艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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181話 雷鳥、凶鳥、時々番犬(4)

昼下がりになり、俺達は繁華街に戻って来た

 

「お父様‼︎」

 

目の前から清霜が走りながら飛び掛かって来た

 

膝を曲げ、清霜を受け止める姿勢に入る

 

「よいしy…」

 

「レイ‼︎」

 

「レイさん‼︎」

 

清霜の勢いは凄まじく、三人の真ん中に居た俺は二人の前から一瞬で居なくなった

 

最近めっきり大人しくなったから忘れてた…

 

清霜は俺の血を一番受け継いでるんだった…

 

「お父様見て‼︎ガン子ちゃんと一緒にお買い物行って来たの‼︎」

 

「な…何買ったんだ⁇」

 

「ジャン‼︎」

 

清霜は首から下げたポーチの中からお菓子やらビー玉を沢山取り出した

 

「これはお姉様の分と、お母様の分でしょ…これはお父様の‼︎」

 

「んっ。ありがとう」

 

清霜から飴玉を3つ受け取る

 

「いたっ‼︎やっと追い付いた‼︎」

 

息を切らせたガングートが来た

 

ガングートは俺に気付いた後すぐにアレンと健吾に気付く

 

「ん⁇貴様達は確かラバウルのT-50のパイロットだったな⁇」

 

「久し振りだな。どうだ⁇こっちの生活は」

 

「中々良いぞ。日本は”ガン子”にとって第二の故郷だ‼︎」

 

「ガン子…」

 

「何だ⁇ガン子はガン子だろう⁇久し振りに粛清してやろうか⁇ん⁇」

 

ガングートは微笑みながら二人にジリジリと近寄る

 

「わ、悪かった‼︎ガン子はガン子だなっ‼︎」

 

「うんうん‼︎良いアダ名だと思うよ‼︎」

 

腑抜けになってもそこは戦艦

 

戦艦を怒らせたらどうなるか、基地で痛い程知っている二人は必死に平謝りをする

 

「そうか。分かってくれたらそれでいい。イディオット2、イディオット3。清霜‼︎イディオット〜‼︎」

 

ガングートが俺の所に来た瞬間、二人は安堵の息を吐いた

 

「ちっさくても戦艦は戦艦だね…」

 

「大和を怒らせた時みたいにならなくて良かった…」

 

実はアレン、一度あの温和な大和の逆鱗に触れている

 

まだアイちゃんが産まれる前、それも愛宕とケッコンする前、アレンの部屋は結構汚かった

 

床には食べ終えたお菓子の袋

 

ベッドにはエッチな本が無造作に置いてあり、如何にも一人暮らしの男の部屋‼︎を体現していた

 

大和はそれを毎日片付けていたが、何度片付けようと次の日には散らかっていた

 

それが一カ月続き、とうとう大和がブチ切れた

 

「ちょっとは片付けろと…何度言ったら分かるんですかぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

大和が吠えた瞬間基地中のガラスと言うガラスが全て吹き飛び、壁に亀裂が入り、付近を飛んでいた旅客機の計器を数分間に渡って狂わせた

 

大和自身もまさかここまで甚大な被害が出ると思っておらず、吠えた後は大変申し訳無さそうな顔をしながら、妖精達と共に修理を行っていた

 

アレンはそれからケッコンし、アイちゃんも産まれて、キチンと片付けをする様になった

 

あの恐怖の出来事をラバウルの人間は”女神の鉄槌”と呼んでおり、大和だけは怒らせないように日々を暮らしている

 

「お父様、またき〜ちゃんとガン子ちゃんと遊んでね⁇」

 

「そうだぞイディオット。家族サービスも大切だ‼︎」

 

「分かった。約束な⁇」

 

清霜とは指切りげんまんをし、ガングートは頭を撫でる

 

清霜とガングートが去り、高雄の部屋に来た

 

「いらっしゃいませ」

 

アレンと健吾が店の奥に向かい、俺はレジ周辺の貴金属を見ていた

 

「これは…」

 

ショーケースにあったアクセサリーに目が行く

 

「その商品、結構売れ行き良いんですよ⁇」

 

「へぇ〜…」

 

と、言いながらアレンの方をわざとらしく見る

 

A&A maid…

 

デザイン、丈夫さ、そして価格

 

全てが万人受けする物だ

 

ちょくちょく横須賀で愛宕を見掛けたのはここに来てたのか…

 

ショーケースの中はもうほとんど無い

 

本当に中々の売れ行きの様だ

 

「この前もお父様が御来店なされて、お連れの方の為にお買い上げしていましたよ」

 

「どっちだ…」

 

「ふふっ、両方です」

 

言われてみれば瑞鶴はネックレスをしていた

 

親父に買って貰ったのか…

 

「これ貰えるか⁇」

 

「畏まりました。500円になります」

 

ショーケースの中にあるカチューシャを指差し、専用のケースに入れて貰う

 

中々のデザインなのに低価格

 

良い仕事するな

 

高雄に500円玉を渡した所で、アレンと健吾もレジに来た

 

アレンは大きめのサイズの女性モノのTシャツ二枚

 

健吾はマフラーを二本買っている

 

アイちゃんや大和にあげるんだろうな

 

「ありがとうございました〜」

 

高雄の部屋を出ると、時刻は夕方

 

そろそろそれぞれの基地で夕飯の時間だ

 

「そろそろ帰らなきゃな」

 

「楽しかったよっ」

 

「また遊びたいです‼︎」

 

「今度はワンコも誘ってやろう‼︎」

 

それぞれの基地に向かう二式大艇に乗り込む寸前まで話し込み、男三人の休暇は終わりを迎えた…




A&A maid…アクセサリー製作会社

デザイン良し、丈夫さ、低価格の三拍子揃った庶民的なアクセサリー製作会社

デザインが良く、尚且つ電探等の効果も付いてくる為、艦娘の間で徐々に人気が出て来ている

製造元に言えばオーダーメイドも可能

A&Aの正体はアレン&愛宕の頭文字

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