艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、20話が終わりました

題名でお気付きの方も多いと思いますが、シリアスなお話になります


21話 代償の街(1)

翌朝、高速艇が迎えに来た

 

「じゃ、行って来る」

 

「気をつけてな」

 

みんながまだ眠っている中、武蔵だけ見送りに来てくれた

 

高速艇に乗ってしばらくした後、運転手が話し掛けて来た

 

「聞きましたよ。嫁探しの最中だって」

 

「ふふ…まぁな」

 

「私は、初めて出逢った子と結婚しましたよ」

 

「初めて…」

 

たいほうが頭に過る

 

「ウチの子にはまだ早いな」

 

「ははは‼︎さぁ、着きましたよ‼︎」

 

横須賀鎮守府と大きく書かれ、その偉大さがよく分かる

 

「あの日以来か…」

 

「大佐‼︎」

 

迎えに来たのは単冠湾君だ

 

「今日は会議なんて珍しいですね」

 

「あいつの考える事はよく分からん…」

 

「いた‼︎早く来い‼︎」

 

建物の上から横須賀君が見えた

 

「なんだよ…全く」

 

部屋に入ると、何故か厳重に鍵が締められた

 

「今から言うのは、重大すぎて二人にしか報告出来ない。他言無用で頼みたい」

 

「それは自分の艦隊にもか⁇」

 

「いや、艦隊の子達には伝えてくれ。極秘作戦で行く。内容を伝える」

 

二人の背筋が凍り付く

 

思っていた以上に重大な任務だ

 

「単刀直入に言う。敵性勢力の巣が発見された」

 

「深海棲艦の、か⁇」

 

「そうです。私達は暗号を傍受し、奴等の次の作戦を捉えた。その前に叩く」

 

「奴等の目標は⁇」

 

「…大佐、貴方の街です」

 

「…‼︎」

 

持っていたペンを机に叩き付けた

 

怒りより、焦りの方が勝っている

 

「あの街は、廃艦の受け入れ先です。実質、まだ戦える艦娘の子が大勢いる。奴等はそれを脅威、もしくは味方に引き込めると取ったのでしょう」

 

「止めなければ…作戦開始はいつだ⁇」

 

「3日後です。大佐。貴方にお願いするのは一つだけです」

 

「なんだ⁇」

 

「…空に帰って頂きたい‼︎そして、航空部隊の指揮を執って頂きたい‼︎」

 

私はその言葉を聞き、立ち上がった

 

「…単冠湾君」

 

「は、はいっ‼︎」

 

「俺の機体の手配と整備、また頼めるか⁇」

 

「勿論です‼︎飛び切りのを用意します‼︎」

 

「すまん…お前にしか頼めん」

 

いつもの癖で、単冠湾君の頭を撫でる

 

「少し、一人にしてくれ…」

 

「大佐、今日位街に帰ったらどうだ⁇」

 

「…そうさせて貰うよ」

 

ここから一時間程車を飛ばした所に、私の住んでいた街がある

 

「車を借りたい」

 

「はっ‼︎隊長殿‼︎お好きなのをお選び下さい‼︎」

 

「…じゃあアレ」

 

「はっ‼︎こちらがキーになります‼︎」

 

キーを受け取り、エンジンを掛けた

 

 

 

 

「なんだ⁉︎エンジン音がするな…」

 

鎮守府に爆音が響く

 

それは先程の会議室にも聞こえた

 

「バイク…⁇あっ‼︎」

 

下に大佐が見えた

 

が、気付いた瞬間大佐は居なくなっていた

 

「相変わらず機械系は飛ばしますね…」

 

「はぁ…まぁ、今回は怒らないでおこう」

 

「あの、横須賀さん」

 

「なんだ⁇」

 

「格納庫を一つ、お借り出来ませんか⁇」

 

「使って無いのが幾つかあるが…」

 

「では、私も行動に移りますね‼︎」

 

単冠湾君も部屋から出て行き、私一人が残った

 

「流石は大佐の教え子ですね、何処までも真っ直ぐ…」

 

机にうなだれて、一人悶々と考える

 

ホントは、作戦の為に兵装や人員を準備をしなければいけない

 

なのに…

 

「大佐…」

 

どうしても、大佐の事が頭に過ぎってしまう…

 

大佐の持っていたペンを持ち、また悶々と考える

 

「…んっ」

 

 

 

 

 

 

相変わらずの街、私の故郷…

 

絵に描いたような平和が、ここにある

 

適当な所でバイクを止め、辺りをフラつく

 

適当な奴に逢えると思った

 

みほと出逢った場所

 

祭りの跡地

 

花火の見える高台

 

思い出の場所を巡る

 

誰一人、艦娘に逢わない

 

だが、諦める訳には行かなかった

 

誰か一人、一人だけでいい

 

そこから皆を集めればいい

 

そしたら…

 

そしたら…

 

気が付けば、艦娘の誰とも逢わず、夕方になっていた


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