艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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188話 一人の少女の安息地(2)

「ぐが〜…」

 

レイ達がしおいの捜索に出掛けた同時刻、しおいは島の家で昼寝をしていた

 

獲った獲物は網の中に入れ、海の中に放り込んである為、帰りにまた手にすれば良い

 

それよりしおいは満腹には勝てず、もうすぐ冬にも関わらずポカポカ陽気の中でうたた寝する方が優先だ

 

「うっほうっほ」

 

うんがーもしおいの横に来て、同じ様に昼寝を始める

 

「ん…」

 

しおいが目を覚ますと、横にはうんがーが眠っており、しおいは家を抜け出し、砂浜を探索してみる事にした

 

「未開の地なのかなぁ…」

 

言語が無い、ご飯も中々エスニック

 

そしてほとんどの住民が動物の皮や葉っぱで大切な部分を隠していた

 

まともな服を着ているのはしおい位だ

 

良い所だって勿論ある

 

ご飯はとっても美味しかったし、砂浜だって、ゴミ一つ流れていなくてとても綺麗だ

 

カラフルな鳥だっているし、何せ暖かい

 

「あっ‼︎何かある‼︎」

 

しばらく砂浜にそって歩いていると、これだけ綺麗な砂浜に似つかわしく無い、巨大な機械の残骸が放置されていた

 

しおいはそれに近付いてみた

 

何故かは分からないが、自分と同じ匂いがしたからだ

 

「なんだろ…」

 

残骸の周りをウロチョロしながら、しおいは想像を膨らます

 

「あ」

 

随分錆びていて大半が読めなくなっているが、何か文字が書かれているのに気が付いた

 

「え〜と…い‼︎よんぜろぜろ‼︎分からん…」

 

お気付きの方も居るかと思うが、ひとみといよが時々「わからん…」と言うのは、しおいのマネをしているからである

 

「そおいそおい」

 

「うんがー」

 

背中に銛を背負ったうんがーが来た

 

「これ何だろね⁇」

 

「うんがーうんがー」

 

「え、ちょっと‼︎」

 

うんがーはしおいの腕を掴み、残骸の中に入って行った

 

「うわぁ〜…」

 

中は所々穴が開いており、そこから太陽の陽が差し込んでいる

 

そして、所々に侵入している植物を見る限り、かなり前に流れ着いた様だ

 

「うっほうっほ」

 

「あ…」

 

うんがーが指差す先には神棚があった

 

何故かそこだけは綺麗にしてあり、不思議な感覚がしおいに纏わり付く

 

「うんがーうっほうっほ」

 

「うんがーちゃんは、ここから出て来たって⁇」

 

「うっほうっほ」

 

うんがーは頷く

 

「またまた〜。しおいを脅かそうとしてもダメだよ〜だ‼︎」

 

「うんがぁ…」

 

うんがーは悲しそうな顔をする

 

「アラララララララ‼︎」

 

「ばんぼ‼︎」

 

外で声がした途端、うんがーはすぐに振り返り、銛を構える

 

「どこ行くの⁇」

 

「ばんぼばんぼうっほうっほ‼︎」

 

しおいの手を掴み、うんがーは表に出た

 

「ばんぼーーーっ‼︎」

 

うんがーの声で、草の陰から数人の住民が出て来た

 

それぞれ槍や斧を構えており、臨戦態勢になっている

 

「そおい、ほっほほっほ」

 

「ん〜⁇」

 

うんがーが槍で差す方向には、見慣れた潜水艦が島に向かって来ていた

 

「タナトスだ‼︎」

 

「た、あ、と、す⁇」

 

「そう‼︎しおいのお友達‼︎」

 

「そおい、ともだち⁇」

 

「そう‼︎敵じゃないよ‼︎」

 

「ばばんばーーーっ‼︎」

 

「ババンバーーーっ‼︎」

 

うんがーは分かってくれた様で、うんがーが声を出した途端、周りの人は武器を降ろした

 

「そおい、ともだち、めっしめっし」

 

「いいの⁇」

 

「うっほうっほ」

 

うんがーの笑顔を見る限り、みんなにご飯を食べさせたいみたいだ

 

浜にタナトスが着き、しおいは歩み寄る

 

「レイ〜っ‼︎」

 

防水扉が開き、レイが降りて来た

 

