艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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更新が遅れて申し訳ありません

スマホをアップデートした際、メモに書いてあったSSが全部消えてしまい、思い出すのが大変でした

大変申し訳ありませんでした


190話 オンナノタタカイ(4)

猛攻の末、榛名は何とか勝利を収めた

 

だが、榛名は深海棲艦の一撃を受け、意識不明の重体…

 

その榛名を今、リシュリューが救出に来た

 

《榛名さんを見つけたリュー‼︎》

 

「よし、連れて帰って来てくれ‼︎クラウディア‼︎基地行ってきそ引っ張って来てくれ‼︎」

 

《畏まりました》

 

俺は俺で負傷者の手当てを進める

 

数十分後、榛名を抱えたリシュリューが戻って来た

 

背中には自分の分と榛名のハンマーを背負った状態だ

 

「戻って来たリュー‼︎」

 

リシュリューに抱えられた榛名の鳩尾は、深海棲艦の腕が突き刺さっており、喫茶ルームの床にポタポタと血が落ちて行っている

 

「よしっ‼︎緊急オペだ‼︎露天風呂に運んでくれ‼︎」

 

「分かったリュー‼︎」

 

リシュリューに抱えられ、榛名は脱衣所で横に寝かされた

 

「まっ…マーカス…」

 

「もう喋るな‼︎よく頑張ったな‼︎」

 

「こいつが…犯人ダズル…」

 

榛名は持っていた風呂敷包みを俺に渡した

 

「榛名達のっ…学校の、先公ダズル…」

 

「分かった。よく頑張ったな…服脱がせるからな⁇」

 

榛名の服を脱がせ、傷を確認する

 

「オメェの好きな…巨乳ダズル…」

 

「そんだけ喋りゃあ上等だ‼︎よし、露天風呂でオぺをする。PT‼︎モルヒネくれ‼︎」

 

「ぷとっ‼︎」

 

PTからモルヒネと注射器を受け取り、榛名の腕に打つ

 

「まっ、マーカス…」

 

「何だ⁉︎」

 

「きそにっ…謝って欲しい、ダズル…」

 

そう言って、榛名は震える手であの眼鏡を俺の手に置いた

 

レンズは割れ、フレームも曲がっている

 

「榛名の…”宝物”ダズル…」

 

「分かった。直して貰う様に言っといてやる」

 

「ぐへぇ…」

 

変な声を出した後、榛名は眠りについた…

 

「榛名さん…」

 

クラウディアに連れて来られたきそが、横たわっている榛名を見て青ざめる

 

「こいつを取り除く。手伝ってくれるか⁇」

 

「う、うん‼︎」

 

きそと共に榛名を温泉に浸ける

 

本来ならカプセルに放り込めば良いのだが、万が一このままこの腕が癒着してしまったらとんでもない事になる

 

なるべく傷口に湯を当てぬ様に、しかし体中の別の大小の傷は治癒出来る様、体を湯船に浸ける

 

「降って来た…」

 

オペが続く中、再び雪がチラつく

 

「この気温が味方してくれるかもしれないよ⁇」

 

湯船の効能、そして気温の低さが相まって、榛名の出血が少なくなって行く

 

それでも互いに手は止めない

 

「オッケー…切除完了‼︎」

 

ガシャンと音を出し、トレーに置かれる深海棲艦の腕

 

後は傷口の状態を見て、カプセルに放り込むか、このまま露天風呂に浸かっておけば良い

 

「ふぅ…」

 

「…」

 

俺が安堵の息を吐く前で、きそは榛名の首元に手を置いた

 

「オッケー…おかえり、榛名さん」

 

「一段楽だな…」

 

「うんっ…」

 

きそは露天風呂の端に座り、榛名の頭を膝に置き、ずっと榛名の顔を見たり、前髪を撫でたりしている

 

「俺は中でもう一仕事して来る。榛名は任せたぞ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

ここは二人きりにさせた方が良いみたいだ…

 

榛名がHAGYを母親と思っているなら

 

きそにとっての榛名も、それに近い感情があるみたいだしな…

 

 

 

 

「ふ〜ん、ふんふ〜ん…」

 

榛名を膝の上で寝かせたまま、きそは鼻歌を歌う

 

「榛名さん…僕知ってるよ⁇榛名さん、お月様が好きなんだよね⁇お月様に行けば、誰も傷付けなくて済むから…1人でいられるからだよね…」

 

今きそが鼻歌を歌っているのは、榛名が時折歌っている歌だ

 

きそはちゃんと覚えていた

 

「もう一人じゃないよ…」

 

きそは榛名の頭を撫で、鼻歌を歌い続ける…

 

 

 

 

 

榛名をきそに任せた後、俺は医務室に来た

 

スカイラグーンに置かれているカプセルは三つ

 

内二つが既に起動しており、中に入っている”人間”の治療を進める

 

「さてと…」

 

榛名が命辛々持ち帰って来た風呂敷を開ける

 

「うへぇ…」

 

覚悟はしていたが、やはり生首が入っていた

 

生唾を飲み、恐る恐る生首を手に取る

 

「…ナニミテンノヨ」

 

「ヒィィィイ‼︎」

 

生首が喋った瞬間、一気に壁際に下がる

 

「い…生きてんのか⁉︎」

 

「シンカイノセイメイリョクヲナメナイデチョウダイ」

 

「こっ、こここ怖くなんかないぞ‼︎」

 

本当はションベンチビって、今すぐこの場から逃げ出したい

 

「な…名前は何て言うんだ」

 

「…ヤマシロ」

 

「お前には聞きたい事が山程ある」

 

「ハッ‼︎ワタシガハナストデモ⁉︎」

 

「なら俺は知らん。お前をそのままここに放っておく。何日持つかなぁ〜⁇いや、何カ月…何年何十年もこのままだろうなぁ〜その生命力なら」

 

「グ…」

 

流石にこのまま何十年も放置は困る様で、ヤマシロは渋り始めた

 

「どうする⁇俺ぁどっちでも構わん。ただ、俺はお前を治してやれる。良い取り引きだとは思うがな⁇」

 

「…ワカッタワヨ‼︎ハナセバイインデショ‼︎」

 

「良い子だ…」

 

ヤマシロを掴み、そのままカプセルに投げ入れる

 

「まっ、あれだ。治してはやるが、二度と悪さ出来ん様な体にする。それに監視も付く。いいな⁇」

 

「ワカッタワヨ‼︎ダカラハヤクナオシテ‼︎カミツクワヨ‼︎」

 

「そんなナリで言われても怖くないよ〜だ‼︎」

 

ヤマシロはカプセルの中で浮遊しており、中でグルグル回っているので、全然怖くなかった

 

「さてっ…流石にちょっと休憩しますかね…」

 

診察、治療、手術と立て続けにやれば、流石に疲れが来る

 

「そこでジッとしてろよ‼︎」

 

「ワカッテルワヨ‼︎」

 

後は待てば良い

 

ただ、人間は艦娘やら深海の子達と違って、少し治りが遅い

 

カプセルには治癒能力を飛躍的に上昇させる効果がある

 

人間は艦娘達と比べると治癒能力は低い

 

だから治癒も遅い

 

「大尉‼︎」

 

喫茶ルームに戻ると、何人かの兵士が頭を下げて来た


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