艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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221話 お尋ね者は誰ですか⁇(3)

「ここの基地は有村さんがいらっしゃいます。写真の方の事も知っているかと」

 

「すまないな」

 

「恐らく有村さんは厨房にいるかと。有村さんはパティシエでしたのでね」

 

「ほう‼︎」

 

「出港の際にはお知らせします。それまで、ごゆっくり」

 

岩井は作業指揮の為、一旦ガンビアから降りた

 

次いでネルソンも降り、厨房のある食堂へと向かう

 

「おいしいね‼︎」

 

「こえしゅき‼︎」

 

「いよもしゅき‼︎」

 

「おぉ…」

 

食堂ではたいほう、ひとみ、いよがおやつを食べていた

 

ネルソンはその三人を見て、少しホッコリとした

 

「あいこくのひとら‼︎」

 

「えぶぃばれ〜‼︎」

 

「こんにちは‼︎あたしたいほう‼︎」

 

「いよ‼︎」

 

「ひとみ‼︎」

 

「うむ‼︎礼儀の良い子だ‼︎余はネルソンだ‼︎」

 

初めて顔を見る人には、自分から挨拶をすると言うのは、ウィリアムもレイもキチンと教えていた

 

「何を食べているのだ⁇」

 

「たうと‼︎」

 

「ぶい〜べい〜のたうと‼︎」

 

三人共、口周りを紫色にしてブルーベリーのタルトを食べていた

 

「お…」

 

「提督からの差し入れですぅ〜」

 

緑色の着物を着た女の子が、ネルソンの前に同じ物を出した

 

「余も頂いて良いのか⁇」

 

「どうぞぉ〜」

 

ニタァ…と微笑む女の子に、ネルソンは身震いするも、折角出された物なので、頂く事にした

 

「うぁ〜」

 

「あぅ〜」

 

「いただきます」

 

ひとみといよの間に座り、ネルソンはタルトを食べ始めた

 

「ねうしぉん、ろこかあきたお⁇」

 

「イギリスからだ。うむ‼︎美味い‼︎」

 

「ひめしゃんといっしぉ‼︎」

 

「えげれす‼︎」

 

ひとみといよの言葉を聞き、ネルソンはフォークを置いた

 

「イギリスの知り合いがいるのか⁇」

 

「うん‼︎えげれすかあきた‼︎」

 

「ほ、他にもいるか⁉︎イギリスの奴は‼︎」

 

「子供に聞くのはっ、あまり宜しく無いかと」

 

厨房から筋骨隆々のパティシエの服を着た男性が出て来た

 

「す、すまない…」

 

「自己紹介が遅れました。有村と申します」

 

「貴方が…早速で悪いが、この二人を見た事はないか⁇」

 

ネルソンはあの写真を出す

 

「いよちゃん、ひとみちゃん、たいほうちゃん。良いかな⁇」

 

「らいじぉ〜ぶ‼︎」

 

「わういひとちあう‼︎」

 

「おっぱい…」

 

ひとみといよはネルソンの事を既に見抜いている様子で、たいほうはネルソンの膨らみに目が行っている

 

「畏まりました。では、その二人に限り無く近付く場所をお教えしましょう」

 

「うぬ‼︎」

 

「…と、本当は私の口から言うべきでしょうが、この三人が今から行くので、着いて行って見て下さい」

 

目線を下げると、三人がネルソンを見ていた

 

「ねうしぉんもいく⁇」

 

「こ〜しぉくて〜‼︎」

 

「おっきい…」

 

「わ、私はガンビアに乗せて貰って…」

 

「その三人も乗せて行きましょう」

 

岩井が食堂に来た

 

岩井と目を合わせた有村は敬礼を交わす事は無く、互いに小さく一礼した

 

「そろそろ行きましょうか⁇」

 

「ごちそうさあれした‼︎」

 

「おいちかった‼︎」

 

「またたべたい‼︎」

 

「ふふっ‼︎次はもっと美味しいのを作って待っていますね⁇」

 

「まなちゃん、またね‼︎」

 

「またねぇ〜」

 

「マナチャン…」

 

「またいらして下さいねぇ〜」

 

「う、うぬ…」

 

蒼龍にも挨拶を済まし、ネルソンは子供達と共にガンビアに戻って来た

 

 

 

 

