艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、193話が終わりました

最近、良く食べてはちょっと吐くスパイト

その原因は、とある事にありました


194話 戦慄‼︎オボロと化したスパイト

ここ最近、母さんがよく食べる

 

「おいし〜わぁ‼︎」

 

いつもの倍…いや、それ以上に食べている

 

それも、結構酸味がある物を好んで食べている

 

晩御飯を食べ終えて数分後、ソファーに座って酢イカを食べている始末だ

 

「いよにもくらしゃい‼︎」

 

「ひとみもたえたい‼︎」

 

「良いわよ‼︎はいっ‼︎」

 

ひとみといよが、母さんから酢イカを貰って食べている

 

「ゔっ…」

 

急に母さんの動きが止まる

 

「おぼおおおすう⁇」

 

「ふくおもってくう‼︎」

 

ひとみが台所に走り、貴子さんの所に行く

 

「すぱいとしゃん、おろろろろちたいって‼︎」

 

「これ持って行ってあげて‼︎」

 

ひとみが小走りで持って来た袋に、母さんは軽く吐いてしまった

 

「ヒトミ、サンキュー…」

 

「きおちあうい⁇」

 

「すいすいちたげう」

 

「サンキュー…」

 

ひとみといよに背中をさすって貰い、母さんは少し落ち着いた

 

しばらく二人にさすって貰い、母さんは口をゆすぎ、またソファーに戻って来た

 

「あら…ふふっ」

 

すぐに寄って来たひとみといよは、母さんの膝の上に頭を置き、寝息を立て始めた

 

「ん⁇」

 

「お⁇」

 

急に目を覚まし、ひとみといよは母さんのお腹に耳を当てた

 

「あら…どうしたの⁇」

 

「ろっくん、ろっくん…」

 

「なんかいう…」

 

「…へ⁇」

 

母さんの腹から謎の鼓動が聞こえると言うひとみといよ

 

「ぐ〜っていった‼︎」

 

「おなかしゅいた⁇」

 

「えぇ」

 

「くっち〜たえよ‼︎」

 

「ひとみたちもおやしょくすうの‼︎」

 

母さんの膝から降り、二人は台所に向かう

 

「どうしちゃったのかしら…」

 

母さんはお腹をさすり、自分の体調に不安を抱く…

 

 

 

 

それからも母さんはよく食べては、たまに吐いた

 

段々と母さんの異常に気付いた俺だったが、母さんのオボロロロにてんてこ舞いになっていた

 

身長が足らず、俺に取って欲しいと頼んだ最中に

 

「マーカス‼︎そこのお菓子取ってくだ、ゔっ、オボロロロ…」

 

「ちょっ‼︎」

 

そのお菓子を食べながらコメディ番組を見ながら

 

「あはははははオボロロロ‼︎」

 

「間に合え‼︎」

 

デスクワークをしながら

 

「この書類はウィリアオボロロロ‼︎」

 

「姫‼︎セーーーフ‼︎」

 

食っては吐きの繰り返しである

 

流石に様子がおかしいとなった俺は、母さんを診る事にした

 

だが…

 

「どっこも悪いこたぁねぇな…」

 

母さんの悪い所は見当たらない

 

「私、最近オボロみたいな事になってるわ…」

 

ゲロに関して、大分気にしている様子だ

 

「最近変わった事なかったか⁇」

 

「変わった事…」

 

母さんは口元に手を当てて考える

 

俺と同じ考え方だ

 

「リチャードと…その…」

 

「シたんだな⁇」

 

「えぇ。あの小さい時にね」

 

あんな小さくなった母さんを抱いたのかよ…

 

「うらや…いや、何でもない。って事は妊娠か⁉︎」

 

「どうかしら…」

 

「きそ‼︎」

 

「はいはい」

 

「エコー検査だ。貴子さん呼んで来てくれるか⁇」

 

「オッケー‼︎」

 

きそに貴子さんを呼ばせに行き、エコー検査の準備をする

 

「ホントに赤ちゃんだったら、マーカスはどうする⁇」

 

「どうもこうもっ‼︎子供には慣れたさっ‼︎よいしょっ‼︎」

 

艦娘用のエコー検査器具を引っ張り出す

 

「呼んで来たよ‼︎」

 

「スパイトが妊娠ですって⁉︎マーカス君、お母さんにまで…」

 

「そ、それはない‼︎」

 

「違うわ‼︎リチャードよ貴子‼︎」

 

「ふふっ‼︎冗談よっ‼︎ちょっと見せてね…」

 

後は貴子さんに任せた方が速い

 

毎度思うが、男ってこう言う時無力だなぁ…

 

数十分後、貴子さんの結果が出た

 

「妊娠してるわね…」

 

「Oh…」

 

「これでスパイトが良く食べて、たまに吐いていた理由が分かったわ‼︎」

 

「レイも遂にお兄ちゃんかぁ‼︎」

 

「もうお兄ちゃんだけどな…」

 

そう。俺にはオイゲンと言う妹がいる

 

「今度はお兄ちゃんと呼んでくれよ…」

 

そう言って、診療台に横になっている母さんの腹を撫でた

 

「ははっ、蹴ってる蹴ってる‼︎」

 

「まっ…マーカス…」

 

「何だ⁇」

 

「うっ…産まれりゅ…ゔうっ…」

 

急に母さんが呻き始めた

 

「う、嘘だろ…きそ‼︎横須賀の千代田呼んでくれ‼︎」

 

「お、オッケー‼︎」

 

