艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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205話 みんなの学舎(2)

俺が結構真面目な考えをしている時、横須賀の学校内の給食室では…

 

「ほ〜れほ〜れ‼︎もっと美味しくなるんダズル‼︎」

 

「ニムーッ‼︎フーッ‼︎ニムーッ‼︎フーッ‼︎じっくりーッ‼︎フーッ‼︎コトコトッ‼︎フーッ‼︎ニムーッ‼︎」

 

「HAGYYYYYYYYYYYYY‼︎」

 

榛名は大釜でシチューを混ぜ

 

ニムはその下で竹筒で火に酸素を送り

 

HAGYは高速で野菜を切り、大釜へと放り込んで行く

 

「よーし‼︎お米炊くダズル‼︎」

 

「ニムッ‼︎」

 

「よい…しょっ‼︎」

 

榛名は米一俵を両肩にそれぞれ持ち、ニムとHAGYは一人一俵を持ち、炊事場に戻って来た

 

「うおりゃ‼︎」

 

「ザバァー‼︎」

 

「どざぁー‼︎」

 

二つ目の大釜に四俵のお米が投入される

 

「棒持ったダズルか⁉︎」

 

「持ったニム‼︎」

 

「持ちました‼︎」

 

三人は大釜の縁に立ち、手にした棒をお米の海に突っ込んだ

 

「よ〜し‼︎注水開始ダズル‼︎」

 

榛名が蛇口を捻ると、大量の水が出て来た

 

「え〜んや〜」

 

「こ〜ら〜」

 

「ぐるぐる〜」

 

三人は大釜の縁をぐるぐる回り始めた

 

毎回こうしてお米を研いで行くのだ

 

「真っ白けっけダズル」

 

数分もしない内に、大釜の中はお米のとぎ汁でお米が見えなくなっていた

 

「排水開始ニム‼︎」

 

「そりゃ‼︎」

 

HAGYが下に降り、大釜の下の栓を抜く

 

すると、大量のお米のとぎ汁が排出される

 

「排水完了‼︎キャップOKです‼︎」

 

「注水開始ダズル‼︎」

 

これを後二回ほど繰り返すと、先程のシチューの様に火に酸素を送る作業に入る

 

三人で交代しながらお米を炊いて行く

 

「ブフォーーー‼︎」

 

榛名が酸素を送り込む度に、火は強火になる

 

「よ〜し。しばらくはこれ位の火で十分ダズル」

 

「休憩するニム‼︎」

 

「はいっ‼︎どうぞ‼︎」

 

HAGYの作ったお茶を飲みながら、しばらくは雑談に入る

 

「この前テレビで見たニム。世の中には口噛み酒と言うのがあるらしいニム」

 

「口ん中入れて、オゲーって出して、放置したら出来るんダズル」

 

「限定品として横須賀で出したら売れそうですね⁇」

 

「んなケッタイなモン売れんダズル」

 

「ダズルの口噛み酒なんか絶対飲みたくね〜ニム‼︎いでっ‼︎」

 

ニムのつむじにゲンコツが落とされる

 

「だったらオメーがするんダズルニム‼︎ほ〜れ、ここに米はあるダズル‼︎」

 

「わ、悪かったニム‼︎」

 

榛名とニムが仲良く言い争う中、外が騒がしくなって来た

 

「子供達が来られましたね⁇」

 

「さ、もう一仕事ダズル」

 

「後はリシュリューのイカフライニム‼︎」

 

三人はまた、給食作りに戻る…

 

 

 

「マーカスサン、オハヨウゴザイマス‼︎」

 

「んっ、おはよう。いつもありがとなっ」

 

膝を曲げ、谷風の一番最初の友達の、イ級のイーサンの頭を撫でる

 

「お父さんおはよう‼︎」

 

「おっ‼︎谷風おはよう‼︎」

 

「イーサンおはようさん‼︎」

 

「オハヨウ‼︎マーカスサン、イッテキマス‼︎」

 

「行って来ま〜す‼︎」

 

「いっぱい勉強して来いよ‼︎」

 

谷風は俺に一瞬だけ抱き着いた後、イーサンと共に学校に入って行った

 

「ジャーヴィスちゃんも学校行くのね⁇」

 

俺がイーサンと谷風を見送る横で、横須賀がジャーヴィスの身嗜みを整えてくれていた

 

「ウンッ‼︎ジャーヴィスもガッコー行ってみたいノ‼︎」

 

「そっ。美味しい給食があるから、楽しみにしてなさい⁇」

 

「いて来ま〜ス‼︎」

 

「まつわ、ボーちゃん。ジャーヴィスを頼んだぞ⁇」

 

《うんっ‼︎》

 

”o(`ω´ )b”

 

まつわとボーちゃんも見送り、あまぎりとさぎりが残った

 

