艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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20話 羽を休める場所(2)

「…」

 

話す事が無い

 

私は横須賀君の反対側に顔を向けた

 

横須賀君が女の子なのは、元から知っていた

 

空にいた時からずっと知っていたが、皆と同じ接し方をしていた為、ここまであまり声にしないでいたが、ここまで露骨に女アピールされると、少し意識してしまう

 

「大佐…」

 

そんな甘え声で来るな〜…

 

「あたし…」

 

あたしなんて言うな〜…お前はキリッと私だろうが〜‼︎

 

横須賀君が近寄って来た瞬間、振り返って止めようとした

 

「うぎゅぎゅぎゅ‼︎」

 

武蔵が背後から横須賀君の頭を掴んでいる

 

「ろーまよ‼︎これだ‼︎」

 

「あら…ホントだわ」

 

「お、女で悪いか‼︎」

 

「開き直ったぞ」

 

「開き直ったわね」

 

「離してやれ」

 

武蔵の手がようやく離れ、横須賀君は呼吸を整えた

 

「はぁ…はぁ…んっ…」

 

先程あんな話を聞いたせいか、横須賀君が変に色っぽく見える

 

「エロいな」

 

「エロいわね」

 

「しかも結構巨乳だぞ」

 

「巨乳ね」

 

「ライバルは少ない方がいいな」

 

「そうね」

 

「待て待て待て‼︎」

 

何やら不吉な会話が聞こえたので止めに入る

 

「大佐…」

 

「俺は空ではさっさと決めてしまうが、いかんせん女の戦闘は優柔不断でな‼︎」

 

「大佐らしいです」

 

「ほら、港まで送ってやろう」

 

「う、うん…」

 

手を繋いで、二人が港に向かう

 

「提督はライバルが多すぎる‼︎」

 

「仕方無いわ…隊長は優しくて、強くて、子供が好きだわ。それに、みんなに分け隔て無く接してくれるでしょ⁇」

 

「そうだったな…」

 

思い出す…

 

自分がまだ深海棲艦だった時の事を…

 

提督は、私を二度も救ってくれた

 

そして、私は艦娘として再び生を受けた

 

そうか

 

私は、提督に恩を返す為に生まれたのか…

 

そしてその恩は、私達が生き続ける事で返す事が出来る

 

私達が提督を好きでいる事に間違いは無い

 

ここにいるみんな、提督の事が好きだ

 

なら、それで良いではないか

 

一番は提督がその内決めてくれるだろう

 

私はそれまで、生きる事で恩を返し続けるとしよう

 

「もう少し、考えなくては…だな」

 

「えぇ…」

 

 

 

 

その頃港では

 

「えと…その…今日はごめんなさい…」

 

「いいさ。久し振りにお前の女を見れて良かったよ」

 

「大佐だけですからね。私がこうなるのは」

 

「分かった分かった‼︎早く次の所に行け‼︎遅れるぞ‼︎」

 

横須賀君をタンカーに押し込んだ

 

”彼女”を待っていたかのように、タンカーが出港する

 

「さて…」

 

「提督よ」

 

この声は武蔵だな

 

「どうした⁇」

 

「こちらに振り向かぬのか⁇何かやましい事を考えていたな⁇」

 

「い、いやぁ〜…ははは…」

 

雰囲気だけで分かる、武蔵の殺気

 

「殺しはしない。だから振り返れ」

 

恐る恐る振り返ると、案外普通の武蔵がいた

 

「提督にはこの力を使いたく無かったのだがな。私だけ出遅れた気がしてずっと…その…」

 

「遅れてなんか無いさ」

 

「じゃ、じゃあ、”ろーまにしたあれ”をして欲しい…」

 

「おいで」

 

ローマに続き、武蔵とも口付けを交わす

 

最近多い

 

優柔不断だ、人の思いを踏みにじる

 

そう言われても可笑しく無いさ

 

だけど、もし、これが私が出来る、彼女達が出来る精一杯の愛情表現なら

 

私は受けようと思う

 

「は、恥ずかしいものだな…」

 

「そうか⁇」

 

「そろそろ帰ろう。たいほうも待ってる」

 

「そうだな」

 

食堂に戻り、みんなで御飯を食べ、みんなが風呂に入っている間は、はまかぜの作ってくれたアイスを食べ、風呂に入って、眠る

 

今日は本当に幸せな1日だったな…


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