今回のお話は、愛される誰かのお話です
新しい子も出て来ます
果たして誰なのか…
そして、私の他の作品も見て下さっている読者の方は、あっ‼︎となるかも知れません 笑
「おいしぃ〜なぁ〜‼︎」
「蟹…っ、ズワイガニッ‼︎食べずにはいられません‼︎」
「いっぱい食べるのよ⁇」
「うんっ‼︎」
この日、横須賀は急に手隙になった
丁度お昼時なので、暇そうにしていた谷風と親潮を連れて瑞雲に来た
親潮が両手で食べている横で、谷風はぎこちない箸の持ち方で、どちらかが向いた蟹を食べている
「美味しいです‼︎」
「おいし〜‼︎おか〜さん、ありがとう‼︎」
「ふふっ、い〜えっ‼︎」
丁寧に食べる親潮も好きだが、横須賀は谷風の様にほっぺたに食べカスを付けて本当に美味しそうに食べるのを見るのも好きだ
そして最近、横須賀は気付いた
レイといる時は食べる方が好きだけれど、子供達と食べている時は、それを眺める方が好きな自分がいる事を
「作り甲斐があるな」
「あら日向‼︎ごちそうになってるわ‼︎」
「日向さん、ありがとうございます‼︎」
「ありがと‼︎」
「ふふ…たんと食えよ」
日向は会話中に蟹の殻を回収し、また厨房へと戻って行った
「ごちそうさま〜‼︎」
「美味しかった…親潮、蟹が好きになりました‼︎」
「また連れて来てあげるわ。あ、それともレイが連れて来てくれるかな⁇」
「谷風、お父さんとみんなで食べたいなぁ〜‼︎」
「親潮もそう思いますっ‼︎」
谷風も親潮も満腹
横須賀はまだちょっと食べ足りない気もしたが、執務室にあるお菓子をパクついていれば小腹も満たされるだろう…
「そろそろ店仕舞いだな」
時刻は8時
平日のこの時間は、す〜ぴゃ〜マーケット以外は店を閉め始めている
日向は看板と暖簾を外し、厨房で簡単な片付けをした後、瑞雲を出た
手には自分で食べる用の数杯の蟹と氷を入れた発泡スチロールのケースを持ち、何人かが乗り合わせているマイクロバスに乗り、居住区へと帰る
「ありがとう」
正門で降ろされ、皆それぞれの自宅に向かう
「む」
一番最初にここに住み始めた艦娘の家の前に、誰が乗って来たかすぐ分かる4台のバイクが停まっていた
それに、カーテン越しの影を見る限り、鍋をつついているようだ
「奴等か…ふ…」
そのバイクを見た後、日向は微笑み、インターホンを鳴らした
「はいは〜い‼︎」
「やぁ」
出て来たのは、ほろ酔いのビスマルク
「あら日向‼︎アンタも上がって行きなさい‼︎」
「いや、良いんだ。蟹を持って帰って来た。鍋にそのまま突っ込んでやれば良い」
「ちょっと待ってなさい‼︎」
ビスマルクは一度家の中に入り、缶のお茶とビスマルクお手製のウインナーをいっぱい入れたビニール袋を持って来た
「これは帰りに飲んで、こっちは今日出来たてのウインナーよ‼︎ボイルするか焼いて食べなさい」
「ありがとう。晩はこれにしよう」
「今度は飲みに来るのよ‼︎」
「あぁ。上物の日本酒を引っさげて来る」
折角帰って来た四人を邪魔する訳には行かない
ビスマルクの家を開けた時に聞こえた声
ビスマルクの笑い方
ヤンキーが四人が来ているのだろう
内二人はここに想い人が居ると聞いた
まぁ、私も想い人がいるのだがな
お茶を飲みながら、自分の家に着いた
「お母さんおかえり‼︎」
白いワンピースを着た娘が迎えてくれる
「ただいま。お父さんはどうした⁇」
「お仕事してる‼︎」
「そうか。晩御飯作るの手伝っておくれ」
日向はエプロンを着け、台所に立った
「ウインナーだ‼︎」
「”大東”は肉好きだもんな」
「うんっ‼︎」
大きな鍋にボトボト投入されるビスマルクのオリジナルウインナー達を見て、娘は台の上に乗りながら鍋の中を覗く
「ビスマルクから貰ったんだ。たんと食えよ⁇」
「うんっ‼︎お父さん呼んでくる‼︎」
大東は仕事をしている旦那を呼びに行った
旦那はこの街で唯一の配送の仕事をしている
艦娘やこの居住区に住む人間が注文した品を自宅で請け負い、それを入荷する
外から入って来た物品の検査もしているので、中々の信頼はあると確信している
それに、旦那は元提督だ
基地が破壊された時、序でに提督を引退した
まぁ、それが一番の原因なのだが、何故引退したのかは私だけが知っている
それは墓場まで持って行く…
「おっ‼︎今日はウインナーか‼︎」
「あぁ。ビスマルクに貰ったんだ。それと、空軍の四人が遊びに来ていた」
「マーカスはいるのか⁇」
旦那が大東に前掛けを付けながら話して来た
「あぁ。あの話し声ならいるだろう」
「マーカスとアレンには結構世話になってる。それと、二人の友達のミハエル」
「あの二人は破天荒だが、彼等がいなければ私達の安息もなかっただろう。さぁ、頂こうか」
「頂きます‼︎」
「いただきま〜す‼︎」
気が付けば、私は母になっていた
産まれて来た子も、もう幼稚園児
艦娘になって、ここまで来るのはあっと言う間だった気もする
戦うのも好きだが、旦那と出会って、私は女だと言う事を思い出した
頼られる事が多くなる中、当時から今も変わらず、良い意味でも悪い意味でも、旦那は私を一人の女性として扱ってくれた
だから、私は旦那に着いて来た
どうやら間違いはなかった様だ
朝は一人の母親
昼は蟹鍋店の女店主
夜は女になる
まぁ、そうなるな
ふと昔を思い出していると、旦那の横で大東がご飯をポロポロ零し、前掛けを汚している
「大東はお友達出来たか⁇」
「うんっ‼︎佐渡ちゃん‼︎」
「ほぅ⁇どんな子だ⁇」
「あのね‼︎口ず〜っと、イーッ‼︎ってしてる子‼︎最近来たんだ‼︎」
「そうか。仲良くするんだぞ」
「うんっ‼︎」
ご飯を食べた後、大東は旦那と風呂に入った
その間に布団を敷き、食器を片付ける
片付け終わった後、大東の幼稚園鞄を開け、明日の準備をする
佐渡ちゃんは誰の子なのかな⁇
次は多分、そんなお話です