艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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207話 血に踊る番犬(2)

「れっち〜みぎ‼︎」

 

「こうでちか⁉︎」

 

「そこれぱんちら‼︎」

 

トラックに向かう道中、いつものように古いコンシューマ機でゲームをする

 

俺はタナトスの最終チェックがてら、サブのモニターの前に座っていた

 

画面と睨み合いながら不備がないかチェックをしつつ、タービンやエンジンの稼働具合も確認する

 

「燃料良し…タービン良し…武器管理システム…良しっ」

 

強いて言うならば、衝撃波発生装置の充電が三発中二回しか無い位だ

 

衝撃波発生装置はタービンが回る事で自動で充電されて行く

 

専用のダイナモを使えば充電出来なくもないが、トラックに向かうまでの道中で充電完了するので、その必要は無さそうだ

 

「創造主」

 

いつの間にかゲームを止めたゴーヤが横に来た

 

ひとみといよはゴーヤが流している動画を見ている為、大人しくそれを眺めている

 

「今日はどんなスイーツでち⁇」

 

「ゴーヤはどんなのだと思う⁇」

 

「チョコ系だと思うでち‼︎」

 

いつの間にかゴーヤは俺の膝の上に乗り、足をパタパタと動かしている

 

「しっと〜りしたチョ目的地付近に接近しました。退艦の準備を始めて下さいコのケーキを食べてみたいでち‼︎」

 

トラックに近付き、ゴーヤはアナウンスと普通の会話がゴッチャになる

 

「はははっ‼︎ありがとなっ‼︎」

 

「情けないでち」

 

ゴーヤの頭を撫でた後に膝から降ろし、ひとみといよの後頭部を撫でる

 

「降りるぞ〜」

 

「とあっくついた⁇」

 

「こえうさいしゃん」

 

二人が見ていたのはウサギの動画

 

今まさにニンジンを食べている所で、二人共釘付けになってはいるが、ちゃんと俺に抱っこされる

 

「うさぎしゃん、にんじんたべてう‼︎」

 

「むしゃむしゃ〜って‼︎」

 

「ウサギさんにばいば〜いは⁇」

 

「ばいば〜い‼︎」

 

「またあとれな〜‼︎」

 

ゴーヤが動画を止め、俺達はトラックに足を降ろした

 

 

 

 

 

「いらっしゃい‼︎さっ‼︎座って下さい‼︎」

 

飛龍にトラック基地の食堂に案内され、三人を座らせる

 

「蒼龍はいるか⁇」

 

「あ、はい。お呼びしましょうか⁇」

 

「医務室に呼んでくれ。採血があるんだ」

 

「分かりました‼︎提督にもお伝えしておきますね‼︎」

 

二人は飛龍に任せ、鞄を持って医務室に入る

 

手を消毒して白衣を羽織り、採血セットを机に置く

 

「む〜っ…」

 

「来たか」

 

蒼龍は入り口から顔半分を出し、俺を睨んでいる

 

「すぐ終わるぞっ⁇」

 

「…横須賀さんみたいにするんでしょ」

 

「大丈夫。俺を信じろ」

 

「う〜…」

 

蒼龍は物凄〜く嫌そうな顔をしながら嫌々俺の前に座る

 

「最近はどうだ⁇上質な肉はいたか⁇」

 

「何日か前にパラオの老人を何人か頂きましたけど、老人は美味しくないです」

 

「防衛省の奴はどうしてる⁇」

 

「あぁ‼︎あの方は美味しく頂きましたよぉ〜‼︎良い物ばっかり食べてたんでしょうねぇ〜‼︎ジューシーで肉厚で噛み応えがありました‼︎」

 

「ふ…それは良かった。さっ‼︎終わった‼︎ありがとな‼︎」

 

「え⁉︎もう終わりですかぁ〜⁇」

 

「終わりだ」

 

「次からレイさんにお願いしたいですねぇ〜」

 

「蒼龍が良ければいつでもっ」

 

蒼龍は痛い顔一つしないまま、医務室から出て行った

 

蒼龍の血を専用のケースに入れ替え、冷蔵パックに入れ、一旦トラック基地を出て、タナトスに戻って来た

 

「さてとっ…」

 

カプセルのある部屋の椅子に座り、蒼龍の血液が入ったケースを出す

 

機材の中にそれを入れ、蓋を閉めてスイッチを押す

 

《検査を開始します》

 

これで帰って来た時位には病気やら、万が一誰かと血縁があれば分かる

 

ま、トラックさんは確実だとして、残りは無いと思って良いだろう

 

機材を付けたまま、入り口のロックを確実に締めたのを確認した後、皆の待つ食堂に戻って来た


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