艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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17話 黒い少女と青いカモメ(6)

”分かりました‼︎”

 

「失礼します」

 

今日は騒がしいな…まったく

 

「貴方、国連隊だったの⁇」

 

「お前までか…」

 

私が頭を抑えていると、ローマは一人でお茶菓子を食べ始めた

 

「食べましょ」

 

「う、うん…」

 

席に座ると、再び聞かれる

 

皆が恐れる国連隊って何⁇

 

どんな人がいたの⁇

 

私はローマにだけ、全てを話した

 

彼女に教えた理由は、ただ一つ

 

彼女は私の事を良く知ってる

 

それに、彼女には教えても大丈夫と確信していた

 

「国連隊ってのはな…簡単に言うと、国家間のイザコザを収めたり、指令を受けて現地へ飛ぶ奴等の事を言うんだ。まぁ、あの反攻作戦の時にほとんど居なくなったがな…」

 

「日本では、横須賀さんと貴方だけ⁇」

 

「そうだな…空は二人だけだろうな…海はもう数人いるだろうけど、デスクワークだからな…前線を経験したのは、俺とあいつだけだ。国連隊の連中自体少ないし、俺達空の連中は海の連中と仲が悪かったからな…」

 

「なら、何故海に⁇」

 

「怪我したのもあるけど、あいつが誘ったのが事の始まりだな」

 

「そう…今日はもう聞かないでおくわ」

 

「何で⁇」

 

「貴方、あんまり質問したら怒るでしょ⁇」

 

私の何もかもを見透かした様な目で見つめて来る

 

「いいさ。お前の前だ」

 

「いいの。その代わり、また話して頂戴」

 

「分かった」

 

「さ、もう寝ましょう。明日は演習でしょう⁇」

 

「忘れてた‼︎」

 

歯を磨いてベッドに入る

 

明日は早いからな…

 

「消すわよ」

 

「一緒に寝るのか⁉︎」

 

「今更何言ってるのよ」

 

灯りを消した途端、隣にローマが入って来た

 

「久し振りね…」

 

「俺の顔見えるか⁇」

 

「見えないわ…どこ⁇」

 

目の前でローマの手が右往左往する

 

私は夜間飛行で慣れてはいるが、ローマは夜中になると極端に視力が落ちる

 

あの眼鏡は本来夜中にする為の物なのだが、今ではずっと付けている

 

「ちょっと…ホントにどこ⁇」

 

「ここだ」

 

彼女の両手を握り、顔を近付けた

 

「私が寝るまで、こうしておいて⁇」

 

「分かった分かった」

 

しばらくすると、彼女が寝息を立て始めた

 

昔もそうだったな…

 

手を握ると安心するのかすぐに眠りにつく

 

…いつもこうなら助かるのにな

 

今も昔も、人に対して食って掛かる癖がある

 

さぁ、私も寝よう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

朝起きると布団の中に嫌に甘い匂いが溜まっている

 

恐る恐るめくると、まだ眠っているローマがいる

 

ちょっとしんどそうだ…

 

「これは、武蔵に怒られるな…」

 

「ん…おはよう…」

 

「もう少し寝てろ。まだ5時だ」

 

「起きるわ。私も演習に行く」

 

眼鏡を掛けて台所に立つと、すぐに美味しそうな匂いが漂って来た

 

「俺、昨日お前に何かしたか⁇」

 

「いつもの事でしょ⁇私が嫌って言ってもするのが貴方でしょ⁇」

 

「す、すまん…」

 

「いいわ。私もご無沙汰だったし。さ、食べましょ」

 

どうやら相当な事をしたみたいだ…

 

この食事が終われば、演習が始まる

 

ドイツ

 

日本

 

そして、このパスタの国

 

当時の同盟国ばかりだ

 

「大佐」

 

扉の向こうから横須賀君の声がした

 

「入れ」

 

「おはようございます」

 

「なんだよ朝っぱらから」

 

「大佐、貴方にも演習に参加して頂きます」

 

「演習つったって、俺は今艦隊を持って無い」

 

「じき到着します。では」

 

仕事に戻ったあいつは、相変わらず愛想が無いな…

 

「頑張りなさいよ」

 

「うん。じゃあ行ってくる」

 

「待ちなさい」

 

ローマに顔を持たれ、行ってらっしゃいのキスをされた

 

「タバコと私のキスは、勝利の御守りでしょう⁇」

 

「今日は勝てそうだ」

 

「行ってらっしゃい」

 

「行って来ます」

 

まるで新婚の夫婦の様な会話をした後、横須賀君の待つ埠頭に向かう

 

「待ったか⁇」

 

「いえ…大佐、貴方もですか」

 

「え⁉︎あ、いや…お前もか⁇」

 

「パスタの国の女性は激しいです」

 

「まぁな…」


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