艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、205話が終わりました

今回のお話は、先日横須賀に来ていたイントレピッドDauが、横須賀に正式に着任する事になります

観艦式では、小さいながらも恋物語があるみたいです


206話 空母のネーチャン(1)

「イントレピッドDauが正式に着任するわ」

 

「あのネーチャンか」

 

「そっ。話によると、駆逐艦の子を連れて来るらしいわ⁇」

 

横須賀と視察と言う名目でタウイタウイモールに行き、ステーキを頬張る

 

この間来たイントレピッドDauが正式に着任するらしい

 

「私の手の回らない事してくれるの‼︎」

 

「例えば⁇」

 

「パイロット寮の掃除‼︎」

 

「他は⁇」

 

「パイロットのご飯作り‼︎」

 

横須賀から聞く彼女の任務は雑用しか出てこない

 

「艦長…だよな⁇」

 

「そうよ⁇」

 

「雑用ならPT達を雇った方が…」

 

「PT達も雇ってるわよ⁇基地の窓拭きしたり、艦娘の服のお洗濯したり、後は繁華街とかの清掃ね⁇」

 

「ちゃんと雇ってんだな…」

 

意外にも横須賀はPT達を使ってくれていた

 

それも中々の適所で使っている

 

「煙草の吸い殻のポイ捨てが繁華街で頻発してるらしいわ。銘柄はカスタードですって。あ‼︎レイはカスタードだったわね⁉︎いけないんだぁ〜‼︎」

 

「悪かったよ‼︎気を付ける‼︎」

 

「そう言うと思ったから、灰皿を各所に置いたわ」

 

「ちゃんとそこに捨てる」

 

「良い子ねっ。さっ、帰りましょ‼︎」

 

ステーキの鉄板を返し、秋津洲タクシーに向かう道中、横須賀は左腕に腕を絡ませて来た

 

「そういやアンタ、左手に何か着けてたわね⁇」

 

「ん⁇あぁ、ヤマシロからのお詫びの品みたいなモンさ。痛いか⁇」

 

「ううん。ちょっと硬いだけよ…おりゃ‼︎」

 

そう言って横須賀は俺の左手を強く握る

 

今の「おりゃ‼︎」の言い方で分かったが、ひとみといよの掛け声の言い方と良く似ている

 

もしかしたらマネしているのかも知れないな…

 

横須賀を左腕にくっつけたまま秋津洲タクシーに乗り、俺は操縦席、横須賀は当然かの様に客席に座り、シートベルトを着ける

 

「ほらよっ」

 

「ありがとかも‼︎」

 

秋津洲にオレンジジュースを渡し、空へ飛び立つ

 

飛んでしばらくした時、客席でどデカイシェイクを飲みながら外を見ている横須賀をミラーで見た

 

「イントレピッドはいつ来るんだ⁇」

 

「明日よ。あら、海上輸送隊だわ‼︎」

 

「お前はまた肝心な事を…」

 

「あ〜‼︎シェイク美味しいわぁ〜‼︎」

 

頭を抑えてため息を吐く俺を余所に、横須賀はシェイクを飲み続ける

 

横須賀に近付き、段々と海上が騒がしくなる

 

「あれか」

 

「そっ」

 

眼下にイントレピッドDauが見えた

 

相変わらずデカい

 

「着水するぞ。秋津洲」

 

「んが〜…」

 

副操縦席に座っている秋津洲は大イビキをかいて寝ていた

 

「ったく…秋津洲‼︎」

 

「はっ‼︎寝ちゃってたかも⁉︎」

 

「もう着水するぞ」

 

「は、はいかも‼︎」

 

二式大艇を港に停め、俺と横須賀が降りる

 

「ありがとね‼︎」

 

「サンキューな‼︎」

 

「あ、あはは…次もお待ちしてるかも‼︎」

 

寝た事をきにしてるのか、秋津洲は後頭部を掻きながら笑って答えた

 

「今日は泊まって行きなさい。明日、隊長とSS隊のみんなが来るから、合流して頂戴」

 

「分かった」

 

明日に備え、今日は横須賀で泊まる事になった…

 

 

 

 

 

次の日の朝、横須賀にパイロット達が勢揃いした

 

「久々の観艦式だなっ」

 

「正装は苦手だ…」

 

「二人共こっち向いて」

 

隊長と俺、そしてグラーフがサンダーバード隊として固まる

 

グラーフに最終の身嗜みを整えて貰う俺達の横で、ラバウルさん、アレン、健吾、そして北上のSS隊四人がピシッとした正装で立っている

 

「他の部隊も居るみたいだな」

 

親父率いるペトローバ隊

 

歴戦の猛者率いるジブリール隊

 

総司令率いるグレンデル隊

 

呉さん率いる若武者、新生サンダルフォン隊とター坊

 

そして…

 

「き、緊張する…」

 

「シバかれたらどうしよう…」

 

「オシッコチビりそう…」

 

「服にシワとかのないかな…」

 

「ふぅ…」

 

ガッチガチに緊張したサンダース隊もいる

 

「あら。今日だったわね」

 

たまたま教材を持ったヤマシロが通り掛かった

 

