艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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196話 アークの子育て奮闘記(4)

次の日の早朝…

 

午前4時、姫の部屋…

 

「スー…」

 

姫がまだ寝ている中、布団がモゾモゾ動く

 

ガラッ

 

ポテッ

 

ベッドからガラガラが落ちた後、ジャーヴィスも落ちて来た

 

ジャーヴィスはハイハイで動きながら、半開きになっている部屋のドアを開け、まずは執務室を目指す

 

ガラ…

 

ガラガラ…

 

薄暗い中、奇妙な音が廊下に響く

 

ジャーヴィスは執務室のドアを押し、中に入る

 

そして、何故か壁に向かう

 

壁に近付き、ジャーヴィスは一旦座って休憩をした後、壁に開いた穴に入った

 

そして、食堂に着く

 

ジャーヴィスはこうして毎朝食堂に辿り着くのだ

 

しかし、今日は誰もいない

 

ジャーヴィスが起きるより早く、私達は横須賀に向かっていた

 

アークが居ないと分かっていないジャーヴィスは、一人でガラガラを振ったり、カーペットの上をコロコロしたりして、アークもといミルクを待つ

 

「もぅ…また脱走したの⁇」

 

誰かが起きて来て、ジャーヴィスを抱き上げる

 

ジャーヴィスは彼女の”眼鏡”がお気に入りで、抱っこされたらいつも触ろうとする

 

「ふふっ…オッパイ好きなのね⁇」

 

アークは若干控えめなオッパイをしている為、普段は気付かないが、ジャーヴィスも誰かと同じくオッパイ好き

 

今でさえ、彼女のオッパイを叩いたりつついたり、頭を置いたりしている

 

「お兄ちゃんは何処にいるのかな〜」

 

彼女はジャーヴィスと共に窓際に立ち、薄暗い外を眺める

 

「私の好きな人も、貴方と一緒で空を飛んでるのよ⁇」

 

ジャーヴィスは分かっていないだろうが、彼女は自分の好きな人をジャーヴィスに打ち明けた

 

ジャーヴィスは外を見ながら彼女を叩こうとせず、ガラガラを振っている

 

「ふふっ…」

 

ジャーヴィスは彼女に甘える様に抱き着き、食堂に目線を戻した

 

「ふぁ〜…」

 

「おはよう」

 

「おはよ〜。ご飯作るわね〜」

 

彼女はジャーヴィスと共にカーペットの上に座り、ハイハイしたりコロコロしたりする可愛らしい仕草を目で追う…

 

 

 

 

横須賀に着き、朝霧が立ち込める中、海岸線を歩く

 

ビビリの腕をグッと握り、水平線の向こうで朝練をしている艦娘の子を横目に、長い長い海岸線を歩く

 

「…ビビリ」

 

「ん〜⁇」

 

「喉乾いた」

 

「コーヒーでも飲むか‼︎」

 

自販機でコーヒーを買い、階段に座って熱いコーヒーを飲む

 

「はぁ〜…」

 

「まだ白い息出るんだな⁇」

 

「寒いからな…ジャーヴィスが冷えないよ…」

 

ふと、ビビリに人差し指で口を止められた

 

「今日はその話はナシだ」

 

「ん…」

 

「そうだ。今日はアークの夢を叶えてやる約束だったな‼︎」

 

ビビリはポケットの中から小さな箱を出した

 

「これは⁇」

 

「今日一日、これを付けている間は俺の嫁だ」

 

「は…正気か⁇ビビリにはヨメがいるだろう‼︎」

 

ビビリの手には、一時期皆が血眼になって探していたもう一つのケッコン指環があった

 

「横須賀には言ってある。なんなら、後で聞けばいい」

 

「う…」

 

本当は嬉しかった…

 

一日だけでも、ビビリのヨメでいられる…

 

だが、果たしてビビリの子供達まで裏切って良いのだろうか…⁇

 

「嫌なら良いんだ」

 

「い、いや‼︎付けてやる‼︎付けて下さい‼︎」

 

「手出せ」

 

ビビリに指環を付けて貰う

 

凄く幸せな気分だ…

 

「よく似合ってる」

 

「そ、そうか…ふふ…」

 

私は手を空に上げ、何度も指環を眺めた

 

「行こう。そろそろ繁華街が開く」

 

「あぁ‼︎」

 

ダンナとなったビビリの腕をギュッと握る

 

一時的にダンナとヨメになった私達は、朝ご飯を食べに繁華街に向かう

 

 

 

 

 

前日の夜…

 

「アークの夢ってなんだ⁇」

 

ビビリは子供部屋にいた

 

「くっこおのゆめ⁇」

 

「あーくのゆめ⁇」

 

子供達のほとんどが一度聞き直して、すぐに答えてくれた

 

「レイのお嫁さんだね‼︎」

 

「えいしゃんのおよめしゃん‼︎」

 

「くっこお、えいしゃんのおよめしゃんないたい‼︎」

 

「すてぃんぐれいのおよめさん‼︎」

 

「レイの嫁になる」

 

「犬の嫁ね」

 

「レイさんの妻になる事です」

 

「レイのお嫁さんになる事なんじゃない⁉︎」

 

「あぁぁあ分かった分かった‼︎」

 

満場一致でビビリのヨメになる事だと猛攻撃を受けたビビリは、子供達を寝かせた後、姫の所に来た

 

「アークの夢は分かったかしら⁇」

 

ビビリは頭を抱えながら、姫に言った

 

「…指環を出してくれ」

 

「ふふっ‼︎やっぱり‼︎」

 

「子供達が満場一致でアークは俺の嫁になりたいんだと言って来た」

 

「子供達に嘘は無いわ。頼むわね⁇」

 

「何とかしてみるよっ。ありがとな‼︎」

 

姫はビビリに指環を入れた箱を渡し、ビビリは部屋を出た…

 

 

 

 

「うまいな‼︎ズィーカク、これは何だ⁉︎」

 

私達はズィーズィーズッコロバシに来ていた

 

「ツナサラダよ‼︎」

 

「ふふ…」

 

ズィーカクの握るオスシーは美味しい

 

サラダロールも、ツナサラダバトルシップも美味しい

 

「あれっ⁉︎その指環どうしたの⁉︎」

 

ズィーカクが指環に気付いた

 

「あぁ。ビビリとケッコンしたんだ‼︎」

 

「「「えぇ〜〜〜〜〜〜っ‼︎」」」

 

店内にいた客までビビリだした


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