「私達も行って来るぜ‼︎」

 

「行って参ります」

 

「先生に宜しくな。先生にイチャモン付けられたら、マーカスを呼ぶぞって言っとけ」

 

「ははは‼︎オーケー‼︎」

 

「畏まりました‼︎」

 

あまぎりとさぎりも学校に向かう

 

「対照的ね⁇」

 

「どっちも良い子さっ。んで⁇今日はどうする⁇」

 

「学校の中等部の視察で終わりそうよ」

 

「そんな重大な事か⁇」

 

横須賀は無言で頷いた

 

「今日の給食当番、榛名よ」

 

「給食はシチューか」

 

「お昼から榛名は中等部の監視よ」

 

「榛名がか⁉︎榛名が監視って相当…まさか‼︎」

 

「そのまさかよ。ヤマシロが先生よ」

 

「急いだ方が良いな」

 

「えぇ。行きましょ」

 

俺達は学校の中等部へ急いだ

 

 

 

 

学校は四段階に分かれている

 

園児部

 

初等部

 

中等部

 

高等部

 

この四段階だ

 

初等部は小学校低学年の勉強

 

ほとんどの子がここに所属している

 

中等部は小学校高学年の勉強

 

あまぎりとさぎりがここに所属している

 

高等部は中学校の勉強と、ほんの少しだけ専門的な事を学ぶ

 

横須賀の艦娘の一部がここに所属している

 

園児部は俗に言う幼稚園

 

まつわとジャーヴィスがここにいる

 

おえかきをしたり、先生の紙芝居を聞いたりして、発想豊かな子になるのを目指している

 

この学校では人の話を聞く力を伸ばしたり、想像力を高めるのを目的としている

 

難しい勉強はあまりしないが、他の基地の子と親しみ、社交性を付けるのも目的だ

 

そんな所に、あのヤマシロが来たのだ

 

「失敗だったらどうする⁇」

 

「子供に変な知識を植え付けたり、見捨てたりしない限りはこっちも見捨てないさ」

 

とは言いつつ、手は腰に行っている

 

「ここよ」

 

「どれ…」

 

教室の入り口の窓から、教室内を眺める

 

「じゃあここは…そうね、あまぎりさん。あまぎりさんはどう思うかしら⁇」

 

「キツネは罪滅ぼしをしたいんだと思う。沢山果物やら魚を持って来て、ホントは謝りたいんだと思う」

 

「正解よあまぎりさん。貴方は読解力が豊かね⁇」

 

「へへっ…」

 

褒められたあまぎりは嬉しそうに鼻の下を人差し指で掻いている

 

ヤマシロも満更ではなさそうに微笑んでいる

 

「…案外良いんじゃない⁇」

 

「…だな」

 

監視を続けるも、特にヤマシロに変わった様子は無い

 

それどころか、教えるのも褒めるのも上手い位だ

 

「午前の授業はこれ位にしましょうか。さっ、お楽しみの給食ね⁇」

 

「給食…レイさんが言ってた奴か‼︎」

 

教材をまとめたヤマシロは、少しだけ微笑みながら教室を出ようとした

 

「お疲れ様ね⁇」

 

「ジェミニさん。それとマーカスさん」

 

ヤマシロが此方に気付いた

 

「いつの間に復活したんだ⁇」

 

「内緒よ。女は秘密が多い程面白いでしょう⁇」

 

「まぁなっ…」

 

「心配しないで。もう変な気は起こさないわ」

 

「なら良いけど…」

 

「私、気付いたの…」

 

ヤマシロはポツポツ話し始めた

 

「カプセルの中で考えたわ…心酔していた彼が悪だったって…私、教員生命を捨てて、生徒まで売って、彼に着いて行こうとしたの」

 

「まっ…愛は人それぞれだからな」

 

「その彼は何処にいるの⁇」

 

横須賀の質問に、ヤマシロは首を横に振った

 

「彼は人からも深海からもタブーの存在だった…結局、居場所が無くなってひっそりと死んだわ。私が深海化出来るだけの装備を遺して…」

 

ヤマシロの言葉を聞き、俺は左手を背中側に隠した

 

「もし貴方が産まれ変わりたいって願うのなら、ここには新しい恋だって転がってるかも知れないわよ⁉︎」

 

「そうかしら…」

 

「見た所、まぁまぁの美人だしな⁇」

 

「勿体無いわよ⁇」

 

「…頑張ってみる」

 

ヤマシロは教材で顔を隠しながら職員室に向かった

 

「アンタの言う通りかもね」

 

「何がだ⁇」

 

「私達次第で、気を改めるって事よ。さっ、今の内に他の部へ行きましょ」

 

横須賀の後を着いて行く形で、園児部へ向かう


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