艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、189話が終わりました

今回のお話はちょっとグロいシーンがあります

そして、榛名の秘密も明らかになります

多分、泣けるお話です


190話 オンナノタタカイ(1)

朝5時…

 

「ふぁ…」

 

アクビをしながら食堂に来た

 

「おあよ‼︎」

 

「たかこしゃんきて‼︎」

 

「ん〜⁇」

 

二人に足にくっ付かれ、窓際に向かう

 

最近、ひとみちゃんといよちゃんの方が起きるのが早い

 

早く起きては定位置の窓際に座って外を見ている

 

「もこもこふってうの」

 

「あた⁇」

 

「あらっ。雪降って来たのね…よいしょ〜」

 

私に抱っこされた二人は、降っている雪に、小さな手を伸ばして取ろうとしている

 

二人からすれば、握りやすいもこもことした綿に見えるのだろう

 

「これは雪って言うのよ⁇」

 

「ゆき⁇」

 

「あたちあう⁇」

 

「そうよ〜。とっても冷たいの。今日はお外はお休みね⁇」

 

「しゃむいのいや‼︎」

 

「ぷうぷう〜ってすう‼︎」

 

「ふふっ。あったかい牛乳淹れたげるっ」

 

二人を降ろし、これまた定位置の机の前に座らせる

 

「さっぶ‼︎」

 

マーカス君も起きて来た

 

「おはよう。あったかいコーヒー飲む⁇」

 

「お願いします…くぁ…」

 

マーカス君もアクビをする

 

「えいしゃんおあよ‼︎」

 

「んっ。おはよう」

 

「ゆきふってう‼︎」

 

「なにっ⁉︎もうそんな季節か…」

 

マーカス君も窓際に立ち、雪を見つめる

 

「あらっ⁇」

 

こんな朝早くに、珍しく無線が鳴る

 

「俺が出る」

 

「お願いするわ」

 

マーカス君が無線に出てくれたので、私はコーヒーと牛乳を淹れる

 

「此方横須賀分遣隊。どうした⁇」

 

「はいっ」

 

「あいがと」

 

「あいがと」

 

ひとみちゃんといよちゃんの前に、あったかい牛乳を淹れたコップを置く

 

マーカス君の近くに熱いコーヒーを淹れたコップを置くと、無言で一礼した後、一口飲んでくれた

 

「場所は⁇」

 

コーヒーの入ったコップを置き、近くにあったメモ用紙とペンを取ると何かを書き始めた

 

「オーケー、了解した。救援を出す。近場の遠征部隊も救助に回る様に伝達してくれ」

 

無線を切った後、マーカス君は一度部屋に戻り、革ジャンを羽織って戻って来た

 

「どうしたの⁇」

 

「横須賀からだ。スカイラグーンの近くで、タンカーと民間の客船が衝突だとよ」

 

「行って大丈夫なの⁉︎」

 

「現場の指揮を頼まれたんだ。ちょっと出掛けて来る」

 

「これだけでも持って行って⁇」

 

「ありがとう。行き道で飲むよ」

 

出掛けようとするマーカス君に、コーヒーが入った水筒を渡す

 

「ひとみといよはお留守番だな⁇」

 

「はよかえってこいお〜」

 

「き〜つけてな〜」

 

マーカス君が飛んで行くのを見送り、食堂に戻る…

 

 

 

 

 

 

「ったく…譲り合いしねぇからこんな事になるんだよ‼︎」

 

《創造主様の仰る通りです》

 

グリフォンが飛び立つ少し前、たまたまネットの海にいたクラウディアを捕まえ、グリフォンに載って貰った

 

「一度現場の確認に向かう。その後、スカイラグーンに着陸してくれ」

 

《畏まりました》

 

クラウディアの操縦で、事故が起きた場所へと向かう

 

「お〜お〜、派手にやってくれたなぁ…」

 

無線で連絡を受けた座標に到着

 

眼下には転覆した民間の船舶、そして今にも傾きそうなタンカーが見えた

 

タンカーの側面には大穴が開いているが、舵やらダメコンを弄れば辛うじて立て直せそうだ

 

《民間の船舶にも、タンカーにも多数の生存者の反応があります》

 

「オーケー。スカイラグーンに行くぞ。俺を降ろしたら、上空から情報を集めてくれ」

 

《畏まりました。携帯端末に情報を逐一送信いたします》

 

「良い子だ」

 

スカイラグーンに着き、グリフォンを降りる

 

《お気を付け下さい、創造主様》

 

「ただの事故さ。心配無い」

 

「マーカスサン‼︎」

 

クラウディアを降りてすぐ、既に事故の事を耳にした集積地が待っていた

 

「集積地。お前の会社の出番だぞ‼︎」

 

