艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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17話 黒い少女と青いカモメ(3)

「…甘い物でも食べるか⁇」

 

「貴方のおごりね」

 

「仕方無い」

 

坂道を逸れ、開けた場所に出る

 

その一角にジェラートが売りの美味しい出店があった

 

覚えている限り、バニラとストロベリーのやつが美味しかったハズ

 

「「バニラとストロベリーのやつ、二つだ」」

 

私が注文すると同時に、彼女も注文同じ注文を入れた

 

「よく知ってるな」

 

「…ここの隠しメニューです。知ってるのは…」

 

「はい、お待ちど」

 

彼女がジェラートを持ち、私は自転車を押し、近くの噴水に腰を下ろした

 

「はい」

 

彼女からジェラートを受け取り、一口二口食べた

 

懐かしい味だな

 

「貴方、本当にソックリ」

 

「誰にだ⁇」

 

「あんまりこういう事言うの失礼だとは思うけど、その…私の好きなパイロットの人に」

 

「あの写真の隊長さん⁇」

 

照れてはいるが、ツンケンした顔の彼女の笑顔がようやく見れた

 

「そ、そうです。仕事の合間を縫って、まだ看護婦だった私をデートに連れて行ってくれました。あのジェラートだってそう」

 

「そっか…」

 

「ねぇ、出逢ったばかりで申し訳ないんだけど…もう少し傍にいさせて⁇」

 

「いいよ」

 

彼女と話していると、まるで昔に戻った気分になる

 

まだ戦える

 

まだ守れる

 

まだ…死ねない

 

私の闘気を再び震わせかける

 

そんな時、ふとたいほうを思い出す

 

私の使命は、再び国を守る事ではない

 

たいほう達を五体満足で平和な世に返してやる事

 

攻める戦いではなく、守る戦い

 

剣は捨てたが、盾はまだ持ってる

 

私に出来るのは…守る事だけ…

 

「さぁ、行こう。暗くなって来た」

 

「えぇ」

 

また自転車を漕ぐ

 

潮風が冷たい

 

夕焼けが眩しい

 

ここの景色を見る度、生きていて良かったと思う

 

「ここ。私の暮らしてる場所」

 

「海軍基地…ね」

 

「大佐‼︎やっと見つけました‼︎」

 

中から横須賀君が来た

 

「例の彼女は見つかりましたか⁇」

 

「…いや」

 

横須賀君は少しだけ微笑み、ため息を吐くと「晩御飯にしましょう」と言い、中に入って行った

 

「貴方何者⁇」

 

「自転車は何処に置いとくんだ⁇」

 

「あ、その角に」

 

自転車を置き、彼女と共に中に入る

 

「あ〜‼︎隊長さん見つけたかも‼︎」

 

二式大艇を操縦していた艦娘がいた

 

「秋津洲。私の部屋に、この子と私の御飯を持って来てくれるか⁇」

 

「分かったかも‼︎」

 

嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら、秋津洲は横須賀君の所へ向かった

 

「行こう」

 

「…」

 

無言のまま、背後から彼女が着いてくる

 

部屋に着いても、それは変わらなかった

 

「さて、と」

 

「あら、タバコ吸うのね」

 

「魔除けだ。君の好きな人も吸ってたろ⁇」

 

「…貴方、何者⁇私の事知ってるの⁇」

 

「まぁな」

 

彼女と目を合わさないまま、紫煙を吐く

 

「答えて」

 

「持って来たかも‼︎あれ⁇」

 

相変わらず空気を読まない秋津洲

 

「あぁ、ありがとう。これをやろう」

 

鞄からお菓子の袋を出し、秋津洲に握らせた

 

「わぁ‼︎何これ⁉︎美味しそうかも‼︎」

 

「カンノーロってお菓子らしい。また買ってやる」

 

「ありがとう‼︎嬉しいかも‼︎」

 

お菓子を嬉しそうに持ったまま、秋津洲は何処かに消えた

 

「さ、食べよう」

 

「ピザとパスタね」

 

「いただきます」

 

「…いただきます」

 

彼女は眉をしかめてパスタを巻き、口に運ぶ

 

そして、口まわりを汚しているのに気が付かずに食べ続ける

 

「こっち向いて」

 

「ん、何⁇触らないで…」

 

ペーパーで口を拭かれるのを、嫌そうに首を振る

 

「相変わらず食い方汚いな…ローマ」

 

「‼︎」


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