艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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184話 拗ねた雄鳥(2)

「おじ様だ‼︎」

 

「え⁉︎隊長⁉︎」

 

朝食中の磯風が気付き、横須賀達が窓の外を見ると、クイーンが着陸脚を出しているのが見えた

 

「こんな朝っぱらから珍しいわね…」

 

「何かあったのでしょうか⁇」

 

「朝霜、磯風、子供達を頼むわ‼︎ちょっと行って来る‼︎親潮、アンタも来なさい‼︎」

 

「畏まりました‼︎」

 

親潮は握っていたお箸を置き、横須賀の背後を着いて行った

 

「おか〜さん、大慌てだねぇ」

 

幸せそうにご飯粒を口周りいっぱいに付けた谷風も窓の外を見る

 

「もしかすると緊急事態かも知れないかんな」

 

 

 

 

「よいしょ…っと」

 

「翔鶴」

 

「パパさん‼︎」

 

翔鶴は私を見るなり、たいほうの様に抱き着いて来た

 

「もぅ…まだ目元が赤いですよ⁇」

 

「そうか⁇」

 

久々に抱き締める翔鶴は、いつもより体温が高く感じる

 

「隊長‼︎」

 

「横須賀⁇どうした⁇」

 

「いえ…緊急事態かと思って…」

 

「今日は翔鶴のお誘いなんだ」

 

「なるほど…ビックリしました…」

 

「おはようございます、大佐殿」

 

親潮の敬礼していた手を掴み、腰元へ降ろす

 

「敬礼は無しだ」

 

「は…はい」

 

「朝ごはん食べに戻りましょ⁇」

 

「はい」

 

緊急事態と思い飛んで来た横須賀と親潮は胸を撫で下ろした後、朝食に戻って行った…

 

 

 

 

翔鶴に腕を絡まらせながらやって来た繁華街

 

「翔鶴」

 

「パパさん⁇二人きりの時は翔子と呼んで下さい」

 

「しょ…翔子。ケーキで良いのか⁇」

 

「パパさんとなら何処でもっ‼︎」

 

翔鶴もとい翔子は嬉しそうに笑顔を返してくれた

 

今日ばっかりはこの笑顔に救われる事になりそうだ

 

早速伊勢に向かい、ケーキバイキングを堪能する事にした

 

「はいっ‼︎パパさんっ‼︎」

 

翔子にあ〜んをして貰う

 

「んっ‼︎」

 

「中将⁇あ〜ん‼︎」

 

「あ〜んっ‼︎」

 

横の席にラブラブのカップルがいる

 

片方はダンディーな外国人

 

もう一人は…

 

「大佐⁉︎なんでここに⁉︎」

 

瑞鶴だ

 

親父が瑞鶴と不倫していると、レイが言っていたのは本当の様だ

 

「おっ‼︎ウィリアムも不倫か‼︎」

 

「い、いえ…そういう訳では…」

 

「ははは‼︎冗談さ‼︎ほ〜ら瑞鶴、チョコレートケーキだぞぉ〜⁇」

 

「ちょうだいちょうだ〜い‼︎」

 

甘々な関係過ぎて吐きそうになる

 

「パパさんも貴子さんとあんな事したいですか⁇」

 

「今翔子にして貰ったからいいさ」

 

「パパさん…」

 

翔子はクスクスと微笑む

 

あまり比べてはいけないが、翔子には貴子にはない可愛さがある

 

翔子にはお淑やかさがある

 

貴子は付き合っていた時からも、丁寧だが結構大雑把な所があった

 

それも含めて、私は貴子が好きだ

 

それは変わらない

 

ただ、お菓子一つでマジギレされたらいても立ってもいられない

 

「結構頂きましたね⁇」

 

「食べる子は好きだ」

 

「ふふっ‼︎」

 

翔子は結局3ホール程ケーキを食べ、伊勢を後にした

 

「出た…」

 

「行こう…」

 

私と翔子が店を出てすぐ、誰かがコーヒーを置き、間隔を開けて店を出た…

 

 

 

 

翔子を腕に着け、繁華街を歩く

 

「パパさんは映画お好きですか⁇」

 

「そうだな。昔貴子とよく観に行っ…」

 

翔子に人差し指で口元を押さえられる

 

「今日はその名前…言わない様にしませんか⁇」

 

「んっ…そうだな。気付かなかった。すまん」

 

翔子は一度瞬きをした後、ぎこちなく微笑み、人差し指を離し、また歩き始める

 

 

 

 

「翔鶴が女の顔になっている…」

 

「完全に惚れてるね…」

 

先程から後を着けている、サングラスを掛けた女性二人組

 

その二人は壁から半分顔を出し、ずっと二人の様子を伺っていた

 

彼女達二人は、とあるクライアントに夕飯にプリンを付ける条件で雇われたプロのスパイ

 

赤い髪のスパイが

コードネーム…KKT

(くっ・ころ・ちゃん)

 

そして緑の髪の小さなスパイが

コードネーム…KST

(き・そ・ちゃん)

 

二人は数々の難事件を解決して来たスパイのプロでもある

 

「ね、ねぇ、あれ…」

 

「あれは…ザ・パパラッチ・アオバ」

 

追跡目標付近にカメラを持った美少女が現れた‼︎

 

 

 

ザ・パパラッチ・アオバとは…

 

提督や艦娘の写真を無許可で撮り、週刊誌に載せちゃうお茶目な女の子

 

たまにとんでもないスクープ写真を”間違えて”撮っちゃったりして、間違えて撮られちゃった提督を全提督の笑い者にするパワーを持っている

 

スパイ行動中は真っ先に排除対象になる

 

「パパの不倫を週刊誌に乗せられたら大変だよぉ」

 

「アーk…KKTに任せろ」

 

KKTはザ・パパラッチ・アオバに見つからない様に前屈みながら歩き、ゆっくりと近付く

 

「へっへっへ…大佐はまだ此方に気付いてないよ⁉︎」

 

ザ・パパラッチ・アオバは独り言を言いながらカメラを構え、追跡目標を写真に収めようとしている

 

KKTは匍匐前進で彼女に近付き、腰に付けているスパイ道具”サージスタンガン”を素肌のある脛に当てる

 

「おりゃ」

 

「あばっ‼︎」

 

ザ・パパラッチ・アオバは一瞬で気絶

 

「心配するな。多分峰打ちだ」

 

KKTは鞘にサージスタンガンを仕舞い、足早にKSTの所に戻って来た

 

「仕留めたぞ」

 

「オッケー」

 

ザ・パパラッチ・アオバは目を回しているが心配は無い

 

その後、追跡目標はジープの発着所に入って行った

 

二人はジープの影に隠れながら、追跡目標の様子を伺っていた…




サージスタンガン…ユーバリン力作非殺傷スタンガン

短剣の様な形のスタンガン

とある赤髪のスパイが腰に付けており、彼女のお気に入り

刀身自体に攻撃力はほとんど無いが、手元のスイッチを押すと高圧電流が流れる

アークはこれを使ってショートした電子機器を復活させたり、開かなくなった電子キーの扉をショートさせてこじ開けたり等、案外平和利用している

艦娘の子に当てると気絶する

とあるゲーム内の武器がモデルで、作者がどうしてもアーk…KKTに持たせたかった武器

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