艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、192話、バレンタイン企画が終わりました

バレンタイン企画は長い間待たせて申し訳ありませんでした

今回のお話はアレン目線のお話です

試験飛行を終え、ガンビアに着艦したアレン

すると、ガンビアに異変が出ます

普段アレンがどんな目でレイを見ているかも分かります


193話 命の権利(1)

「此方SS隊バッカス。着艦許可を求める」

 

《了解。試験飛行お疲れ様です》

 

横須賀からの要望で、新型機の試験飛行を依頼されていたアレン

 

最終目的地はガンビア

 

そこで機体は一旦ガンビアに格納され、別基地に配属される

 

「着艦フック…よし。エンジン停止」

 

マニュアル通りの誠実な操縦をするアレンは、自身の乗るT-50のAIからも好評であり、アレンは自信を持っていた

 

レイに勝てるのは、この誠実な操縦だ…と

 

「お疲れさん‼︎」

 

そのレイが迎えに来てくれた

 

俺の試験飛行の様子、そして機体性能を見に来ている

 

ガンビアの端くれに、ド下手に停めたグリフォンを見る限り、未だに空母の離着陸はヘタクソな様だ

 

「若干左エンジンの吹きが悪い。その他は申し分ない性能だ」

 

「サンキュ。調整しとくよ」

 

ヘルメットをレイに投げると、レイはそれを受け取り、指を通して肩に置いた

 

「致し方無く、帰りは送ってあげます」

 

「はは〜ん⁇発艦出来るのかなぁ〜⁇」

 

「ウッセェ‼︎発艦位出来るわ‼︎」

 

コイツの前では、本当の自分でいられる

 

嘘偽りなく、本当の自分を出せる

 

だから、レイは親友だ

 

どんな時だって、コイツは俺を救ってくれた…

 

だから、今回だって…

 

 

 

 

ガンビアの中に入り、帰りはどうせレイの不安MAXの発艦に任せる為、軽くビールを飲む

 

「大尉。報告書です」

 

「「おっ。サンキュ」」

 

一つの報告書に、同時に二人の手が伸びる

 

「俺だろ⁉︎」

 

「俺だろ⁇」

 

「失礼しました‼︎マーカス大尉宛てです‼︎」

 

「はっはっはぁ〜‼︎」

 

ニヤケ顔でレイが報告書を取る

 

「ゼッテー少佐になってやっからな‼︎顎で扱ってやるぁ‼︎」

 

「はいはい。言ってないでビール飲みなさい」

 

俺をいなした後すぐ、レイの目付きが変わる

 

コイツの本気の目を見るのは好きだ

 

誰かの為に動いている目だ

 

「そういやさ」

 

「ん⁇」

 

互いに目を合わさず、会話が進む

 

レイは報告書

 

俺はその辺にあったグラビア雑誌を見ている

 

「チョコレート美味かったぞ」

 

「俺の娘の作ったチョコレートだ。美味いに決まってる」

 

「”アレン”は子煩悩だねぇ〜」

 

「言ってろっ」

 

他愛無い会話をしていると、急にガンビアが揺れた

 

「何だ⁉︎」

 

「照月でも乗って来たんだろ⁇」

 

レイは呑気にコーヒーを飲んでいるが、どうも様子が違う

 

揺れが長い

 

「違うみたいだな」

 

「あぁ」

 

ようやくレイがコーヒーカップを置き、異変に気付いた

 

「機関室に連絡を取る。アレン、操舵室に連絡取ってくれ」

 

「オーケー」

 

レイが機関室に連絡を取っている反対で、操舵室に連絡を繋ぐ

 

「操舵室。どうした⁇揺れが大きいぞ」

 

《機関部が原因不明の急停止をした‼︎現在、緊急処置をしているが、舵が効かない‼︎クソッ‼︎予備エンジンに点火しろ‼︎》

 

どうやら向こうも分かっていないらしい

 

「分かった。アレンも連れて其方に向かう」

 

レイが無線を切った後すぐ、俺も無線を切った

 

「原因は機関室らしい。来てくれるか⁇」

 

「オーケー。直せりゃ良いが…」

 

レイと共に早足で機関室に向かう

 

俺達はこう見えてエンジニア

 

最悪、応急処置位ならなんとか出来る

 

「マーカス大尉‼︎アレン大尉‼︎此方です‼︎」

 

機関室に入ってすぐ、機関室の人員に案内された場所を見て、二人共息を飲んだ

 

「これがガンビアの中枢…」

 

ガンビアの機関室には、巨大なカプセルがあり、その中には金髪の女の子が入っていた

 

それを見て呆然としていたが、もっと呆然としていたのはレイの方だ

 

「セイレーン・システムで動いてたのか…ガンビアは…」

 

「我々ではサッパリです。こんな事は初めてで…」

 

「仕方ねぇ…アレン、手伝ってくれ」

 

「任せな‼︎」

 

レイはカプセルの前の椅子に座り、電子機器を弄り始め、俺はその横でタッチパネルを操作する

 

「よし、ガンビアから一時的にセイレーン・システムを分離させる。お前ら‼︎手動でエンジン点火出来るな⁉︎」

 

「はい‼︎出来ます‼︎」

 

「だとよ」

 

「問題ねぇな‼︎」

 

「やるぞ‼︎」

 

「あぁ‼︎」

 

レイと顔を見合わせた後、数分間互いの作業に集中する

 

「セイレーン・システム分離‼︎」

 

「エンジン点火‼︎」

 

「エンジン点火ぁ‼︎」

 

作業員がエンジンを点火

 

「やった‼︎エンジン点火‼︎」

 

二人してため息が漏れた

 

「流石は俺達だな‼︎」

 

「まっ‼︎お前がいりゃあざっとこんなモンよ‼︎」

 

俺達がハイタッチをした瞬間、カプセルの中でゴボッと気泡が出た

 

「おはよう」

 

《ア…》

 

カプセルの中の女の子はうっすらと目を開けており、何か言いたそうにしている

 

「艦体から君を一時的だが分離した。どうして急停止したんだ⁇」

 

《ア…レ…》

 

「俺か⁇」

 

先程からずっと俺を見ている

 

俺に何か言いたいのだろうか⁇

 

《イ…ショ…》

 

「一緒⁇」

 

そう言い残すと、彼女は目を閉じた

 

「なんだったんだ…」

 

「お前に惚れたんだなっ‼︎」

 

「モテる男は困るな‼︎ははは…」

 

レイの冗談を笑って返したが、内心、彼女に少し情が湧いていた

 

カプセルの中の女の子に対し、アイちゃんが映ったのかも知れない…

 

結局、その後ガンビアはセイレーン・システムと結合し直し、無事運転を再開した…


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