艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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193話 命の権利(2)

その日、珍しく眠れなかった

 

セイレーン・システムの操り方は粗方知っている

 

どんな子が入っているかも知っていた

 

だが、実際目の当たりにするとあんなにも胸を打たれるのか…

 

「アレン⁇」

 

「ん⁇」

 

「眠れないの⁇」

 

眠れないのが珍しく思えたのか、横に寝ていた愛宕が話し掛けて来てくれた

 

「今日、アイちゃんと同じ位の女の子がカプセルに入ってるのを見たんだ…」

 

「アレンはどうしたい⁇」

 

「分からない…だけど、助けてやりたいって気持ちがどこかにあるんだ…」

 

「なら、助けてあげましょう⁇レイさんみたいに、子沢山になっても良いわ⁇」

 

「ん…」

 

愛宕の率直な答えで決心がついた

 

あの子を救ってやろう

 

 

 

次の日の朝、俺はレイの基地に向かった

 

「あえんしゃんら‼︎」

 

「草投げろ草‼︎」

 

「おりゃ‼︎」

 

「うりゃ‼︎」

 

下でレイとひとみといよが草むしりをしながら遊んでいるのが見えた

 

上空の俺を見かけた瞬間、三人は持っている草を投げているのも見えた

 

俺が降りると草投げも終わり、ひとみといよが足に抱き付いて来た

 

「あえんしゃんあにちてんの〜」

 

「いよたちとあしょぼ〜」

 

レイと感覚が似ているのか、この二人はいつもくっ付いてくれる

 

「アレンと大事なお話するから、きそと遊んでな」

 

「きしょ〜‼︎」

 

「あえんしゃんさいなあ〜」

 

「またなっ」

 

ひとみといよが走り去ったのを見て、とりあえずレイを工廠に入れた

 

「な、何だ⁉︎告白ならNOだぞ⁉︎」

 

「頼みがあるんだ…」

 

レイを壁に寄せて、肩を掴んだ

 

「ある程度は聞いてやる」

 

レイの顔が本気の顔に変わる

 

「昨日の子…あの子を助けたいんだ」

 

「バカ言うな‼︎ガンビアの中枢だぞ⁉︎あの子を抜いたらガンビアが動かなくなる‼︎」

 

「俺が代わりに入る‼︎だから…」

 

「オメェが代わりに入った所で、ガンビアの動かし方分かるのか⁇」

 

「いや…それは…でも覚える‼︎」

 

「無理だ。それに、お前はシステムのエンジニアの方が向いてる」

 

「だったら俺一人でなんとかする」

 

いつもなら「仕方ねぇなぁ」等悪態をつきつつ、なんやかんやで手伝ってくれるのだが、今回はダメらしい

 

「お前が入るのがダメだって言ってんだ‼︎」

 

「どういう事だ⁇」

 

「ガンビアの中枢が無くなりゃ、ガンビアは動かなくなる。だったら、代わりを入れてやりゃあ良い」

 

「出来るのか⁇」

 

「俺を誰だと思ってる。アイリス、”G73”のAIを出してくれ」

 

《ディスクを取り出します》

 

「頼む」

 

PCに入ったAIに話し掛けたレイは、自動的に開いた読み取り機からディスクを取り出した

 

「こいつがガンビアの中枢の代わりになる。さっ、こっからが問題だ。正当法に行きゃ、恐らく断られる」

 

レイの口角が上がる

 

これは”悪いことしようぜ”の合図だ

 

「俺達ゃ元スパイだ‼︎」

 

「やる事やって捕まろうぜ‼︎」

 

「お前達は集まるといつもそうだな…」

 

「隊長‼︎」

 

「大佐‼︎」

 

いつの間にか大佐が壁にもたれていた

 

「いいか…」

 

大佐は此方に歩み寄って来た後、俺達の肩に手を回した

 

二人して息を飲む

 

止められたな…こりゃあ…

 

「やる事やって来い。責任は取ってやる」

 

「了解‼︎行って来る‼︎」

 

「ありがとうございます‼︎行って来ます‼︎」

 

互いの機体に乗り、大湊を目指す…

 

 

 

 

 

「エドガー」

 

「申し訳ないです…」

 

実は昨日の異変に気付いていたキャプテンは高速艇を使い、先に此処な来て大佐に事を話してくれていた

 

「謝る必要は無いさ。まっ、見守ってやろう」

 

「えぇ…最悪、大湊を叩けば黙るでしょう。マーカスの因縁の相手もいるようですしね⁇」

 

「相変わらず怖いな…」


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