昼下がりになり、俺達は繁華街に戻って来た
「お父様‼︎」
目の前から清霜が走りながら飛び掛かって来た
膝を曲げ、清霜を受け止める姿勢に入る
「よいしy…」
「レイ‼︎」
「レイさん‼︎」
清霜の勢いは凄まじく、三人の真ん中に居た俺は二人の前から一瞬で居なくなった
最近めっきり大人しくなったから忘れてた…
清霜は俺の血を一番受け継いでるんだった…
「お父様見て‼︎ガン子ちゃんと一緒にお買い物行って来たの‼︎」
「な…何買ったんだ⁇」
「ジャン‼︎」
清霜は首から下げたポーチの中からお菓子やらビー玉を沢山取り出した
「これはお姉様の分と、お母様の分でしょ…これはお父様の‼︎」
「んっ。ありがとう」
清霜から飴玉を3つ受け取る
「いたっ‼︎やっと追い付いた‼︎」
息を切らせたガングートが来た
ガングートは俺に気付いた後すぐにアレンと健吾に気付く
「ん⁇貴様達は確かラバウルのT-50のパイロットだったな⁇」
「久し振りだな。どうだ⁇こっちの生活は」
「中々良いぞ。日本は”ガン子”にとって第二の故郷だ‼︎」
「ガン子…」
「何だ⁇ガン子はガン子だろう⁇久し振りに粛清してやろうか⁇ん⁇」
ガングートは微笑みながら二人にジリジリと近寄る
「わ、悪かった‼︎ガン子はガン子だなっ‼︎」
「うんうん‼︎良いアダ名だと思うよ‼︎」
腑抜けになってもそこは戦艦
戦艦を怒らせたらどうなるか、基地で痛い程知っている二人は必死に平謝りをする
「そうか。分かってくれたらそれでいい。イディオット2、イディオット3。清霜‼︎イディオット〜‼︎」
ガングートが俺の所に来た瞬間、二人は安堵の息を吐いた
「ちっさくても戦艦は戦艦だね…」
「大和を怒らせた時みたいにならなくて良かった…」
実はアレン、一度あの温和な大和の逆鱗に触れている
まだアイちゃんが産まれる前、それも愛宕とケッコンする前、アレンの部屋は結構汚かった
床には食べ終えたお菓子の袋
ベッドにはエッチな本が無造作に置いてあり、如何にも一人暮らしの男の部屋‼︎を体現していた
大和はそれを毎日片付けていたが、何度片付けようと次の日には散らかっていた
それが一カ月続き、とうとう大和がブチ切れた
「ちょっとは片付けろと…何度言ったら分かるんですかぁぁぁぁぁぁあ‼︎」
大和が吠えた瞬間基地中のガラスと言うガラスが全て吹き飛び、壁に亀裂が入り、付近を飛んでいた旅客機の計器を数分間に渡って狂わせた
大和自身もまさかここまで甚大な被害が出ると思っておらず、吠えた後は大変申し訳無さそうな顔をしながら、妖精達と共に修理を行っていた
アレンはそれからケッコンし、アイちゃんも産まれて、キチンと片付けをする様になった
あの恐怖の出来事をラバウルの人間は”女神の鉄槌”と呼んでおり、大和だけは怒らせないように日々を暮らしている
「お父様、またき〜ちゃんとガン子ちゃんと遊んでね⁇」
「そうだぞイディオット。家族サービスも大切だ‼︎」
「分かった。約束な⁇」
清霜とは指切りげんまんをし、ガングートは頭を撫でる
清霜とガングートが去り、高雄の部屋に来た
「いらっしゃいませ」
アレンと健吾が店の奥に向かい、俺はレジ周辺の貴金属を見ていた
「これは…」
ショーケースにあったアクセサリーに目が行く
「その商品、結構売れ行き良いんですよ⁇」
「へぇ〜…」
と、言いながらアレンの方をわざとらしく見る
A&A maid…
デザイン、丈夫さ、そして価格
全てが万人受けする物だ
ちょくちょく横須賀で愛宕を見掛けたのはここに来てたのか…
ショーケースの中はもうほとんど無い
本当に中々の売れ行きの様だ
「この前もお父様が御来店なされて、お連れの方の為にお買い上げしていましたよ」
「どっちだ…」
「ふふっ、両方です」
言われてみれば瑞鶴はネックレスをしていた
親父に買って貰ったのか…
「これ貰えるか⁇」
「畏まりました。500円になります」
ショーケースの中にあるカチューシャを指差し、専用のケースに入れて貰う
中々のデザインなのに低価格
良い仕事するな
高雄に500円玉を渡した所で、アレンと健吾もレジに来た
アレンは大きめのサイズの女性モノのTシャツ二枚
健吾はマフラーを二本買っている
アイちゃんや大和にあげるんだろうな
「ありがとうございました〜」
高雄の部屋を出ると、時刻は夕方
そろそろそれぞれの基地で夕飯の時間だ
「そろそろ帰らなきゃな」
「楽しかったよっ」
「また遊びたいです‼︎」
「今度はワンコも誘ってやろう‼︎」
それぞれの基地に向かう二式大艇に乗り込む寸前まで話し込み、男三人の休暇は終わりを迎えた…
A&A maid…アクセサリー製作会社
デザイン良し、丈夫さ、低価格の三拍子揃った庶民的なアクセサリー製作会社
デザインが良く、尚且つ電探等の効果も付いてくる為、艦娘の間で徐々に人気が出て来ている
製造元に言えばオーダーメイドも可能
A&Aの正体はアレン&愛宕の頭文字