艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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また少し、物語の伏線に触れます

あの日、隊長の裏でマーカスの相手をしたのは…


218話 フレンチギャルの子育て日誌(2)

「あら。どうしたの⁇」

 

リシュリューは洗濯室にいた

 

「吹雪がウンコした。オムツあるか⁇」

 

「えぇ、あるわ。替えてくれるの⁇」

 

「任しとけ‼︎」

 

こう見えて結構オムツの付け替えは経験してる

 

ジャーヴィスで沢山したしな

 

「さっ、吹雪。オムツ替えような」

 

リシュリューに貰ったオムツとお尻拭きと袋を持ち、吹雪を寝かせ、オムツを替え始める

 

「吹雪は元気な子だな⁇」

 

リシュリューやHAGYの作る料理が余程美味しいのか、吹雪はモリモリ出していた

 

ちゃんとお尻を拭いて、替えのオムツを履かせる

 

「上手いわね⁇」

 

「まぁなっ。よっしゃ出来た‼︎」

 

オムツを履かせ終わると、吹雪はすぐにコロコロ転がり、ハイハイの体勢に入った

 

「そうだマーカス。吹雪の検査おねがいしたいんだけど」

 

「お、分かった」

 

目が覚めたついでだ

 

単冠湾には医療器具も揃っている

 

白衣に着替え、医務室に移動する

 

「検査すリュー」

 

リシュリューに抱っこされた吹雪が来た

 

吹雪はリシュリューの顔を見たり、俺の顔を見たりとキョロキョロしている

 

「さっ、お口見せてな…」

 

金属のヘラで吹雪の口を開けて喉を見る

 

「喉は大丈夫だな…おっ‼︎ちょっとずつ歯生えて来たな⁉︎」

 

吹雪は前歯がほんの少し生え始めていた

 

「よしっ、ありがとな…ちょっと抱っこさせてくれるか⁇」

 

「よいしょ…」

 

リシュリューから吹雪を受け取り、膝に座らせる

 

「吹雪⁇これな〜んだ⁇」

 

吹雪の右側にくまのぬいぐるみをチラつかせる

 

吹雪がそっちに目をやり、右手を伸ばした隙に、左腕から採血をする

 

「よ〜し良い子だ‼︎」

 

「助かったわ⁇」

 

「結果は追って知らせるよ」

 

吹雪が大人しい性格で助かった

 

採血は泣く子もいるからな…

 

横須賀の駆逐艦の一部と阿賀野が泣く

 

白衣を脱いで、吹雪の血液を冷蔵庫の中へしまい、また執務室に戻って来た

 

吹雪をカーペットの上に降ろし、俺も横になった

 

「ここに寝なさい」

 

ソファーの下にもたれたリシュリューが膝をポンポンしたので、言葉に甘える事にした

 

「貴方、昔と変わらないのね」

 

「まぁなっ…」

 

リシュリューの膝は温かい

 

俺はリシュリューを知っている

 

読者の皆は覚えているだろうか

 

隊長がローマを抱いたあの日の事を

 

その日、俺も女に相手をしてもらった

 

その相手がリシュリューだ

 

とはいえ、俺は当時も抱く勇気が無く、朝日が昇るまでこうしてリシュリューに膝枕をして貰い、ずっと話し込んだ

 

ローマは看護婦だったが、リシュリューはバーのダンサーか何かだったハズだ

 

「夢は叶ったみたいね」

 

「何だったかな」

 

「ジェミニを守るんでしょう?」

 

「…忘れたっ」

 

鼻から息を吐き、薄っすらと笑みを浮かべる

 

そんな時、吹雪が此方に向かって来た

 

寄って来た吹雪に手を伸ばし、頬を撫でる

 

吹雪は俺とリシュリューを見ながら体を縦に振っている

 

「ね…私達、もし繋がってたら、今頃この子位の子が居たのかしら⁇」

 

「どうかな…もっと大きいかもな⁇」

 

リシュリューは俺の顔に手を置き、言った

 

「私の本当の名前、覚えてるかしら」

 

「覚えてるよ」

 

「言って頂戴」

 

「何だ。リシュリューは気に入らないか⁇」

 

「いいでしょ。貴方と私の秘密があっても…貴方位しか、もう覚えてないの」

 

「分かった…」

 

真上に映るリシュリューの悲しそうな瞳を見て、リシュリューの本当の名前を言った

 

「”カーラ”」

 

「ん。よろしい」

 

リシュリューの本当の名前は”カーラ”

 

今は戦艦”リシュリュー”として生きている

 

リシュリューはカーラの時から義理堅い

 

あの日だって、制空権確保の為に敵戦闘機を追い払った

 

そのお礼に、と、現地の行きつけのバーのダンサーであったカーラが一晩相手をしてくれた

 

今だって、救われた恩があるからと単冠湾にいる

 

「眠たい⁇」

 

「少し寝たい…いいか⁇」

 

「えぇ。リシュリューの膝で寝なさい。吹雪も寝たわ⁇」

 

ふと腹を見ると、吹雪が腹にもたれかかって鼻ちょうちんを出していた

 

「ふふっ、貴方、子供に懐かれ…」

 

リシュリューが何か言おうとした時、二人共鼻ちょうちんを出していた…

 

 

 

 

 

「ただいまーっ‼︎」

 

「帰ったダズル‼︎」

 

「しっ…」

 

執務室に帰って来たきそと榛名は、ワンコに静かにする様に言われた

 

「寝てるダズル…」

 

三人の目線の先には

 

ソファーの下にもたれかかったリシュリュー

 

そのリシュリューの膝枕で眠るレイ

 

レイのお腹にもたれかかっと鼻ちょうちんを出している吹雪がいた

 

「そっとしとこっか⁇」

 

「うぬ。ウメェコーヒーとケーキでも食べるダズル」

 

「うんっ」

 

結局、三人が起きるまで、ワンコ達は食堂でケーキを食べていた…

 

 

 

 

 

リシュリューの本当の名前をもう一人知っていた事を、俺達はずっとずっと先に知る事になる…


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