一気に基地がてんてこ舞いになる

 

「うぎぎぎ…あぁっ‼︎」

 

「大丈夫よスパイト‼︎」

 

痛みが増した母さんは貴子さんの手をかなりの力で握る

 

「マーカス君‼︎痛み止めある⁉︎」

 

「今作ってる‼︎」

 

「出来上がり次第、すぐ打ってあげて‼︎」

 

「出来た‼︎」

 

痛み止めを打ち、数分後には多少は母さんは落ち着いた

 

「レイ‼︎千代田さん来たよ‼︎」

 

「早いな‼︎助かるよ‼︎」

 

「スカイラグーンに居たのが良かったわ‼︎代わって‼︎はい、出た出た‼︎」

 

千代田にきそと共に追い出され、工廠のシャッターが閉められた

 

「…」

 

「…」

 

二人して下を向きながら、瞬きを数回する

 

ホントにする事がない

 

「…コーヒー飲もっか⁇」

 

「…だな」

 

食堂に戻ると、隊長もソワソワしていた

 

「隊長。コーヒー飲むか⁇」

 

「あ、あぁ…随分冷静だな⁇」

 

「もう慣れたさっ」

 

「レイ。代わりなさい」

 

コーヒーを淹れようと台所に立つと、ローマに弱いヒップアタックされて台所から出された

 

「アンタが淹れると苦くなるから、私が美味しいの淹れたげる」

 

「おぉ。サンキュー」

 

「あはははは‼︎」

 

きそも慣れたのか、結構呑気にテレビを見て笑っている

 

「おゆいえてきた‼︎」

 

「ぬういおゆ‼︎」

 

ひとみは桶

 

いよは背中にお湯が入ったタンクを背負い、台所近くの扉から来た

 

「ごめんな、いよ、ひとみ。貴子の所持って行ってくれるか⁇」

 

「わかた‼︎」

 

「たかこしゃんにわたちてくう‼︎」

 

ひとみといよはそのまま工廠へと向かった

 

「すまんな、レイ…貴子も私も使ってしまった」

 

「全然‼︎ひとみもいよもスタンプ貰えるから良いんだろ⁇」

 

「ははは‼︎そっかそっか‼︎」

 

「姫が妊娠だと⁉︎ビビリ貴様‼︎」

 

洗濯物を干していたアークが食堂に来て、俺に食って掛かって来た

 

「ちがわい‼︎親父だよ‼︎」

 

「なにっ⁉︎リチャード殿との子だと⁉︎」

 

「ホントだよアーク‼︎」

 

「なら、アークはもう一度…」

 

アークが何か言おうとした時、工廠から元気な泣き声が聞こえて来た

 

「産まれたみたいだなっ」

 

「元気な産声だ…」

 

俺も隊長も安堵のため息を漏らす

 

工廠からひとみといよがパタパタと走って来た

 

「あかしゃんうまえた‼︎」

 

「ぴ〜ぴ〜ってないてう‼︎」

 

ひとみは俺

 

いよは隊長の肩に乗り、隊長と俺は赤ちゃんの顔を見に行く事にした

 

 

 

 

「良い子ね…」

 

母さんの腕の中で、ホントにピーピー鳴いている赤ちゃんがいた

 

「艦娘だから、きっとすぐに成長するわよ⁇」

 

「元気な子で良かったわ‼︎また何かあったら呼んでね‼︎」

 

「すまんな千代田。急に呼んで…」

 

「またビールでも奢って頂戴。それでチャラにしたげるっ‼︎じゃあね‼︎」

 

千代田は高速艇でスカイラグーンに戻って行った…

 

「かあい〜っ…」

 

「すぱいとしゃんのあかしゃん…」

 

ひとみもいよも子供好き

 

赤ちゃんを見て目をキラキラさせている

 

小さくて可愛い、女の子だ

 

今日学校に行っている子達が帰って来たらビビるだろうなぁ…

 

「スパイトーっ‼︎あれっ、いないのか⁇」

 

「リチャードだわ…」

 

たまたま近くを飛行していた為、基地に寄ったリチャードが来た

 

「スパイ…いたいた‼︎お土産買って来たぞ‼︎」

 

「貴子っ、ちょっとお願い」

 

「よいしょっ…いい子ね〜」

 

母さんは貴子さんに赤ちゃんを抱かせ、人差し指を立て、クイクイしてリチャードを近くに寄らせた

 

「絶対叩かれるからヤダッ‼︎」

 

「叩かないからいらっしゃい」

 

おそるおそる親父が母さんに寄ると、母さんは赤ちゃんを見た

 

「貴方の子よ、リチャード」

 

「うそん…」

 

「さっ、どうぞ〜…」

 

親父も貴子さんに赤ちゃんを抱かせて貰う

 

「はは…そっかそっか‼︎」

 

「名前、何にしましょうか⁇」

 

「決めてた名前があるんだ。言ってもいいか⁇」

 

「えぇ」

 

「”ジャーヴィス”…ジャーヴィスが良い‼︎」

 

「ジャーヴィス⁇」

 

「幸運な子に育って欲しいんだ。だから、ジャーヴィス‼︎」

 

「いいわね‼︎ジャーヴィスにしましょう‼︎」

 

「じゃび〜‼︎」

 

「あ〜いしゅ‼︎」

 

ジャーヴィスと名付けられた子は、こうして基地で産まれた

 

意外だと思うが、基地で産まれた子は初めてである

 

ただ、このジャーヴィス…

 

とてもとても、元気な子だった…

 


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