艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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21話 代償の街(2)

途方に暮れた私は、街の外れの埠頭で立ち竦んでいた

 

「隊長さん⁇」

 

「‼︎」

 

聞き覚えのある声‼︎

 

「こんな所で何してるの⁇来るなら教えてくれたら良かったのに」

 

ビスマルクだ

 

「ビスマルク…」

 

「⁇」

 

私の様子がおかしいと気が付いた彼女は、すぐに駆け寄って来た

 

「どうしたの⁇」

 

「みんなを集めて、この街から離れろ」

 

「…来るのね」

 

「お願いだ」

 

「分かったわ。私は物分かりがいいのよ⁇」

 

「…いい子だ」

 

私はビスマルクの頭を撫でようとした

 

空中で高速で何かが飛び去ったと気付いた時には、もう遅かった

 

街の中心部に何かが落ちた

 

「嘘だろ…」

 

「行きましょ‼︎」

 

中心部に近付けば近付く程、慌てふためく人々が増えた

 

幾つかの建物が燃えている

 

「なんだよ…これ…」

 

昔の記憶がフラッシュバックされる…

 

護り切れなかった、炎上する街…

 

あの記憶だ

 

「…いちょ…隊長さん‼︎」

 

「はっ‼︎」

 

「みんなを避難させるわよ‼︎早く‼︎」

 

ビスマルクと二人で街の人を避難させ始めた

 

「隊長、高台なら大丈夫そうよ‼︎そこに仮設の避難所を作るわ‼︎」

 

「俺はこの辺りで誘導をする‼︎先に行っててくれ‼︎」

 

「分かったわ‼︎」

 

ビスマルクと分かれ、私は避難誘導を始めた

 

「高台に避難しろ‼︎」

 

「あぁ…大佐…どうすれば…」

 

子供を抱えた母親が話し掛けて来た

 

「心配するな。高台で俺の味方が護ってくれる‼︎行け‼︎」

 

「はい‼︎」

 

「ふぅ…あれで最後みたいだな」

 

「大佐」

 

ふと肩を掴まれた

 

「まだいたのか⁉︎早く高台に…」

 

「私は”元”艦娘、日向だ。住民の避難は終わった。貴方も早く」

 

「よし」

 

日向と共に高台に移動を始めた

 

高台に行く為の階段を登っている時、ふと海を見た

 

「…日向」

 

「どうした⁇」

 

「刀を貸してくれないか⁇」

 

「これか⁇ほら」

 

刀を受け取って階段を下り、降り切った所で日向に声をかけた

 

「向こうも気付いてるとは思うが、横須賀鎮守府に救助と増援を要請してくれ‼︎」

 

「貴方はどうする⁇」

 

「…ここで死ぬなら、本望だ‼︎」

 

そう言い残し、海に走った

 

「おい‼︎大佐‼︎くそっ…」

 

 

 

 

「はっ…はっ…」

 

階段から海を見た時、陸に上がる”奴等”が見えた

 

恐らく、刀では無理だ。倒せない

 

だが、時間稼ぎ位にはなるだろう‼︎

 

段々と近付いて来る…

 

角の向こうには、三体の深海棲艦がいる

 

刀を構え、深海棲艦達に向かって行く

 

「⁉︎」

 

「邪魔だぁ‼︎」

 

「‼︎」

 

一体を串刺しにし、持っていた装備の一つを剥ぎ取り、近くにいた一体に向けて撃ち、残り一体となった

 

怯えているのか、奴はジリジリと後退している

 

「オラァ‼︎」

 

刺さった刀を抜き、最後の一体に投げ、脳天を貫いた

 

「ハァ…ハァ…」

 

自分でも驚く位、頭の中は冴え渡っていた

 

刀を抜き、逆の手に剥ぎ取った砲の様な物を持ち、再び海を目指す

 

「嘘…だろ…」

 

海岸線は恐ろしい光景だった

 

 

 

 

 

至る所に黒が目立つ

 

マリアやチェルシーを見ていて気付いてはいたが、やっぱり陸に適応しているのか…

 

「こうなりゃ…殺られるまで殺るだけだ‼︎来い野郎共‼︎この俺が相手だぁ‼︎」

 

私の叫び声で、黒い人影が一斉に此方を向いた

 

「ホゥ…メズラシイ…」

 

海から一人、周りとは明らかに違う個体が近付いて来る

 

頭に二本の角があり、ネグリジェの様な物を着ている、巨大な砲の様な兵器を携えた個体だ

 

「誰だ‼︎うっ…」

 

顎を持たれ、顔を近付かせてきた

 

「アナタハテキジャナイワ…アナタハ…コッチヨ…」

 

「な、何を言ってる…⁇」

 

「カワイソウ…キオクガナイノネ…オモイダサセテアゲル…」

 

「ゔっ‼︎」

 

いきなり口付けをされ、呼吸が止まる

 

仕方無い…

 

「グッ‼︎アナタハコッチ…アナタハミカタ…ヨ…」


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