艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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186話 ちいさなぼうけん(おつかい)(2)

「でゅくし‼︎」

 

「りゅくし‼︎」

 

今度は道のヘリに生えたコケを木の棒で剥がしながら、目的地を目指すひとみといよ

 

「あしがあしゃ〜ん‼︎」

 

「きたお〜‼︎」

 

「あらっ‼︎可愛いお客様ね‼︎」

 

着いたのは駄菓子屋足柄

 

ひとみといよは、タバコがここに売っているのをちゃんと覚えていた

 

「こえくらさい」

 

ひとみが、先程貰ったタバコの箱を見せる

 

「”Custard”の一ミリね。はいっ‼︎」

 

「につくらさい」

 

「につね‼︎はいっ‼︎」

 

足柄はひとみの数の数え方に合わせ、棚からタバコをもう一つ取り、ひとみに渡す

 

「あいがとおざます‼︎」

 

足柄からタバコを受け取り、ひとみはちゃんとお金を払い、お釣りとタバコをヒヨコ財布に入れようとするが、容量が小さい為入らない

 

「ぴよしゃんはいらへん」

 

「ちょっと待って‼︎え〜と…」

 

ヒヨコ財布にタバコを入れようとするひとみを見兼ねて、足柄は店の奥に行き、何かを持って帰って来た

 

「ここに入れて行きなさい⁇」

 

「ぱんらしゃん‼︎」

 

ひとみの顔が明るくなる

 

足柄が持って来たのは、パンダの柄が入った巾着

 

ひとみは早速タバコ二箱を巾着に入れ、紐を伸ばして振り回し始める

 

「くうくう〜」

 

「んっ、いよもぱんらしゃんほちい」

 

「いよちゃんのもあるわ。はいっ‼︎」

 

「わぁ〜っ‼︎」

 

いよの顔も明るくなる

 

と、なると早速物を入れたくなるのが子供の性

 

「そうら‼︎」

 

いよはお小遣いを貰ったのを思い出し、数個だけお菓子を選ぶ事にした

 

「ちょこえ〜といちつ…ち〜かあにつ…さあみさんつ‼︎こえにすう‼︎」

 

いよはカゴに

 

チョコレート一個

 

チーカマ二本

 

小さなカルパス三つ

 

を入れ、足柄に精算して貰う

 

「ここに入れる⁇」

 

「いえてください‼︎」

 

パンダの巾着に入って行く駄菓子を見て、いよはその場でピョンピョン跳ねる

 

「はいっ、ありがとう‼︎」

 

「あいがとござます‼︎」

 

足柄から膨らんだパンダの巾着を受け取り、二人は駄菓子屋足柄を出た

 

「す〜ぴゃ〜みゃ〜けっろいく⁇」

 

「おかちかう‼︎」

 

二人は巾着を振り回しながら、すーぴゃーマーケットを目指す

 

「よしよし、ちゃんと買ってるね」

 

「アシガラ。ありがとう」

 

「これ位ならいつでも言って頂戴‼︎」

 

スパイ二人は二人がちゃんとお使いを遂行しているのを見届けた後、また後を追い始めた

 

 

 

 

「わんわんら…」

 

「れかい…」

 

すーぴゃーマーケットに行く道中で、二人は行く手を阻まれる

 

一応鎖には繋がれているが、誰かが連れて来た軍用犬が鎮座しているからだ

 

軍用犬がいるのは最上のスティックミートの近く

 

ひとみといよは軍用犬を見た瞬間、足を止めた

 

「こえはやばいお…」

 

「わんわんかむ⁇」

 

「かみそう…」

 

壁に沿って恐る恐る移動するひとみといよだが、無情にも軍用犬は二人の方を向き、いきなり吠えた

 

「ウォン‼︎」

 

「ひ〜っ‼︎」

 

「ひ〜っ‼︎」

 

軍用犬はまだ軍用犬(見習い)の様で、敵意剥き出しで鎖をチャラチャラ言わせながら二人に飛び掛かろうとしている

 

「いよちゃん‼︎さあみあえて‼︎」

 

「ああああかった‼︎」

 

いよは急いで巾着からサラミを取り出し、軍用犬の足元に投げた

 

「どや‼︎」

 

「ウォンウォンワンワン‼︎グルルルル‼︎」

 

「ひ〜っ‼︎」

 

「こわいお〜っ‼︎」

 

ヨダレを撒き散らしながら、今にも二人に襲い掛かろうとする軍用犬(見習い)

 

二人はブルブル震えながら互いに抱き合い、軍用犬(見習い)を見つめる

 

「おりゃ」

 

「ぎゃん」

 

誰かがすれ違い様に軍用犬(見習い)を気絶させて行ってくれた

 

「さっさと行かないと食べられちゃうぞぉ〜…」

 

「ひ〜っ‼︎」

 

「おたしゅけ〜っ‼︎」

 

物陰から来た緑色のスパイの言葉で、二人はすーぴゃーマーケットの方に走って行った

 

「行った行った。良かったぁ…」

 

「全く…躾のなっていない犬だな」

 

「グルル…」

 

軍用犬(見習い)はすぐに起き上がり、KKTに敵意を向ける

 

「貴様…イヌの分際で私に逆らうというのか…」

 

KKTは手元でサージスタンガンをバチバチ言わせる

 

が、そこで予測しない事が起きた

 

バキンと音がした

 

「ヤバイ‼︎」

 

軍用犬(見習い)を縛っていた鎖が切れた‼︎

 

「KST‼︎逃げるぞ‼︎」

 

「あれはヤバイって‼︎」

 

「ウォンウォンワンワンワンワンワン‼︎」

 

イカれた目でヨダレを撒き散らしながら、スパイ二人を追い掛け回す

 

「うわぁ〜ん‼︎助けてぇ〜‼︎」

 

「イヌ怖い〜‼︎」

 

スパイ二人は両手を挙げながら繁華街を逃げ回り、イカれた軍用犬(見習い)に追い掛け回され、どんどんすーぴゃーマーケットから離れて行く…

 

「あれ⁇あっ‼︎コラァ‼︎」

 

ようやく飼い主が気付き、ホイッスルを吹いた

 

「ワフッ」

 

軍用犬(見習い)はその音に気付き、スパイ二人を追い掛けるのを止め、飼い主の元に向かった

 

「もっ、申し訳ありません‼︎」

 

「ちゃんと躾といてよぉ…」

 

「死ぬかと思ったぞ…」

 

追い掛け回された詫びとして、二人は最上のスティックミートを奢って貰う事になった

 

「う〜んっ‼︎美味しい‼︎」

 

「うん、美味い‼︎なぁ、KST。ここの店主は男なのか⁇」

 

「女の人だよ⁇」

 

「勘違いされるぞ…」

 

「…やっぱそう思うよね⁇」

 

「…あぁ」

 

しばらく下を向いて最上のスティックミートのネーミングセンスを考えた後、ある事に気付いた

 

「しまった‼︎二人を追い掛けなきゃ‼︎」

 

「そうだ‼︎美味すぎて忘れる所だった‼︎」

 

「ごちそうさま‼︎」

 

「ゴチになった‼︎」

 

「ありがと〜‼︎また来てね‼︎」

 

最上に挨拶をした後、スパイ二人は全速力ですーぴゃーマーケットに向かった




Custard…レイのお気に入りのタバコ

最近レイがシフトした、甘い香りがするタバコ

横須賀が昔吸っていたタバコでもある

カスタードの様な甘い香りがし、クセも少ない

1mg、5mg、8mg等色々あるが、レイは1mgのソフトが好きらしい

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