艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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このお話は、2を選んだ場合のお話です

広場で江風と蒼龍を見たレイ

横須賀に言われて、レイは二人を尾行し始めます

ただ、江風には悩みがあるようで…


∟2.繁華街進行ルート 二人の娘のプレゼント

「江風と蒼龍だ…」

 

「尾行出来る⁇」

 

「オーケー…」

 

横須賀と別れ、繁華街に向かった江風と蒼龍の尾行を始める

 

江風と蒼龍は、まず最初に伊勢に入った

 

二人の席からしきりを挟んだ席に座り、コーヒーを啜りながら備え付けの新聞を読むフリをする

 

「お父さんのケーキには敵いませんねぇ〜」

 

「まぁな〜」

 

「お父さんは何が良いかな⁇」

 

「刺繍入りのジャケットとかどうだ⁇」

 

「いいですねぇ‼︎お父さん、全然外行き持ってないからなぁ〜。そうしましょう‼︎」

 

聞こえて来る声で分かる

 

蒼龍はあぁ見えて、父親であるトラックさんの事を好いている

 

その反面、江風は少し複雑な感情を抱いている気もした

 

「さっ、出ましょうか⁇」

 

「ゴチンなった‼︎」

 

二人はそれぞれモンブランとショートケーキを食べ、体を温める為にココアを飲み、伊勢を出た

 

「ごちそうさん」

 

「ありがとうございました。二人の尾行ですか⁇」

 

「まぁなっ。またイルミネーション発動されたら敵わん…」

 

伊勢を出て、二人が話していたであろう行き先のムッシュ・海防に向かう

 

「どんなジャケットが似合いますかねぇ〜」

 

案の定、二人はムッシュ・海防でジャケットを選んでいた

 

二人に気付かれないように、店外にある革ジャンの品定めをするフリをする

 

「蒼龍の姉貴とお揃いの緑のスカジャンなンてどうだ⁉︎」

 

「おぉ〜‼︎これならお父さんにも泊が付きますねぇ‼︎」

 

「にしし…」

 

何となく、江風が悩んでいる事が分かった気がする

 

蒼龍が”お父さん”と言う度、江風はどうして良いか分からない顔をしている

 

「これく〜ださいっ‼︎」

 

「3000円っしゅ。刺繍はどうするっしゅ⁇」

 

「S・Aでお願いします」

 

S・A…

 

トラックさんが茂樹って名前なのは知ってるが、Aは知らない

 

蒼龍と江風が1500円ずつ払い、刺繍が出来上がるのを待つ

 

「アタシ、ちょっと外出てるわ」

 

「寒いのでここに居ますね〜」

 

江風だけ、ムッシュ・海防から出て来た

 

「あ、レイさん」

 

「よっ」

 

ちょうど良い

 

少しカマかけてみよう

 

「お父さんにバレンタインのプレゼント渡すのか⁇」

 

「あぁ…まぁ、そンな所さ…あはは…」

 

江風の目が泳ぐ

 

予想は当たっていたみたいだ

 

「呼んでみたらどうだ⁇」

 

「断られたらどうすんだよ‼︎」

 

「トラックさんの事だ。断らんさっ。照れはするだろうけどな」

 

「うぅ…」

 

「良い機会だと思うぞ⁇」

 

江風は悩んでいる様に見える

 

「で、でもさ…その…お父さンって呼ンじまうと、その…ケ、ケ…」

 

江風はモジモジし始め、また目が泳ぐ

 

「江風の好きはどっちだ⁇」

 

「両…方…」

 

あぁ、なるほどな

 

江風は今、凄く悩んでいる

 

本当はトラックさんを蒼龍と同じ様にお父さんと呼びたい

 

だけど、お父さんと言ってしまうとケッコン出来なくなる

 

江風は今、両方の好きと言う感情の狭間で、どうして良いか分からなくなっている

 

「アタシさ…衣笠が羨ましいよ…明るくてさ、何でも出来てさ…」

 

俺と江風は防波堤にもたれながら蒼龍を待ちながら話をする

 

「衣笠は衣笠さっ。江風、お前はトラックさんの好きな所を、二つの目で見れる凄い奴だ」

 

「二つの目⁇」

 

「そっ。衣笠はトラックさんを男として。蒼龍はお父さんとしてしか見れない。でも江風、お前は違うだろ⁇男と

しても、お父さんとしても見れる」

 

「そだな」

 

「江風は他の子より倍、トラックさんの好きな所を知ってるって訳だ」

 

「…バカにしないか⁇」

 

「する訳ねぇだろ‼︎愛に間違いは無い‼︎」

 

「分かった‼︎アタシ、今日頑張って見る‼︎」

 

「あっ‼︎」

 

江風の決意が固まった所で、蒼龍が出て来た

 

「ちゅ〜事だ‼︎じゃあな‼︎」

 

蒼龍の目の色が変わるのを見て、その場から脱出する為にダッシュで逃げた

 

「指…」

 

「まぁまぁ、今日は良いじゃないか」

 

「勿体無い…」

 

「帰ンぞ‼︎」

 

「うんっ」

 

江風と蒼龍は、トラックさんに渡すプレゼントを手にし、自身達の基地に戻った…

 

 

 

 

「ただいま‼︎」

 

「戻ったぞ〜‼︎」

 

「おかえり。良い物買えたかい⁇」

 

「はいっ‼︎」

 

蒼龍は持っていた紙袋をトラックさんに渡した

 

「私にかい⁇」

 

「割り勘で買ったんですよ⁇ねっ⁇」

 

「あぁ‼︎似合うと思うぜ‼︎」

 

「どれどれ…」

 

紙袋の中から、緑のスカジャンが出て来る

 

「おぉ〜‼︎高かったんじゃないのか⁉︎」

 

スカジャンを手にしたトラックさんは、内側にはS・Aと刺繍されているのに気が付いた

 

「”茂樹・有村”…お父さんのイニシャル、刺繍して貰ったの‼︎」

 

「ありがとう…」

 

筋骨隆々のトラックさんは、中々身の丈に合う服が見つからず、大きめのスカジャンを貰い、感涙している

 

そんなトラックさんを見て、江風は言った

 

「だ、大事にしてくれよな…お、お父さン‼︎」

 

「勿論さ‼︎いやぁ、これは本当に嬉しい‼︎」

 

「ンじゃ、アタシ風呂入って来るわ‼︎」

 

「ありがとうな‼︎」

 

「いつものお礼さっ‼︎」

 

江風は笑顔で手を振りながら執務室を出た

 

「い…言っちまった…」

 

執務室を出てすぐ、江風は口を抑えて震えていた

 

「また、呼んでみよう、かな⁇えへへ…」

 

ニヤついた顔をしたまま、江風はお風呂に向かった…

 

 

 

 

「江風からお父さんと呼ばれた‼︎」

 

「嬉しいですかぁ⁇」

 

蒼龍は執務室の机に両肘で頬杖をつきながらトラックさんを見つめている

 

「うんっ‼︎今日はダブルで嬉しいよ‼︎」

 

「お父さんは素直ですねぇ〜…」

 

「娘二人からプレゼントかぁ…うんうん‼︎」

 

何度も何度もスカジャンを見てはデレデレの顔になるトラックさんを見て、蒼龍はいつもの食人衝動を起こさず、その傍らでただただ微笑んでいた…


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