艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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21話が終わりました

急激に書いたので、もう少しだけ進めます

パパはこれから入院生活に入ります


22話 雄鶏の弱点(1)

「ん…」

 

「大佐⁉︎」

 

「…ここは⁇」

 

「横須賀の病院です。もう大丈夫ですからね」

 

「そっか…俺は何で倒れた⁇」

 

「覚えてない、ですか⁇」

 

「バイクで転けたか⁇」

 

「そ、そうですよ‼︎そのまま海に落ちて、バイクはオシャカです‼︎」

 

咄嗟に嘘をついた…

 

大佐に嘘をつくのは初めてだ

 

「どれ位寝てた⁇」

 

「一週間です」

 

「たいほうは⁇」

 

「私の所でみんな預かってますよ。たいほうも、武蔵も、はまかぜも、ローマも、チェルシーも」

 

「良かった…タバコが吸いたい」

 

「だ、駄目です‼︎今は安静です‼︎」

 

大佐を無理矢理ベッドに戻した

 

「あっ…」

 

「おっ…」

 

足が絡んで、大佐の上に落ちてしまった

 

「ご、ごめんなさい‼︎痛くないですか⁉︎」

 

「横須賀」

 

「は、はい」

 

「しばらくこうしててくれ。夢の中で、ずっと一人ぼっちでな…」

 

「も、もう…」

 

しばらく大佐に抱き着いたまま、時間が流れた

 

また、武蔵に怒られるかな…⁇

 

でも、今は…いいよね

 

たまには甘えても…

 

「大佐…」

 

「ん⁇」

 

「…私の事、キライですか⁇」

 

「キライ」

 

「ふふっ…ヒドイ人…」

 

より一層強く抱き締め、長い時間を過ごした

 

 

 

 

服を着直し、荷物を持って帰る準備をする

 

そろそろ帰らないと、本当に怒られる

 

「しばらくリハビリ生活をしたら、またあの基地に赴任ですよ」

 

「よろしく頼むぞ」

 

横須賀君が出たのを見計らって、部屋から脱走を試みた

 

「まだ歩ける範囲だな…よし…」

 

そ〜っと病室の扉を開け、表に出た

 

「しゃ‼︎脱走完了‼︎」

 

適当に散策を始め、一つの施設に目が行った

 

「なんだこれ…」

 

恐る恐る中に入ってみると、単冠湾君がいた

 

「た、たい…‼︎」

 

恐らく大佐‼︎と言おうとした口を瞬時に塞いだ

 

「俺は今、脱走の身だ。横須賀辺りにバレたらマズイ」

 

「は、はひ…」

 

分かった様なので、手を離して此方を向かせた

 

「これは…」

 

「懐かしいですか⁇」

 

単冠湾君が一人で整備していた機体に、私は心躍らせた

 

それは黒い機体で、尾翼に少女のエンブレムが描かれていた

 

スペンサーとはまた違った曲線美

 

フィリップとも違う、凛とした立ち姿

 

「Su-37じゃないか‼︎」

 

「当時の機体を限りなく再現しました。よっと」

 

単冠湾君はコックピットに乗り、中を見せてくれた

 

「さ、大佐。前に載ってみて下さい」

 

「タンデムか…よいしょ」

 

「目の前のレーダーが…」

 

こいつと話していると、本当に時間が短い

 

話が合うためか、お互いに質問を繰り返したり、機体に登って塗装を語り合ったりもした

 

最後はコーヒーを飲みながら、机の上の設計図を眺めながら話に没頭した

 

「塗装材に、少しですがレーダーに掛かりにくくするコーティングを施してあります」

 

「相変わらず凄いな…」

 

「まぁ、コーティングだけでは過信しないで下さい…完全に弾く訳ではありませんので…」

 

「後は腕で…か⁇」

 

「えぇ。また御要望があれば伺います」

 

「いや、完璧だ…言う事がない」

 

「ありがとうございます‼︎あ…」

 

「ん⁇なんだ⁇」

 

単冠湾君が怯えている

 

「大佐…やっと見つけましたよ…」

 

「げっ…」

 

100%横須賀の声だ…

 

「安静って言いましたよね〜、私…」

 

「さ、散歩だ。散歩」

 

「帰りますよ〜」


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