艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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205話 みんなの学舎(5)

「安定剤をお願い‼︎」

 

「よしよし。満潮、ちょっとごめん…なっ‼︎」

 

「う…」

 

首元に注射を打つと、すぐに意識を失った

 

「寝かせて着替えさるわ…」

 

「俺はブルネイの提督を呼んでくる。ちょっと話がある」

 

横須賀と別れ、廊下に出て来た

 

「レイ」

 

「榛名」

 

「その顔…やるんダズルな⁇」

 

「手伝ってくれるか⁇反抗したら一発二発殴って良いからよ」

 

「へっへっへ…リシュリュー呼んでくるダズル」

 

「職員室で待ってる」

 

待ってましたと言わんばかりに榛名はリシュリューを呼びに行った

 

職員室で電話を借り、ブルネイの番号を打ち、通話を繋げる

 

《はい。ブルネイ基地です》

 

「横須賀基地だ。満潮の事で話がある」

 

《…畏まりました。其方に向かいます》

 

横須賀のインパクトはデカイようで、ブルネイの提督はすぐに此方に向かう事になった

 

「連れて来たダズル‼︎」

 

「合法的に殴れると聞いたリュー‼︎」

 

腕をグルグル回しながら二人が職員室に入って来た

 

「会議室に行こう」

 

「そうダズルな。学校はマズイダズル」

 

「吹雪はニムさんに任せたリュー‼︎」

 

二人を従え、横須賀の会議室に向かう

 

 

 

 

「遅いわね…」

 

秋津洲タクシーの前では、迎えに来た霞がイライラしながら待っていた

 

「遅いかも…」

 

「私、ちょっと見てくるわ」

 

あまりにも遅い皆を心配した霞が学校に向かう…

 

 

 

「あまぎり」

 

「おぉ、霞」

 

中等部では、あまぎりとさぎり、そしてジャーヴィスとまつわがいた

 

「あれ⁇かすみ⁇」

 

ヤマシロに抱っこされたたいほうも来た

 

「何やってんのよ。帰るわよ」

 

「レイさんと横須賀さんが待機してろって…」

 

「どこ行ったのよ」

 

「会議室だ」

 

「ったく…ま、いいわ。ちょっと見てくる」

 

皆と別れて、霞は会議室に向かう

 

 

 

 

 

「来たな。ま、座ってくれ」

 

ブルネイの提督が来た

 

俺の前に座らせ、短時間で何とか纏めた満潮のカルテを見せた

 

「虐待の証拠だ。ま、一応弁解の余地はやる」

 

「満潮の口答えが気に入らなくて…」

 

「気持ちは分かるが、アンタは提督だ。あの子を従えなきゃならん」

 

「偉そうに…」

 

「何だと」

 

「大尉の分際で偉そうにするなと言ったんだよ‼︎」

 

ブルネイの提督は手にピストルを握っていた

 

「榛名、リシュリュー」

 

「オーケーダズル‼︎」

 

「了解だリュー‼︎」

 

「な、何だぐあっ‼︎」

 

隠れていた二人がブルネイの提督を床に抑え付けた

 

「大尉の分際と言ったな」

 

「このっ…」

 

「その大尉でさえ越えられないのか」

 

ブルネイの提督の前で屈み、タバコに火を点ける

 

「オメェは提督失格だ。じき、横須賀から通達があるだろうから、それまではジッとしてるんだな」

 

立ち上がり、窓を開けて紫煙を逃す

 

「お前に何が分かる‼︎」

 

「分かるよ、アンタの言う苦労って奴は。ただ、俺は苦労と感じた事は無い」

 

「…」

 

「楽しまなきゃ損だろ⁇人付き合いも、子育てもよ…」

 

「ヒッ…」

 

「あの人で間違いないわね⁇」

 

「うぅ…」

 

横須賀が満潮を連れて来た

 

満潮は横須賀の背後でビクビク震えている

 

「立つんダズル‼︎」

 

「もう少しお話を聞くんだリュー‼︎」

 

「このっ‼︎」

 

ブルネイの提督を立たせた後、すぐに暴れ出し、二人の取り押えから抜け出してしまった

 

「手ェ上げな」

 

「あら」

 

ブルネイの提督は横須賀を人質に取り、此方にピストルを向けた

 

「痛っ‼︎」

 

「行きなさい。彼が護ってくれるわ」

 

横須賀は満潮を榛名とリシュリューの前に蹴り出した

 

