艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、191話が終わりました

今回のお話は、鹿島からある物を貰う所から始まります

それを使って何をするのか…

そして誰に使うのか…


192話 あの子は恋する女学生(1)

「レーダー艦”ダイダロス”より”ダイナマイトハニー”へ。其方の状況は⁇」

 

《敵影無しです。航路このままで構いません》

 

「了解した。”ヴァルキリー”其方は⁇」

 

《照月も大丈夫だよ‼︎》

 

「よし、演習終了‼︎御二方、神威に向かって下さい」

 

今日は大湊の近海で、レーダー艦”ダイダロス”の付き添いで対潜演習を行っていた

 

因みにダイナマイトハニーと言うのは、涼月の事である

 

演習が終わり、二人が神威に戻って行くのを見届けるまでがダイダロスの仕事である

 

「行ったか…ふぅ…」

 

ダイダロスの艦長は、二人が神威に入って行くのを見て、無線器を降ろし、深い溜息を吐く

 

「ハニーが怖いですか⁇」

 

「当たり前だ‼︎四肢に爆弾埋め込まれてるんだぞ‼︎」

 

ダイダロスの艦内が少し明るくなる

 

密漁をしなくなったダイダロスの船員は、よく笑う様になった

 

しかし、艦長は相変わらず涼月に脅されている

 

あれから一度だけ試しに涼月に逆らった時、左肩関節が高速で脈打ち始めたのを境に、艦長は一切涼月に逆らえなくなっていた

 

涼月の言った事は本当で、艦長の四肢の関節部それぞれに本当に爆弾を埋め込んである

 

「まっ、まぁ…確かに可愛い所もある…か、な⁇」

 

実は涼月、自分の両親、照月に続き、艦長に懐いている

 

普通にしてれば、涼月はまだまだ甘えんぼさんなのだ

 

「艦長」

 

「なんだ⁇」

 

「相手は生後一年も…あいた‼︎」

 

「そう言う感情じゃないわいや‼︎」

 

焦った艦長は隣にいた部下にゲンコツを落とし、語尾が変になった

 

 

 

 

 

「ただいま〜‼︎」

 

「ただいま戻りました」

 

「お疲れさんっ。ご飯出来てるから食べて来な‼︎」

 

神威に戻って来た二人は食堂に向かう

 

「わぁ〜っ‼︎」

 

「お肉沢山‼︎」

 

今日の昼食は、ボスオリジナルの満艦全席

 

満漢全席じゃなく、満艦全席なのは、艦の中で食べるからである

 

二人は早速席に着き、満艦全席を食べ始める…

 

 

 

 

その頃大湊では…

 

「マーカスおじさん、これは⁇」

 

「これは何だろうな⁇時津風は何だと思う⁇」

 

「アヒルさん」

 

「じゃあ読んでみるか…」

 

時津風を膝に乗せ、絵本を読む

 

一緒に来たきそは工廠で今日のデータを集めている

 

絵本を読み聞かせている時津風は本当に大人しく、ジーッと絵本を見ている

 

基地にいる子供達、そして自分の子供達の様に、あれはなんだこれはなんだと聞かれない分、少し寂しい気もするが、これもこれで良い

 

「あらレイ‼︎来てたのね⁉︎」

 

「すみません、時津風の相手して貰って…」

 

腕を組んだ鹿島、そして腕を組まれた棚町が帰って来た

 

「手隙だったんだ。照月は⁇」

 

「もうすぐ帰投します」

 

「んっ…」

 

読み聞かせが中断した為、時津風が俺の腕を叩く

 

「すまんすまん‼︎」

 

読み聞かせを再開し、時津風はまた大人しくし始める

 

「大尉は本当に父親になりましたね…」

 

「レイは元からあんな感じですよっ」

 

夫婦からお褒めの言葉を頂きながら、読み聞かせを進める

 

「アヒルは…」

 

「…」

 