「ぎゃんび〜‼︎」

 

「えいえ〜い‼︎」

 

用意された個室でひとみといよが丸窓から外を眺めているのを、ネルソンは腕を組んで眺めていた

 

「…」

 

「なんだ⁇」

 

たいほうはずっとオッパイに目が行っている

 

「ふふ…触ってみるか⁇」

 

「うん‼︎」

 

たいほうを抱き上げ、胸元に寄せる

 

「やわらかいね‼︎」

 

「余のそこは安らぎを与える場所だからなっ。柔らかく、安心するものでなければならない」

 

「…」

 

「眠ったか…」

 

余程ネルソンの胸が安心したのか、たいほうはすぐに眠ってしまった

 

「たいほうねんね⁇」

 

「うむ。食べたら寝るのは良い証拠だ」

 

ベッドの縁に腰掛けていたネルソンの両脇に、ひとみといよも座る

 

「この二人を知っているか⁇」

 

どうしても気になるネルソンは、たいほうを抱っこしたまま、二人に写真を見せた

 

「うん」

 

「ちってう」

 

「何処にいるかは…」

 

「いあない‼︎」

 

「ないちょ‼︎」

 

ひとみといよは頑なに言おうとしない

 

それ所か、目の前に目標達成もチラつかせ始めた

 

イタズラな小娘だ…

 

そう思うネルソンだが、顔は微笑んでいた

 

子供でさえキチンと約束を守る程、二人は子供達に信頼されている

 

「ねうしぉん、ひめしゃんといっちぉのにおい」

 

「ふあふあ」

 

「ふふ、そうか…」

 

悪い人間には敵対意識を向ける二人だが、ネルソンにはそれを向けていない

 

それ所か、既に少し懐いている気もする

 

結局、ネルソンは横須賀に着くまで三人の子守をする事になった…

 

 

 

 

「おぉ〜‼︎ここが横須賀‼︎」

 

ガンビアが横須賀に着いた

 

岩井達が荷降ろしや積み込みをするのを横目に、ネルソンはたいほうを肩車、ひとみといよを両肩に乗せて降りて来た

 

「よこしゅかしゃんのとこいこ‼︎」

 

「おしゃしんあかるかも‼︎」

 

「れっつご〜‼︎」

 

「うぬ‼︎あぁ、そうだ‼︎岩井殿‼︎」

 

ネルソンは三人を乗せたまま、器用に革の鞄からラム酒を取り出した

 

「見つかるといいですね‼︎」

 

少し離れた場所に岩井がいた

 

ネルソンは其方に向かい、ラム酒を岩井の前に出した

 

「これは礼だ。受け取ってくれ」

 

「仕事の一環ですので」

 

「ほら」

 

「では、有り難く頂戴します。ジェミニ元帥は執務室にいるかと」

 

「うぬ」

 

岩井にラム酒の瓶を握らせ、ネルソンは子供達の誘導で横須賀の執務室へと向かう

 

 

 

 

「ここ、よこしゅかしゃんのおへあ」

 

「うぬ…」

 

目標に近付き、流石のネルソンにも緊張が見え始めた

 

意を決し、扉を叩く

 

「開いてるわ」

 

「失礼するぞ」

 

「よこしゅかしゃん‼︎」

 

「あしぉいにきた‼︎」

 

「あらっ‼︎いらっしゃい‼︎」

 

いつの間にか肩から降りていたひとみといよ

 

しかし、たいほうはネルソンから降りようとしない

 

「ありがとうね、連れて来てくれて」

 

「いや、いいんだ…貴様がジェミニだな⁇」

 

「えぇ、そうよ」

 

「私はネルソン。この二人に用があって参った」

 

胸ポケットから写真を出す

 

「この二人に用があるの⁇」

 

「そうだ」

 

「変な事をしないと約束するなら、呼んであげるわ⁇」

 

「女王陛下に誓って約束する」

 

「分かったわ。少し待ってて」

 

「やったね‼︎」

 

「あぁ‼︎ようやく辿り着いた‼︎」

 

肩車したたいほうと微笑み合う

 

「やったねうしぉん‼︎」

 

「やったねうしぉんら‼︎」

 

「そうだ‼︎やったネルソンだ‼︎」

 

ようやくネルソンは二人に辿り着いた

 

後は待つだけだ


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