「今日は学校休みだろ⁇何で教材なんか持ってんだ⁇」

 

「これは私の勉強道具よ。貴方の部下⁇」

 

「そっ。みんなまだ若い」

 

全員に挨拶させようと思ったが、全員それ所ではない

 

「君。ちょっといらっしゃい」

 

ヤマシロに手招きされ、ファイヤクラッカーこと”園崎”が歩み寄る

 

「襟が曲がってるわよ」

 

「あ、はひゃ…」

 

「ん。これでいいわ。何よ」

 

「い、いえ‼︎何も‼︎」

 

そう言う園崎の視線が下に落ちる

 

「あぁ…なるほど…」

 

ヤマシロは結構胸がデカい

 

ヤマシロが園崎の襟を直した時、園崎の胸板にそれが当たっていたのだ

 

「いいわよ。減るもんじゃないし」

 

「…」

 

園崎はヤマシロをジーッと見つめている

 

「…何よ」

 

「あ…」

 

ヤマシロに見つめられた園崎は顔を真っ赤にした後、正気に戻った

 

そんな彼を見て、その周りにいた皆が同じ言葉を思い浮かべた

 

こいつ、惚れたな…

 

「い、行って参ります‼︎」

 

「いってらっしゃい」

 

そんな園崎を、ヤマシロは真顔で彼を見送った…

 

 

 

 

観艦式が始まり、横須賀はあのネーチャンと

 

グラーフは電子戦機の観覧に

 

俺達はラバウルのメンツと一緒に同じ場所でオードブルにパクついていた

 

「たっ、大尉‼︎」

 

「ん⁇」

 

声がした方を向くと、この間俺を叩いた二人がいた

 

「この度は本当に申し訳ありませんでした‼︎」

 

目を合わせた直後に二人して頭を下げた

 

「いいっていいって‼︎演習だったんだろ⁇ホラ食え‼︎サラのチキンは美味いぞ⁇」

 

「寛大な処置、ありがとうございます」

 

二人も入れて更にパクつく

 

ある程度腹に収めた後、サンダース隊がいない事に気が付いた

 

「そう言えばアイツ等どこ行ったんだ⁇ちょっと探して来る」

 

「探したら戻って来るんだぞ⁇」

 

「俺も行くよ。食後の運動だ‼︎」

 

着いて来てくれたアレンと共に、会場内を歩く

 

「なぁ、レイ」

 

「何だ⁇」

 

「これだけのオールスターが集まる事、もう無いんじゃ無いか⁇」

 

「言われてみればそうだな…」

 

足を止めて周りを見回す

 

左を向けばエースパイロット

 

右を向けばエースパイロット

 

前も後ろもエースパイロット

 

そこに居るほとんどがエース中のエースばかりだ

 

「だ〜っはっはっはぁ‼︎そ〜かそ〜か‼︎」

 

「はぁ…」

 

豪快な高笑いを聞き、頭を抑えてため息を吐く

 

「中将こそエース中のエースだぞ⁇」

 

「空では強くても、下であぁじゃあな…」

 

親父達は酔いに酔い、周りの連中と豪快に笑っている

 

「おっ‼︎マーカスとアレン‼︎お前達も飲め‼︎」

 

「いいって‼︎親父が飲みゃいいだろ‼︎」

 

親父が肩を組んで俺にビールを飲ませようとしてくるのを引き剥がそうとする

 

「…そういやマーカス。演習とは言え、イントレピッドを助けてくれたらしいな」

 

「ん⁇あぁ、まぁな。アレンのお陰なんだ」

 

「俺は別に…」

 

親父は控えめになっているアレンの肩も寄せ、俺達の耳元で呟いた

 

「彼女がお前達を探してる。お礼がしたいそうだ」

 

「お礼⁇」

 

「…ナニしてくれるんだろうな⁇」

 

特に期待はしていないが、俺とアレンは生唾を飲んだ

 

「リチャード」

 

「取り込み中だ‼︎イントレピッドは良いぞ…何せすぐに抱き着く癖があってな…」

 

「リチャード」

 

「ちょっと待ってくれ‼︎」

 

しつこく名前を呼ばれたので、親父はそちらに向いた

 

「はぁ〜〜〜〜〜っ‼︎」

 

親父の息が詰まる

 

「リチャード⁇何を話してるのかしら⁇」

 

そこには笑顔で腕をバキバキ鳴らす母さんが居た

 

「なっ、何でスパイトがここに⁉︎」

 

「何ででしょうねリチャード…」

 

「あ…あっははは‼︎スパイトさん‼︎何食べますか⁉︎何でも取りますよ‼︎」

 

「じゃあ、そのナゲットを」

 

「喜んで‼︎」

 

人が変わったように、親父は母さんの食事を取り始めた

 

「マーカス。向こうで貴方の部下がいたわ⁇」

 

「ありがと。行って来るよ」

 

「あ、リチャード。その草も取って下さい」

 

「どっち」

 

親父のトングはキャベツとレタスで迷っている

 

「右の草です」

 

トングはレタスを掴み、母さんの皿に乗せた

 

「Thank you」

 

母さんと親父はこのままで大丈夫だろ

 

アレンとその場を抜け、母さんに言われた方向に向かう


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