艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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2話 鷹は舞い降りる(3)

”せや”

 

決意に満ち溢れた妖精の目を見た時、こいつは出来ると感じた

 

「作れるのか⁇」

 

”言うたやろ、何でも作ったるって。その代わり、メッチャ時間かかるで⁇”

 

「構わんよ」

 

”期待しときや︎ほな︎”

 

妖精は何故か壁に向かって走り、そして壁に消えて行った

 

「チクショウ、部屋に穴開けてやがる︎」

 

”せや”

 

「うっ︎」

 

妖精が穴の向こう側から急に顔を出した

 

”たいほうのお目付け役に何人か回しとるからな”

 

「あ、ありがとう…」

 

ようやく落ち着いて本が読める

 

と、その前に…

 

窓の向こう側を見ると、遠くの方で草の上に座って、何かをしているたいほうが見えた

 

「さて、と」

 

煙草に火を点けて、再び本を読み始めた

 

「これは…なるほどな…」

 

独り言を交えながら、何度も読み返しては、頭の中でそれを想像する

 

「大佐」

 

「…」

 

「大佐」

 

「…」

 

「大佐︎」

 

「はっ︎すまんすまん、ははは…」

 

定時報告のタンカーが来ているのも気付かない位、のめり込んでいたのか…

 

「珍しいですね、貴方が読書とは」

 

「なんだよ、文句あっか︎」

 

「いえ、空に帰りたいのが、見て分かります」

 

「…しばらく考えるよ」

 

「それはそうと…あの大鳳は大佐の娘で⁇」

 

「見たのか⁇」

 

「えぇ。あれだけ我々に興味深々なら」

 

窓の外に停泊しているタンカーの近くで、降ろされて行く荷物を嬉しそうに眺めているたいほうがいた

 

「我が鎮守府にも大鳳は在籍していますが、大佐の大鳳は何処か幼い」

 

「失敗したんだとよ。艦載機のカートリッジもこのザマだ」

 

たいほうから預かったボウガンとカートリッジを、彼に見せた

 

「これは…」

 

「中身もビスケットとクッキーが詰まってる」

 

「戦わない艦娘か…大佐らしい…」

 

「それでいいんだよ、それで」

 

「では、次の定時報告で」

 

「あぁ」

 

彼は部屋を出てたいほうに何かを渡し、タンカーに乗り込んだ

 

「パパ〜︎」

 

「おかえり」

 

たいほうは手に封筒を持っていた

 

「パパにわたしてって︎」

 

「どれ…」

 

封筒の中にはそれなりの給料が入っていた

 

それと、一言付け加えられた手紙が一枚

 

「週に一度、行商船が其方に伺います。その時にお金を使って下さい」

 

「なにかうの︎」

 

「ん〜⁇分かんないなぁ。何を積んでるかも分かんないし…」

 

「たいほうはビスケットがいい︎」

 

「よしよし、買ってやろうな」

 

「うんっ︎」

 

「さっ︎お風呂に行っといで︎」

 

「いってきます︎」

 

小さく手を振り、たいほうを見送った

 

”提督、今日の報告や”

 

「どれ」

 

本日の遠征結果

・基地周辺を散歩

獲得資源…

燃料…3

弾…5

鉄…6000

ボーキ…4

 

獲得資材…

なし

 

 

 

「ちょっと待て、この鉄6000ってのは何だ︎」

 

”砂浜で何でか知らんけど宝石を拾たんや”

 

 

 

数時間前…

 

たいほうは砂浜で山を作っていた

 

「ふ〜じ〜は、に〜っぽ〜んい〜ち〜の〜やま〜」

 

砂を掴んでは、ペタペタと山に盛り付けて行く

 

「あれ⁇」

 

途中で手の平に光る物を見付けた

 

「わ〜…きれい…」

 

”持っとき。いい石かも知れんで”

 

「うんっ」

 

たいほうはポケットにそれを入れ、またしばらく砂山を作っていた

 

「おふねだ︎」

 

定時報告のタンカーが停泊するのを見て、それに駆け寄った

 

「おっきいね…」

 

”これはタンカーや。いっぱい資源を積んでるんや”

 

「タンカーすごいね︎」

 

「おや⁇君は⁇」

 

私と同じ白い軍服を着た、私より若い男性がたいほうの頭を撫でながら話しかけた

 

「大佐はいい娘に巡り逢えたようですね」

 

「あたしたいほう︎」

 

「私は横須賀の提督だよ。横須賀さんって、みんなは呼んでる」

 

「よこすかさんは、タンカーにのってきたの︎」

 

「そう。資源を積んでね。大鳳ちゃんは遠征の帰りかい⁇」

 

「うんっ︎」

 

「何か見付けたかい⁇」

 

「これみつけたよ。キラキラしててきれいだから、もってかえってきたの」

 

「どれ…」

 

たいほうの手からキラキラの石を取ると、横須賀の提督は目を細めた

 

「ちょっと借りるよ。明石、これは…」

 

横須賀さんの横にいたピンクの髪の毛の女性が石を手に取り、まじまじと見つめていた

 

「ルビーですね。本物です。この大きさなら、かなりの値段が付きますね」

 

「大鳳ちゃん、これは資源と交換出来るよ⁇どうする⁇」

 

「なにがもらえるの⁇」

 

「そうだなぁ…とりあえず鉄をいっぱいあげよう。今は無いけど、次にそれなりのお金とお菓子をあげよう」

 

「こうかんする︎パパもよろこぶね︎」

 

「分かった。鉄は倉庫に入れとくね」

 

「うんっ︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る

 

「宝石が落ちてただと⁇」

 

”せや。探せばもうちょっとあるかもやで⁇”

 

「ま、要調査だな。ありがとう」

 

”じゃあな〜”

 

妖精はいつも通り、穴の中に消えていった

 

「宝石ね…」

 

机に書類を置き、煙草に火を点けた

 

 

 

遠征に”宝石の謎を解け︎”が、追加されました︎!!




たいほう…人懐っこい甘えんぼガール

パパ提督が最初に所持した艦娘。

通称鼻水大鳳

パパ提督によく懐いている

よく鼻水を垂らしたり、虫取りをしたり、艦載機の代わりにビスケットを持っていたりと、かなり子供っぽい

他の大鳳と違い、体は一回り小さく、考える事や喋る事に幼さが残っている

特殊な艦載機を積載可能であり、パパ提督が極秘中の極秘で開発を進めている

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