「ピーティータチヲハケンシタ。マーカスサン、ゲンバノシキハマカセル」

 

「オーケー。俺の足あるか⁇」

 

「ホバークラフトガアル。ツカッテクレ」

 

「おっしゃ‼︎」

 

スカイラグーンに停泊していたホバークラフトに乗り、エンジンを掛ける

 

「ぷと‼︎」

 

「ぷっと‼︎」

 

ホバークラフトの横で行き遅れた数人のPTが俺を見ている

 

「乗るか⁇」

 

「「ぷとぉ‼︎」」

 

PT達を後ろに乗せ、運転席にタブレットを固定し、現場へと繰り出す

 

《通信を繋ぎます》

 

タブレット越しにクラウディアの声が聞こえる

 

「了解。此方マーカス。どうした⁇」

 

《おいマーカス‼︎何処に行きゃいいダズル‼︎》

 

「榛名か⁉︎何処にいる⁉︎」

 

《オメーの右側ダズル‼︎》

 

「ぷと‼︎」

 

「おっ、サンキュー‼︎」

 

片手でホバークラフトを運転しつつ、もう片手でPTから受け取った双眼鏡で右側を見る

 

榛名の周りに、リシュリューとHAGYが見える

 

遠征に出掛けた寸前の様子だが、救援に当たってくれるみたいだ

 

「確認した。俺の横に来い‼︎」

 

《オーケー。ハギィ、スカイラグーンであったかいモン作って待ってて欲しいダズル》

 

HAGYが「分かりました」と言った後、榛名とリシュリューが此方に来た

 

「すまんな」

 

「気にする事はね〜ダズル‼︎」

 

「助ける方が大切だリュー‼︎」

 

「ぷと…」

 

榛名を見て、PT達が少し引く

 

「大丈夫だぞ。もう榛名は味方だ」

 

「ぷとっ‼︎」

 

事故現場に着き、ホバークラフトを停止させる

 

「よしっ。榛名とリシュリューは民間船を。俺とPTはタンカーだ」

 

「オーケーダズル‼︎」

 

「行ってくリュー‼︎」

 

互いにハンマー片手に救出に向かう姿を見て、若干不安になる

 

「ぷとっ‼︎」

 

「ぷとぷと‼︎」

 

「よしっ」

 

PT達を両肩に乗せ、タブレットを持つ

 

《創造主様。レーダー艦、護衛空母、補給艦が接近中です》

 

「大湊の部隊だな」

 

大湊の部隊が来てくれたら安心だ

 

「大尉‼︎救助は此方にお任せ下さい‼︎」

 

ガンビアの甲板から岩井さんの顔が見えた

 

「了解した‼︎ちょっくら調査してくる‼︎」

 

PT達、そして榛名達に救助活動を任せ、事故原因の調査に移る

 

 

 

 

「クラウディア。上空から客船の方の破損箇所をスキャンしてくれ」

 

《はい。創造主様》

 

クラウディアにスキャンを任せ、まずはタンカーの調査を行う

 

「操舵室…か」

 

タンカーも既に傾いている

 

此方側だけでも何とか立て直せれば証拠として持ち帰れる

 

《スキャン完了。携帯端末に情報を送信いたします》

 

「クラウディア。もう一つ仕事を頼みたい。傾いてる船はどうすりゃいい⁇」

 

《そのタンカーのダメコンは電子制御が可能です。創造主様、舵は動かせますか⁇》

 

「今そいつの前にいる。猿でも分かる様に説明してくれよ⁉︎潜水艦の操縦は出来てもタンカーはからっきしだ‼︎」

 

《ふふっ。畏まりました。では、舵を左に3回回して下さい》

 

「オーケーっ…」

 

多少クラウディアにバカにされた気もするが、段々クラウディアが成長しているのを目の当たりにして嬉しい気もする

 

《固定して下さい》

 

「オーケー」

 

《後は此方でダメコンを制御します。創造主様は艦内の調査を続けて下さい》

 

「愛してるぜ、クラウディア」

 

《…ジェミニ様がヤキモチ妬きますよ⁇》

 

「へっ‼︎お前も一丁前に返せる様になったか‼︎」

 

タブレット越しにクラウディアと話しながらも、艦内のチェックを続ける

 

「タンカー内の生体反応は⁇」

 

《一つだけ貨物室に生体反応があります》

 

「逃げ遅れたのか…⁇」

 

《創造主様、気を付けて下さい。側面に開いた穴は貨物室付近にあります》

 

「だったら尚更だっ」

 

俺は生体反応がある貨物室へと足を向けた…

 

クラウディアの忠告をちゃんときいておくべきだった…と、この日程後悔した日はない一日になろうとは思いもしなかった…


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