艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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180話 涙の銃弾(2)

〜トラック基地・アルカトラズエリア〜

 

アルカトラズに着くと、早速蒼龍が居た

 

「そこから出たいですかぁ〜⁇」

 

「出せ‼︎俺は悪くない‼︎」

 

「いけませんねぇ。貴方達は私に食べられるんですよぉ〜⁇」

 

蒼龍は牢屋の中にいる囚人をマジックハンドでつつきながらおちょくって遊んでいる

 

「蒼龍」

 

「あっ‼︎レイさん‼︎」

 

俺を見るなり、蒼龍はスキップをしながら飛び掛かって来た‼︎

 

俺は必死に蒼龍の頭を掴んだり口の中に手を入れて食われるのを防ぐ

 

「んん〜っ‼︎指ぃぃぃぃ‼︎指を食わせろ‼︎」

 

「ストップ‼︎頼むからストップ‼︎ホラ‼︎これな〜んだ‼︎」

 

「コレ何ですかぁ⁇」

 

ポケットからタナトスに載っていた非常食である高カロリーの焼き菓子を出し、蒼龍にチラつかせる

 

「コレやるから離してくれ‼︎」

 

蒼龍はすぐに手を離し、焼き菓子を取った

 

「イデッ‼︎」

 

蒼龍が急に手を離した為、コンクリの地面に落ちた

 

「さて」

 

目の前には勿論牢屋

 

「この中で大規模艦隊に所属していた奴は⁇」

 

囚人達は沈黙を貫く

 

「蒼龍。こいつらの罪状は⁇」

 

「え〜と、死刑と無期懲役ですねぇ」

 

流石はアルカトラズ

 

極悪戦犯ばっかり入ってやがる

 

「死刑の連中は⁇」

 

「左の牢屋全部です」

 

「事情聴取は⁇」

 

「後は食べられるのを待つだけですよ〜」

 

「そっか」

 

俺は一番近い位置にあった牢屋の鍵を開け、囚人を一人出し、牢が群がる中心部に膝をつかせた

 

「え⁉︎いつの間に⁉︎」

 

俺はもみ合いの際に蒼龍の谷間から鍵を抜き取っていた

 

「正直に自分が何をしたか、研究員はどいつかを言えば刑期を無くしてやる。どうだ⁇悪くないだろ⁇」

 

「ちょっとレイさん‼︎」

 

焦る蒼龍に目もくれず、俺は囚人の目を見続ける

 

「お…俺はシステムの実験担当だった…その時、何人か犠牲を出した」

 

「研究員は」

 

「向かいの牢にいるあの男だ…」

 

向かいの牢には、此方を睨み付けている男が居た

 

「蒼龍、そいつを出してくれ」

 

「わ、分かりました‼︎」

 

蒼龍に鍵を返し、研究員を牢屋から出す

 

「レイさん‼︎提督から聞いたぜ‼︎何かあるなら手伝うよ‼︎」

 

タイミング良く江風が来てくれた

 

トラックさんが無線を入れていたのは江風だった

 

理由は、何か手伝える事があるなら手伝う事と、対蒼龍対策の為である

 

「こいつをあの潜水艦に運んで置いてくれ」

 

「おっしゃ分かった‼︎」

 

研究員は言葉を発しないまま、潜水艦に運ばれて行った

 

「もっ、もう良いだろ⁉︎全部話した‼︎」

 

残ったのは研究員の居場所をゲロった死刑囚

 

「あぁ。そうだな。蒼龍」

 

「え⁉︎良いんですかぁ⁉︎」

 

蒼龍はジリジリと死刑囚に滲み寄る

 

「や、止めろ…嘘だろ⁉︎」

 

「短くなったろ⁇」

 

「オヤツがおしゃべりしていますねぇ…」

 

「あがっ…ギャァァァァ‼︎」

 

蒼龍は死刑囚の右肩に噛み付き、肉を噛み千切る

 

「美味いか⁇」

 

「はひっ‼︎もひろんれすよぉ〜‼︎」

 

蒼龍は早速食べ始めており、口周りを血で汚している

 

「食い過ぎんなよ⁉︎」

 

「ん〜っ‼︎おいひ〜い‼︎」

 

こうなれば蒼龍は歯止めが効かない

 

駆逐艦の子達や、トラックさんを食べようとしなくなっただけ随分マシだろう

 

…残りは研究員だ

 

 

 

 

 

潜水艦に戻り、ボーちゃんを連れて研究員と江風のいる部屋に向かうと、江風は研究員を口にタオルを詰め込み、椅子に雁字搦めにして抑え付けていた

 

