艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、183話が終わりました

今回のお話は、久し振りにパパ目線のお話になります

パパの楽しみである、深夜のDVD観賞…

観ている映画にも注目です


184話 拗ねた雄鳥(1)

皆が寝静まった頃…

 

皆が…特に貴子が起きない様に、暗い食堂でコソコソと動く…

 

貴子が起きたら何を言われるか分からない

 

ジュースとコップを持ち、軽いお菓子を持って、一旦テレビの前に座る

 

テレビを付け、DVDの電源を入れる

 

《培養ハザーーードゥオ》

 

日中執務で忙しい為、こうして夜中に映画を観る事が多い

 

子供達にも普段からDVDを観せる事はあっても、今流しているSFホラーは一人の時しか見ない

 

DVDが始まり、飲み物とお菓子を持ってソファーに座る

 

アクションが多く、中々見応えはあるが序盤から結構グロい

 

これは子供達に観せられないな…

 

それでも、お菓子を食べるスピードは速くなる

 

持って来たポップコーン、中々味が濃くて美味しいな…

 

黙って映画を観続け、物語もいよいよ中盤と言う時、両隣に重さを感じた

 

映画の内容も相まって、恐る恐る、まずは右隣を見てみる

 

「じょんびら」

 

私の服の裾を掴みながら、テレビを指差しているひとみがいる

 

次は左隣

 

「さいこおすてーき」

 

映画の中でバラバラにされた人間を観て、笑っているのか怖がっているのか分からないいよが、私に頭を置いて映画を観ていた

 

「いつの間にいた⁇」

 

「じゅっといた」

 

「ばいようはじゃ〜どぅお〜のとこおかあ」

 

要は最初からである

 

やたらお菓子類の減りが速いと思っていたら、ひとみといよがチョコチョコ摘んでいたからか…

 

「怖くないのか⁇」

 

「なえた」

 

「も〜っろこあいことしってう」

 

「例えば⁇」

 

「ひとのあたま、ぴすとうれろか〜んしたい⁇」

 

「ほうちょうれあたまばいばいしたい⁇」

 

「ぱんちれぽんぽんにあなあいたい⁇」

 

「怖い怖い…」

 

幼さ故に恐怖心が無いのか、何気無い顔をしながら私に怖い事を言って来る

 

「えいしゃんこあい⁇」

 

「レイがしてたのか⁇」

 

「えいしゃん、ろ〜じんにしてう」

 

「あと、ろ〜やにはいってうひと」

 

「なるほどな…ひとみといよの前でした事あるか⁇」

 

「ない」

 

「ない」

 

そこの所レイはかなりしっかりしている

 

私は何度か艦娘の子達の前で人を殺めかけているが、レイにはそれが無い

 

「じゃあ何で知ってるんだ⁇」

 

「たあとすれみた」

 

「タナトスでか⁉︎」

 

「れっち〜、えいしゃんらいすき」

 

「でっち〜、えいしゃんじゅっとみてう」

 

「それでか…」

 

ゴーヤはレイの事が好きらしく、内緒でずっと監視しているらしい

 

その映像をひとみといよはたまたま観ていたらしく、その時にレイのスプラッターなシーンが映されたって訳か

 

「れっち〜にないしょ」

 

「えいしゃんにもないちょ」

 

「内緒にしとくよ。私がお菓子食べてたのも内緒にしてくれるか⁇特に貴子に」

 

「わかた」

 

「ないちょちとく」

 

二人は結局最後まで映画を観た後、口をゆすいで子供部屋に戻って行った

 

 

 

 

次の日の朝…

 

「おはよ〜」

 

「ウィリアム。ちょっと」

 

食堂に来た瞬間に貴子に手招きされる

 

「夜中にポップコーン食べたでしょ⁇あとオレンジジュースも」

 

「食べたかも知れんし、食べてないかも知れん」

 

貴子から目を逸らし、何とかはぐらかそうとする

 

「食べた事に関しては怒って無いわ。ウィリアムも趣味の時間欲しいわよね⁇」

 

「うん」

 

「何で私の”富良野ジャガバター味ポップコーン”食べたの」

 

「はっ…」

 

貴子のだったのか…

 

「おあよ‼︎」

 

「おきた‼︎」

 

ひとみといよが起きて来た

 

「おはよう‼︎ひとみちゃんといよちゃんは偉いわね〜⁇人のお菓子食べないものね〜⁇」

 

食い物の恨みは恐ろしいな…

 

貴子はひとみといよを抱っこし、それぞれの場所に座らせた

 

「…ひとみちゃんといよちゃんにも食べさせたわね⁇」

 

帰って来た貴子の眼光が鋭くなる

 

「…はい」

 

「タウイタウイモールに行ってもいいかしら⁇」

 

「…はい」

 

「ひとみちゃんいよちゃん‼︎朝ごはん食べたらみんなでタウイタウイモールに行こっか‼︎」

 

「いく‼︎」

 

「おかちかう‼︎」

 

「ふふっ…ウィリアム⁇」

 

ひとみといよに微笑んでいた顔が、此方を向いた瞬間に一気に怖くなる

 

「…はい」

 

「次…もし人のお菓子食べたら…ウィリアムの財布で照月ちゃんと一緒に回らないお寿司食べに行くから…」

 

「…はい」

 

気迫に負け、言い返す手段が全く無くなっていた

 

「おはよ〜。あ、いたいた‼︎貴子さん‼︎」

 

貴子の気迫に負けて棒立ちしていると、レイが起きて来た

 

手には袋を持っている

 

レイは食堂に来てすぐ台所に入り、袋の中身を出した

 

「昨日横須賀の駄菓子屋に行ったら、貴子さんの好きそうなお菓子あってさ‼︎夜中に帰って来たから渡せなくて…はい‼︎」

 

「あらっ‼︎」

 

レイの手には、昨日の晩三人で摘んだポップコーンが握られている

 

「食べたかったのよ〜‼︎ありがとう‼︎」

 

と、言いながら貴子がチラッとコッチを見た

 

(ウィリアムと随分違うわね⁇)

 

と、でも言いたそうな顔をしている

 

「う…うわ〜〜〜ん‼︎」

 

「隊長⁉︎」

 

その場の空気に耐えられなくなった私は、基地から逃げ出した

 

「放っておきなさい」

 

「…何かあったろ⁇」

 

「放っておきなさい」

 

「ひっ…」

 

レイでさえ貴子の眼力に負け、一歩後ろに下がっていた

 

 

 

 

「…スン」

 

《そう泣かないで下さい》

 

私はクイーンに乗って基地から飛び立っていた

 

操縦はクイーンに任せ、私は体育座りでむせび泣いていた

 

「だっ…だって、たかっ、貴子がさぁ…」

 

《そこまで泣く事ですか》

 

「あそこまでっ、怒るとっ、思って、ない、じゃん」

 

《はぁ》

 

クイーンの中でとにかくむせび泣いた

 

クイーンがドン引きする程泣いた

 

《パパさん。私とデートをしませんか⁇》

 

「クイーン、と、か⁇」

 

《横須賀でケーキを食べましょう。貴子さんには内緒で》

 

「しかし…」

 

《こんな時でもないと、パパさんと一緒にいられませんからね》

 

私はクイーンに言われるがまま、横須賀に連れて行かれた…


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