「言って、ケンゴ」

 

言いたくなさそうな健吾の顔を、アイちゃんが睨んだ

 

「愛宕はきっと、初めて愛情をくれた人がアレンなんだ」

 

「悪いことじゃない⁇」

 

「全然‼︎逆に立派だよ‼︎俺なんか貰いっ放しなのに、アレンはあげてるんだ。普通の人には出来ないよ」

 

そう聞いて、アイちゃんの顔にほんの少しだけ笑みが戻った

 

アイちゃんからすれば、ネルソンが来たから愛宕が無碍にされると感じていたみたいだ

 

「ケンゴは、アミとヤマトとどうなの⁇」

 

「俺はリードするタイプじゃないから…アレンみたいに色々してあげるってのは、苦手なんだ…」

 

「Iowaにしてくれてるのに⁇」

 

「え…」

 

「Iowa、とっても嬉しいワ‼︎ケンゴがこうして会いに来てくれて、お菓子を食べて、おしゃべりして‼︎」

 

「…こんなので良いのかな」

 

「Of course‼︎特にヤマトは喜んでくれるワ‼︎」

 

「んっ。頑張ってみる‼︎」

 

結局、何方が励まされたのか分からないまま、健吾はアイちゃんの部屋を出た


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