艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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体調崩してましたが、またちょくちょく書きますぞい


185.5話 あの日の約束(2)

映画が終わり、サラは途中で売りに来たポップコーンとコーラを飲みながらワンワン泣いていた

 

マークはサラが泣き止むのを今しばらく待ちながら、コーラを喉に入れる

 

「…スン」

 

「ちょっとは落ち着いたか⁇」

 

「うん…」

 

マークはもう一つの約束を果たす為に、再び車を走らせる

 

30年越しの、約束を果たす為に…

 

「マー君、動物園だわ‼︎」

 

車を路駐させ、サラと腕を組んで歩いていると、サラは動物園に興味を示した

 

「行きたいのか⁇」

 

「ウィリアムとタカコの思い出の場所なんですって」

 

「ウィリアムの⁇」

 

「そっ。なんでも、若い時に何度か来た事があるんですって‼︎」

 

「なるほどな…」

 

ウィリアムもここ、オーサカに思い入れがあるみたいだな

 

そう言えば、マーカスは昔この辺りに住んでいたらしい

 

ウィリアムは休日のマーカスと遊ぶついでに、タカコとデートしていたのだろう

 

ウィリアムとマーカスは兄弟みたいな仲だからな…

 

「ツーテン・カーク‼︎」

 

「登りたかったんだろ⁇」

 

「うんっ‼︎」

 

マークはツーテン・カークでやりたい事があった

 

だから、あの日もサラを誘った…

 

「うわぁ…」

 

ツーテン・カークの展望台に着くと、一面にネオンが広がっている

 

サラは窓に手を置いて、愛おしそうに夜景を眺め始めた

 

「マー君。ありがと…」

 

「30年前、この景色を見せたかったんだ。それが今叶った…」

 

サラはマークの腕に、そっと頭を置く

 

「マー君…パチンコの看板があるわ…」

 

「そ、そうだな…」

 

こういう雰囲気ブチ壊しの所を見ると、やはりジェミニは娘なんだなと思う

 

マーカスには申し訳ないな…

 

「アニマル達はいるかしら⁇」

 

サラはツーテン・カークの上から、眼下にあるテンノー・ジ・ドーブツエンを見下ろす

 

「サラ」

 

「なぁに⁇」

 

「結婚しないか⁇」

 

そう言って、マークはポケットから指環が入った小さな箱を出す

 

実はマークとサラ、ちゃんとした婚姻をしていなかった

 

30年前、本当はここでプロポーズをしようとしていた

 

それがズルズル引っ張り、結果、今日に至ってしまった

 

「ふふっ…マー君今幾つ⁇」

 

「40から先は覚えてない」

 

サラがクスクスと笑う

 

艦隊化計画の副産物であの日と変わらない、若い笑顔を見せるサラを見て、マークは当時の事を思い出していた…

 

「ふふっ‼︎分かったわ‼︎オジンなマー君はサラがお婿に貰ってあげるっ‼︎」

 

「ありがとう」

 

サラの細い薬指に指環を嵌め、夜景をバックにキスを交わす

 

その場にいたノリの良い関西の人は、マーク達を見てヒソヒソと話す事などせず、軽く拍手を送った後、二人が唇を離した後すぐに各々の会話に戻って行った

 

「結婚するまでに孫まで出来ちゃったね⁇」

 

「色々あったからな…」

 

「へぇ〜。結婚まだだったんか…意外だなぁ‼︎」

 

「アサシモ‼︎」

 

「迎えに来たぜ‼︎」

 

アサシモと共にエレベーターに乗り、下へと降りる

 

「車はもう送ってあるかんな⁇」

 

「ありがとう。ようやく胸のつっかえがとれたよ」

 

「凄く楽しかったわ‼︎」

 

腕を組んでいる、目の前の幸せそうなアベックを見て、アサシモは自身の父親と母親を写す

 

「良いってこった‼︎んじゃ、帰るぜ‼︎」

 

アサシモはエレベーターの床をバットの先端で突いた

 

「お疲れ様でした。お帰りの際はお土産コーナーに…あれっ⁉︎」

 

エレベーターガールが気付いた頃には三人の姿は無くなっていた…

 

 

 

 

 

現代に戻って来ると、ひとみといよ、そして横須賀が工廠にいた

 

「かえってきたお‼︎」

 

「あ〜しゃん、ま〜きゅん、しゃら‼︎」

 

「いやぁ〜‼︎ただいまぁ〜‼︎」

 

「あ〜しゃんおかえい‼︎」

 

「おかえい‼︎」

 

「おっ‼︎ただいまぁ‼︎」

 

 

帰って来たアサシモに早速抱き着く双子の少女を、マークもサラも目で追う

 

「おかえりなさい」

 

「ただいま」

 

「ジェミニ見て見て‼︎サラ、マー君に指環貰ったの‼︎」

 

サラは嬉しそうにマークに指環を見せる

 

「え⁉︎結婚してなかったの⁉︎嘘でしょ⁉︎」

 

「30年間ズルズル引っ張ってたんだ…ははは」

 

マークは申し訳無さそうに後頭部を掻く

 

「おじいちゃん、おばあちゃん‼︎今日は結婚記念日だな‼︎」

 

「おぉ‼︎そうか‼︎」

 

「お祝いしましょう‼︎そうだ‼︎隊長もレイも呼びましょう‼︎」

 

「けっこんきえんびてなんら⁇」

 

「わからん…」

 

皆が幸せそうに笑う中、ひとみといよは腕を組んで悩んでいた…

 

 

 

 

その日、マークとサラの知り合いを集めて、簡単ではあるが、二人の結婚記念日を祝うパーティーが開かれた

 

「けっこんきえんびたのしい‼︎」

 

「みんなあつまう‼︎」

 

ひとみといよの悩みは”楽しい事”として解消された


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