「ありがとう。これはお礼だ」

 

蒼龍と同じく、高カロリーの焼き菓子を江風に渡そうとした

 

「いーよ。提督のメシの方が美味いかんな‼︎じゃな‼︎」

 

江風はお礼を受け取らないまま、タナトスから出て行った

 

「さてっ…」

 

向かい側の椅子に座り、研究員の頭にボーちゃんを乗せる

 

研究員はボーちゃんに大層ビビり、椅子をガタガタ言わせながら逃げようとしている

 

「ボーちゃん。利用する様なマネして、本当にすまん」

 

《これでようやくマーカスさんの役に立てるね‼︎》

 

「お前は充分役に立ってるさっ」

 

ボーちゃんの頭を撫で、研究員に質問を始める

 

 

 

 

質問を繰り返して行く内に、幾つか分かった

 

あまぎりさぎり他多数は建造装置から産まれ、まつわ…そしてもう一人は誘拐によって確保されたらしい

 

俺はその話を聞いて耳を疑ったが、それ以上でも以下でもない情報しか、彼は知っていなかった

 

そして、本題に入る

 

「まつわを誘拐したのはお前だな⁇」

 

《手頃な実験体が居なかったからしたまでだ》

 

研究員は自分の考えを読まれているのに気付き、頭を振ってボーちゃんを剥がそうとする

 

暴れる研究員を無視し、俺はボールペンでバインダーに挟んだ紙に、聞いた質問と答えを書き上げて行く

 

「まつわの母親はどうした⁇」

 

《狙いはまつわだけだった。が、母親が暴れたもんで口封じの為に誘拐した》

 

「その後はどうした」

 

《あのシステムは一定の年齢を重ねると反応しなくなる。大層美人だったから、おおよそ男達の慰み者にでもなったのだろう》

 

「チッ…」

 

持っていたボールペンをへの字に叩き折る

 

「最後に聞く…まつわに何をした」

 

《我々に従順になる様な洗脳、訓練、調教さっ》

 

「…ボーちゃん、データは取れたか⁇」

 

《全部取った‼︎》

 

「よくやった。食堂にジュースとお菓子置いてあるから食べて来い」

 

《やったぁ‼︎》

 

ボーちゃんは研究員の頭から離れ、床に降りた後、部屋から出た

 

ボーちゃんが出た後、俺は研究員に見せびらかす様にピストルを出した

 

「悪いがお前に慈悲は無い。今から込める銃弾は、お前に連れ去られた一人の女の子の怒りと悲しみが込められてる…」

 

研究員は目の前で込められて行く銃弾に冷や汗を流す

 

ピストルに”二発の弾”が込められ、首に銃口を向ける

 

「この一発は…お前の身勝手によって人生を奪われた女の子の涙だ‼︎」

 

研究員の喉を撃ち抜き、背後の壁に血が吹き飛ぶ

 

研究員は辛うじて生きてはいるが、喉に風穴が開き、絶命するのも時間の問題だ

 

「そしてこの一発は俺と…俺の”母さん”の怒りだ‼︎」

 

今度は眉間を撃ち抜く

 

「地獄で研究してな。ちったぁ退屈凌ぎになんだろ⁇俺からの長い長い宿題だ」

 

「だぁ〜っ‼︎何やってんでちぃ‼︎」

 

タイミング悪くゴーヤが部屋に入り、大股を開きながら頭を抑える

 

「タナトスを汚すなとあれ程言ったでち‼︎」

 

「わ、悪い…」

 

「ったく…トラックさんの所に行って来るんでちな」

 

「土下座してくるよっ…二人犠牲を出した」

 

「今更一人二人殺した所で変わんないでち‼︎」

 

「まぁな」

 

ゴーヤは相当頭に来ているらしい

 

ゴーヤはタナトスの艦内を意図的に汚されるのを相当嫌う

 

いよとひとみのお菓子のカス等は笑って許すが、今回の様に意図的に殺人等をするとメチャクチャキレる

 

「そんなに汚れるのイヤか⁇」

 

「好きな人の前では、綺麗でいたいでち…」

 

「お前…」

 

「あ〜もぅ‼︎とっとと行くでち‼︎このク創造主‼︎だぁ〜もぅ‼︎何でこんな爆散するんでちか‼︎」

 

ゴーヤにその場の処理を任せ、トラックさんの所に戻って来た

 

「執行は完了しましたか⁇」

 

「二人犠牲を出した」

 

「そうですか…」

 

トラックさんは随分落ち着いていた

 

その答えはすぐに出た


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