艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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前回が暗いお話だったので、今回はちょっと明るめですよ




215話 機械仕掛けの愛(2)

次の日の朝…

 

午前中だけレイが残る事になった

 

隊長とエドガーの代わりにアレンが来てくれて、二人は今見回りをしてくれている

 

「不安だわ…」

 

あの二人に見回りを任せると安心は出来るが不安が絶えない

 

そしてその横須賀の考えは、すぐに的中する…

 

 

 

 

「リチャード‼︎ブレックファーストよ‼︎」

 

いつもならいの一番に起きているリチャードが、この日一番遅く、心配になったイントレピッドが自室まで見に来た

 

「リチャード⁇開けるわよ…リチャード⁉︎」

 

リチャードは自室にいなかった

 

ならば外でタバコでも吸っているのだろうと屋上に来た

 

「いないわ…」

 

寮の何処を探してもリチャードがいない

 

「むっ…」

 

イントレピッドは屋上に設置してある双眼鏡に目が行った

 

繁華街の方を向いている双眼鏡を覗き、端から順に見て行く

 

朝食どきなので、パイロットも艦娘も色々ゾロゾロ出て来ている

 

「むっ‼︎」

 

双眼鏡の倍率を上げる…

 

「いたっ。何食べてるのかしら…」

 

これ以上倍率を上げられないので、結局断念したが、朝食は食べているので一安心したイントレピッドは、ため息を吐きながら食堂に戻って来た

 

「余っちゃったわ…」

 

リチャードの分の朝食が余ってしまった

 

リチャードは朝と夜を沢山食べるので、いつも多めに用意してある

 

「パラリラパラリラー‼︎」

 

「オラオラ‼︎朝だ‼︎飯の時間だぁ‼︎」

 

リチャード分の朝食の処理に悩んでいたイントレピッド

 

窓の向こうでは、朝からハイテンションな二人が超の付く低速でジープを走らせながらエンジンを吹かし、騒音を撒き散らしている

 

「ふふふ…うるさい子にはオシオキね…」

 

悪い顔をしながら、イントレピッドは寮の外に出た…

 

 

 

 

「パラリラパラリラー‼︎」

 

此方もまた、悪そうな顔をしながらジープに乗る二人

 

口でパラリラ言いながら、鈍足ジープでゆっくり見回りを続ける

 

「行って来ま〜す‼︎」

 

「「気を付けて行って来いよ〜」」

 

怖い顔と近寄り難い態度とは裏腹に、子供達は皆二人に挨拶して朝食や学校に向かう

 

「ヒャッハァー‼︎パイロット寮だぜ‼︎叩き起こしてやれ‼︎」

 

「オラ起きてんのか‼︎」

 

運転していたアレンがクラクションを鳴らす

 

「リスト上、夜間哨戒に出た奴はいねぇはずだぁ‼︎」

 

「オラオラ‼︎早起きして健康的な生活を送らせてやるぁ‼︎」

 

アレンはリズム良くクラクションを鳴らし、マーカスは大声を出しながら助手席でマラカスを振っている

 

「ふふふ」

 

突然、ジープのエンジンが切れた

 

「あ⁉︎何しやがんだ‼︎」

 

「マクレガー⁇マーカス⁇」

 

口元はニヤついているが、大層悪そ〜な顔をしたイントレピッドが運転席横から手を伸ばし、キーを捻っていた

 

「く、空母のねーちゃんだ…」

 

「うるさい子にはオシオキが必要ね…」

 

「ヤッベェ‼︎アレン‼︎エンジン掛けろ‼︎」

 

「よいしょっ‼︎」

 

「うわっ‼︎」

 

「それっ‼︎」

 

「はなせ‼︎」

 

イントレピッドの肩に担がれた二人が、寮の中に連れて行かれる…

 

 

 

「そこに座ってなさいよ⁉︎」

 

イントレピッドのパワーに負け、二人はパイロット寮の食堂の席に座らされた

 

「クッソォ…スゲェパワーだ…」

 

「俺達二人担いでピンピンとは…」

 

成人男性二人を担いでもピンピンしてるイントレピッドに、二人は逆らえないでいた

 

「二人共、ブレックファーストは食べたかしら⁇」

 

「今から食べる」

 

「間宮のモーニング食べる」

 

「食・べ・て、ないわよね⁇」

 

キッチンで何かをじゅんびしているイントレピッドが一瞬止まって此方を見る横顔を見て、二人は固まる

 

「食べてない‼︎」

 

「お腹減った‼︎」

 

「ふふっ‼︎正直でいい子っ‼︎リチャードがブレックファースト食べなかったのよ…」

 

二人の前に、パンやらサラダやら肉が置かれる

 

「さっ、食べて‼︎」

 

「頂きます‼︎」

 

「頂きます‼︎」

 

「ふふっ…」

 

イントレピッドは二人の正面の席に座り、頬杖をつきながら嬉しそうに眺め始めた

 

「マーカス。リチャードの様子が変なの。何か知らない⁇」

 

「あぁ…瑞鶴と色々あったんだよ…俺達が首突っ込む事じゃないさ」

 

「男女の問題かしら⁇」

 

「そっ。首突っ込むとロクな事がない。おいアレン‼︎俺のベーコンだぞ‼︎」

 

「お前はウインナー食ってろ‼︎」

 

「ふふっ‼︎」

 

オカズを取り合う二人を見て、イントレピッドは優しく微笑んだ

 

「ごちそうさん‼︎」

 

「ごちそうさまでした‼︎」

 

「またパラリラするの⁇」

 

「まぁな。行くぞパラリラー‼︎」

 

「見回り再開だぁ‼︎」

 

マーカスはマラカスを振りながら運転席に座り、後部座席にマラカスを置いた

 

助手席に座ったアレンはタンバリンを取り、バンバンシャカシャカ鳴らし始めた

 

「おっしゃ行くぞ‼︎」

 

「フォーーーーー‼︎」

 

「「ごちそうさまでしたーーー‼︎」」

 

また鈍足でジープが走り出す

 

笑顔で手を振って二人を見送った後、イントレピッドは頭を抱えた

 

何となく、アドミラルジェミニが心配している理由が分かった気がしたからだ

 

「まぁ…騒がしいのも嫌いじゃないわ⁉︎」

 

 

 

 

ジープは繁華街の手前まで来た

 

二人はジープを降り、マーカスはマラカスを手に持ち、繁華街に入った

 

「マーカス君とアレン君の見回りだぁ‼︎」

 

「オラオラ‼︎ちゃんと朝飯食ってっか‼︎」

 

「「「食べてまーす‼︎」」」

 

間宮に居た艦娘や兵達が一斉に返事をした

 

「フゥーーーーー‼︎」

 

「フォーーーーー‼︎」

 

「「「イェーーーーー‼︎」」」

 

朝からマラカスを振って、タンバリンを鳴らしまくるハイテンションの二人に、そこに居た全員が声援を送り、二人は出て行った

 

「問題はこの先だ」

 

「中将がどう反応するか…」

 

この時間帯、開いているのは間宮かずいずいずっころばし

 

朝からハイテンションなのは、リチャードを励ます為でもあった

 

「行くぞ…」

 

「おぅ…」

 

ずいずいずっころばしの暖簾を分ける…




寮母さんでも、母親はやっぱり強い

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