「ったく。何処行ったかと思ったぞ⁉︎」

 

「えい⁇」

 

「そう‼︎しおいのお友達‼︎」

 

「えい、ともだち、めっしめっし」

 

「レイ〜‼︎ご飯食べよ〜って‼︎」

 

「分かった‼︎ちょっと待ってろ‼︎」

 

レイが降りて来た後に続き、ひとみといよ、そしてゴーヤが降りて来た

 

「オォ〜」

 

「サーモサーモ」

 

「ハハー…」

 

住民達がいきなり土下座を始めた

 

その相手はレイではなかった

 

「あにちてんの⁇」

 

「はは〜っていってう」

 

ひとみといよである

 

「そおい、さーもさーも‼︎」

 

「え⁇イルカの事⁇」

 

「さーも、うんがー、どっぽら」

 

「あ〜…なるほどね⁇」

 

うんがーの身振り手振りを見る限り、さーもはイルカ

 

そして、どっぽらと言うのは護ってくれる

 

イルカは私を護ってくれる

 

要はこの島ではイルカは神様である

 

その神様を模したぬいぐるみを持った二人が降りて来たので、住民は神の使いだと思い、土下座をしたのだ

 

「サーモ、メッシメッシ‼︎」

 

「めっしめっし‼︎」

 

「めっちてなんら⁇」

 

「たまけうおとこか⁇」

 

ひとみもいよも、何となく言っている事が分かる様だが、何か違う

 

「ゴーヤも食べたいでち‼︎」

 

「ゴーヤ⁇」

 

「ゴーヤメッシ⁇」

 

「メッシメッシ‼︎」

 

ゴーヤもご飯を食べさせて貰う事になり、先程しおいが食事した場所に向かう

 

「おぉ〜」

 

「くらものいっぱいあう‼︎」

 

ひとみといよの前には大量の食べ物がある

 

レイ達の前にも結構あるが、ひとみといよはそれ以上にある

 

そして待遇も違う

 

「たべていい⁇」

 

「メッシメッシ‼︎」

 

「いたあきます‼︎」

 

「いただきます‼︎」

 

早速ひとみといよが用意された物を口にする

 

「オォー…」

 

二人が食べる度に、住民から声が上がる

 

「ひとみといよを神様の使いだと思ってるみたいだね」

 

「な…なるほど…」

 

「えい、めっしめっし」

 

「あ、あぁ。頂きますっ‼︎」

 

レイも用意された物を食べる

 

「おっ⁇結構美味いな‼︎」

 

「おいし〜‼︎」

 

「くらものおいち〜‼︎」

 

ひとみといよにも好評の様だ

 

「ばんぼばんぼ」

 

「おっ。ありがとう」

 

木で作ったコップにジュースを注いで貰い、レイはそれを飲む

 

「サッパリしてるな⁇」

 

「うっほうっほ」

 

「ヤシの実か‼︎」

 

「あ、そうだレイ。この島で機械の残骸見つけたんだ‼︎」

 

「機械⁇こんな綺麗な所にか⁇」

 

「うん。何か、い‼︎何とか‼︎って書いてあったよ⁇」

 

「ちょっと見に行ってみるか…」

 

食事を終えた後、ゴーヤにひとみといよを任せ、しおいとうんがーと共に残骸の場所に来た

 

「嘘だろ…マジかマジかマジか‼︎」

 

残骸を見た瞬間、レイは目を見開き、駆け寄って行った

 

「はは…生きてる内に見れるなんて…」

 

レイは目を潤ませながら、残骸に触れる

 

「知ってるの⁇」

 

「あぁ…伊400だ…はぁ…」

 

レイは伊400に抱き着く様にもたれかかり、深呼吸をする

 

「俺がこの世で一番好きな潜水艦だ…タナトス…そんでロンギヌスの元になった艦だ」

 

「ほぇ〜…」

 

しおいは間の抜けた返事をする

 

「そおい、えい、うっほうっほ」

 

「そうだ。効果あるか分からんが…」

 

レイはポケットからきそリンガルを取り出し、耳に付けた

 

「しおい、れい、こっちこっち」

 

「おっ‼︎効いてる効いてる‼︎」

 

完璧な翻訳は無理だが、言ってる事がある程度は明確になった

 

そして、先程しおいに案内した神棚の前に着く


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