先程からカクカクと首がうな垂れていた時津風の頭が胸板に当たる

 

どの子も一緒だな…

 

読み聞かせをすると寝てしまう

 

「よいしょ…」

 

時津風を寝かせた後、棚町達の所に寄る

 

「大尉。たまには謝礼を受け取って頂けませんか⁇」

 

棚町が分厚い茶封筒を机の上に置く

 

毎回護衛の代金や演習の謝礼を渡して来るが、いつもなんだかんだ理由を付けて全部断っている

 

分厚いのは、今までの分も入っているからだろう

 

だが、どうしても彼等から受け取りたくなかった

 

俺に払う金で、空いた時間を少しでも取り戻せば良い。そう思っているのもあるし、俺はちゃんと横須賀からキチンとした給金は貰っている

 

横須賀からも「それはキチンとした正当なお金だから受け取りなさい⁇」と言われているが、何か嫌だ

 

「そうですよレイ。これは一応職務なんですから‼︎」

 

「礼なら照…」

 

「「照月ちゃんはちゃんと受け取ってくれます‼︎」」

 

「ゔっ…」

 

言いたい事を先に言われ、声が詰まる

 

「なら…金よか物が良いな」

 

「物…ですか⁇大尉を超える物か…」

 

棚町が頭を抱える横で、鹿島がニヤついている

 

「レイ…面白い薬をあげましょうか⁇」

 

「そうそう‼︎そう言うのだよ‼︎」

 

「少々お待ちを…」

 

鹿島が隣の部屋に行き、小瓶と説明書らしき紙を持って来た

 

「この薬は面白いですよ…何と若返りの薬です‼︎」

 

「ほほぅ⁉︎」

 

鹿島から説明書を受け取り、内容を読む

 

 

 

 

”細胞回春液 KSM-16”

 

・使用法

 

1.食事に三滴程垂らし服用

 

2.飲料物に一滴二滴垂らし服用

 

・作用

 

服用者の細胞を活性化し、16歳前後の見た目へと退行させる

 

服用後、その状態で再度服用すると8歳前後まで退行

 

16歳未満には服用しない事。本液薬の効能が出ません

 

・副作用

 

服用者の一時的記憶喪失

 

・作用の効能が切れる方法

 

全身の血行を促進させ、本液薬を体内全域に行き渡らせる

 

本液薬は全身に行き渡ると自動的に消滅しますが、通常の心身の状態では戻る事はありません

 

 

 

 

これは中々面白そうだ‼︎

 

「この、記憶の一時的喪失ってのは⁇」

 

「使った人が一番好きな人の記憶が無くなります。分かりやすく言うと、レイの記憶が無くなればレイが好きだと言う事です」

 

「なるほど…」

 

「それと、全身の血行を〜と言うのは、要はドキドキさせれば良いんです‼︎」

 

「よし、買おう。幾らだ」

 

「それがお礼です」

 

「よし、それなら受け取る‼︎」

 

「帰って来たよ〜‼︎」

 

タイミング良く照月も帰って来た

 

「またお願いしますね」

 

「また来てね⁇」

 

二人に別れを告げ、時津風の頭を撫でた後、執務室を出た

 

きそを迎えに行き、グリフォンに乗ろうとした時、表でダイダロスの艦長が涼月から逃げ回っていたが、気にしないでおこう…




ダイダロスさん…レーダー艦艦長

涼月に頭が全く上がらないレーダー艦”ダイダロス”の艦長

涼月に逆らうと、四肢に埋め込まれた爆弾が爆発すると脅されている

まさか爆弾が入っているとは本当に思っておらず、一度軽く逆らった所、左肩関節部が高速で脈打ち始めたのをキッカケに、涼月に逆らえなくなる

涼月の渾名をダイナマイトハニーと付けたのは彼

涼月に対しては、子供の様な感覚を示しており、涼月自身も悪く思っていないが、逆らうといつでも爆破するつもりではあ

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