「こっち来るんダズル」

 

「もう大丈夫だリュー」

 

榛名とリシュリューに抱きかかえられるも、満潮は震えている

 

「人の嫁を人質に取るとは良い度胸だな」

 

「手を上げろ‼︎こいつを撃つぞ‼︎」

 

「こうか⁇」

 

ポケットに入れていた手を出し、肩の高さに手を上げた

 

俺はポケットから手を出したと同時に、左手の手袋を取っていた

 

肩の高さに左手が上がった時、薬指が少しだけ曲がり、カチッと音を立てた

 

「…良い子だっ」

 

その瞬間、左腕を真っ直ぐに伸ばし、右手で支えた

 

会議室に爆発音が鳴り響く

 

それと同時に、横須賀の髪が揺れ動いた

 

「ゔっ…うがぁぁぁあ‼︎」

 

「確保‼︎」

 

ピストルを持った手が吹き飛んだブルネイの提督を、横須賀が投げ飛ばして確保に入った

 

「虐待及び殺人未遂の現行犯で逮捕するわ」

 

「痛い…助けてくれ…」

 

「その言葉…満潮は何回何十回言ったかしら」

 

その後すぐに駆け付けた憲兵隊により、ブルネイの提督は逮捕された

 

「やっぱ一回が限界か…」

 

「何よそれ」

 

「ヤマシロの艤装さ。頂戴したんだが、修復しても一発が限界か…」

 

左手に着けた艤装からは煙が噴き出し、破損してしまっていた

 

「榛名の腹にブッ刺さったヤツダズル」

 

「鉄拳制裁とはこの事さっ」

 

「いた‼︎どこフラついてたのよ‼︎」

 

心配してくれた霞が来た

 

「悪い悪い‼︎ちょっと世直しになっ‼︎」

 

「ふ〜ん。ま、いいわ。どうせその子助けてたんでしょ⁇」

 

「そんな所さ」

 

霞はリシュリューの腕の中にいる満潮に歩み寄った

 

「アンタ運が良いわね。私達の提と…レイって提督⁇」

 

ここに来てようやく霞が俺の職業に疑問を抱いた

 

「提督じゃないわ。パイロット兼医者よ。後はエンジニアね」

 

その答えは横須賀が出した

 

「…まぁ、ちゃんとした私達の提督もいるわ。彼含め、立派な人よ」

 

「…あっそ。別に助けてなんて一言も言ってないわ」

 

「何よこいつ‼︎ありがとう位言ったらどうなの⁉︎」

 

満潮の素っ気ない態度に霞がキレる

 

「一昔前のお前だなっ」

 

「何ですって⁉︎」

 

「ほらっ、行くぞ」

 

「あ…うん…キッ‼︎覚えてなさいよ‼︎」

 

「バーカ」

 

「ムキーッ‼︎」

 

すれ違いざまに霞に喧嘩を売り、霞は見事にそれを買い上げ、立ち向かおうとした

 

「はいはい喧嘩すんな」

 

「う…」

 

霞の後頭部を抑え、進行方向へと促す

 

「横須賀。満潮を頼んだ。榛名、リシュリュー、霞が帰るまで見送ってやってくれないか⁇」

 

「オメェはどうするんダズル」

 

「左腕直してから帰る」

 

「分かったリュー‼︎さ、満潮、横須賀さんの所に行くリュー」

 

横須賀はリシュリューから満潮を預かり、肩に手を置いた

 

霞は戦艦二人に囲まれ、縮こまりながら秋津洲タクシーに向かった

 

「満潮」

 

「何よ」

 

霞を見送ったままの状態で、後ろにいる満潮に話し掛けた

 

「俺と来るか⁇」

 

「ぜっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったい嫌‼︎」

 

即座に全否定される

 

「そっか…ま、所属は横須賀になるだろうから、今お前の肩を持ってる奴を護ってやってくれ」

 

「言われなくてもするわよ…」

 

「なら心配ねぇな‼︎じゃな〜」

 

一瞬だけ振り返った後、工廠へ向かおうと歩き始めた

 

「ちょっと待ちなさいよ‼︎」

 

満潮に止められ、歩みを止め、首を少し後ろに向けた

 

「…ありがと」

 

「あまぎり達と仲良くしてやってくれよな」

 

「…うん」

 

ほんの少し笑った後、ようやく工廠へと歩み始めた


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