艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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181話 雷鳥、凶鳥、時々番犬(3)

遊戯場に着き、早速ボウリングを始める

 

相変わらずアレンは上手い

 

アレンはカーブ等小細工をせず、パワーだけでピンを倒して行く

 

そしてあまりボウリングをした事のない健吾も段々上達し始めて来た

 

1ゲーム終わり、ジュースを飲みながら一服する

 

「健吾。お前横須賀のボウリング見たら爆笑するぞ⁇」

 

「横須賀さんのボウリングですか⁇」

 

「ジェミニのボウリングの仕組みは未だに分からん…」

 

横須賀は時折ここのボウリング場で球を投げている

 

そして未だに”あの投げ方”だ

 

「お呼びかしら⁇」

 

巡回に来ていた横須賀が来た

 

「丁度良い‼︎お前一回投げろ‼︎」

 

「ストライク取ったら何かくれる⁇」

 

横須賀がにやけ顔で詰め寄ってくる

 

「今度ひとみといよと一緒にお買い物をセッティングする」

 

「これで行くわ‼︎」

 

デカい胸して、こう言う時は動きが速い

 

「うんしょ…よいしょ…」

 

持っているボウリング球は相変わらず一番重い球

 

それをガニ股でえっちらおっちらレーンの前まで運んで来る

 

「うりゃ‼︎」

 

ドンッ‼︎と音がし、三人はボウリング球を目で追う

 

数秒後、ピンが全部倒れる

 

「やったわ‼︎」

 

「な⁇」

 

「す…すごっ…」

 

「レイ‼︎ちゃんとセッティングしなさいよ⁉︎じゃあね〜‼︎ふふふのふ〜‼︎」

 

上機嫌のまま、横須賀はスキップしながらボウリング場を出て行った

 

俺達三人はタバコを咥えたまま、レーンの向こうで片付けられて行くピンを見ていた…

 

 

 

 

 

ボウリングが終わり、ザラのいるカウンターで軽食を挟む事にした

 

「ハンバーガーお待たせ‼︎」

 

三人の前にチンされたハンバーガーとポテトが置かれる

 

軽食なのでこれで良い

 

「そういや、アイちゃんのハンバーガーは美味かったな⁇」

 

「最近ジャンクフード作るのが好きでな、チキン、ポテト、シェイク…高カロリー何でも来いだ」

 

「大和の薄味に飽きた頃合いに出てくるから丁度良いんだ。俺は好きだよ⁇」

 

「健吾は良い子だ。よし、帰りにお菓子買ってやるからな⁇」

 

俺は健吾が無言でガッツポーズしたのを見逃さなかった

 

しかし、このザラのカウンターキッチンは中途半端に居心地が良い

 

ゲーム類の騒がしい音があり、暗過ぎず明る過ぎない

 

何とも言えない空間だ…

 

「そうだ。初月‼︎」

 

「はっ‼︎」

 

天井から降りて来た初月にメニューを渡す

 

「何か食え。何も食べてないだろ⁇」

 

「本当か⁇なら、大尉と同じのが良い‼︎」

 

「ザラ‼︎ハンバーガーとポテト追加だ‼︎飲みモンはコーラで‼︎」

 

「畏まりました‼︎」

 

ザラが準備をし始め、いざ初月が席に座ろうとした時だった

 

カウンターキッチンの向こうにあるスロットやパチンコのエリアでフィーバーが出た

 

「景気の良い音だ」

 

「‼︎」

 

音楽が流れ始めた途端、初月が急に踊り始めた

 

「ぶはははは‼︎初月⁉︎」

 

「どうしたんだよ‼︎」

 

「凄い軽やか‼︎」

 

いきなり踊り始めた初月に笑いを隠せない三人

 

「僕はこの曲を聴くと何故か踊ってしまうんだ‼︎止めてくれ‼︎」

 

「すぐ終わるさっ‼︎くふふっ…」

 

初月を止めようとするが、どうしてもシュールさが勝ってしまい、笑みが零れる

 

結局初月は数分間に渡って踊り続けていた

 

「ハァ…ハァ…」

 

ようやく曲が終わり、初月は息も絶え絶えにコーラを飲む

 

そりゃああんだけ手を上げ下げしたり反り返ったりしたらさぞしんどいだろう

 

「あの台…撤去してくれないかな…」

 

「にっ…くくっ…日本のニンジャはみんなそうなのか⁇」

 

アレンは笑いを堪えながら初月に質問をしようとする

 

「コウガのニンジャはみんなあれを聴くと踊り出すんだ」

 

「コウガ⁇」

 

「何かカッコいいな。コウガニンジャか…」

 

そこで健吾がふと気付く

 

「あっ。マークさんの所にいるあの子も踊るの⁇」

 

アサシオの事だ

 

マークとアサシオは時々二人でいるので、何となく存在が知られている

 

「アサシオはイガニンジャだから踊らない。情けない…護衛部隊は沢山いるのに僕だけだぞコウガは‼︎」

 

「イガニンジャ…」

 

「コウガニンジャ…」

 

「ニンジャって二種類いるんですね⁉︎ザラ知りませんでした‼︎」

 

健吾は日本産まれなので知っていたが、ザラ含めたその場に居た三人はニンジャには二種類あると初めて知った…

 

 

 

 

「ごちそうさま。僕は任務に戻る」

 

初月は食べ終わってすぐ、また天井裏に戻って行った

 

「おい。ちょっとスロット打とうぜ‼︎」

 

俺がニヤけながら二人の顔を見ると、アレンも健吾もニヤけながら天井を見上げた

 

「ん⁇」

 

天井から一枚紙切れが落ちて来た

 

”やめてくれ お願いだ”

 

「まっ。今日の所は勘弁してやろう」


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