艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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179話 一番最初のお友達(2)

工廠に戻り、カプセルの後片付けをする

 

「ねぇ、レイ。まつわの持ってたあの名札って…」

 

やはりきそも不思議に思っていた様子だ

 

あの名札…

 

あれは幼稚園児が付ける名札だ

 

それが鞄に入っていた

 

「調査が要るな…それと、何とかして意思の疎通法も作らなきゃな」

 

「僕、まつわの過去を調べてみるよ。レイは意思疎通の方法お願いしていい⁇」

 

「何から何まですまんな…」

 

「気にしないで‼︎調べ物得意なんだ‼︎」

 

後片付けが終わった後、きそは食堂からオヤツを持って来て、PCの前に座った

 

俺は食堂の椅子に座り、言われた通り、まつわとの意思疎通方法を考える

 

そのまつわは、お昼寝の為に子供部屋に向かった貴子さんにしっかりとしがみ付いたまま、一緒に向かっているらしい

 

「みんなお昼寝しゃったぁ」

 

「眠たくない」

 

”(・ω・)”

 

子供部屋から、れーべとまっくすが戻って来た

 

まっくすの頭の上にはボーちゃんがいる

 

れーべとまっくすはソファに座り、シュネッケンを齧りながらニュースを見始めた

 

「遠くに行っちゃダメ。分かった⁇」

 

”(-_-)b”

 

ボーちゃんはまっくすに許可を貰い、その辺をウロウロし始めた

 

” ̄(・_・”

 

ボーちゃんが足をつついて来た

 

「どうした⁇」

 

ボーちゃんを机の上に置き、電子の顔を見る

 

”_φ(・_・”

 

どうもボーちゃんは何かを伝えたいみたいだ

 

裏が白い広告とボールペンを持って来て、ボーちゃんの前に置く

 

”_φ(・ ・”

 

ボーちゃんは触手でボールペンを持ち、広告の裏に文字を書き始めた

 

”\(・ ・)/”

 

書き終えた広告の裏を見る

 

”こえをだすそうちほしい”

 

「なんだ⁇みんなとお喋りしたいのか⁇」

 

頬杖をつきながら、半笑いでボーちゃんの電子の顔を見る

 

”_φ(・ ・”

 

ボーちゃんは再び何かを書き始め、また俺に見せる

 

”まつわのかんがえてることわかる”

 

その文字を見て、話が一気に変わる

 

「ホントに言ってんのか⁇」

 

”くうぐんうそつかない”

 

「お前は海軍だろ‼︎」

 

”(^_^;)”

 

「…分かった。ちょっと待ってろ。嘘付いたら、まっくすに一週間接近禁止な⁇」

 

”( ̄^ ̄)ゞ”

 

どうも嘘は吐いていない様子だ

 

音声のシステムなら話は早い

 

AIの為の音声プログラムがあり、それをボーちゃんにインストールすれば良い

 

早速工廠からプログラムを入れたUSBを取り、食堂に戻って来た

 

「後ろ向いてみ」

 

”(・ ・”

 

ボーちゃんの後ろ部分を開け、中の装置を出す

 

「痛くないか⁇」

 

”∧( 'Θ' )∧”

 

「あ、そうか」

 

後ろ部分を開けられたボーちゃんは一時的に機能停止状態になっている

 

ボーちゃんのプログラムにUSBを繋ぎ、手早く音声システムを組み込み、後ろ部分を閉める

 

「そらっ、出来たぞ⁇」

 

”(≧∇≦)”

 

「音声装置は元から付いてるから、もう使えるだろう。ちょっと話して見てくれ」

 

《まーかすさん、ありがとう》

 

「良い子だ」

 

少しぎこちない気もするが、初期段階でこれだけ言えれば上出来だろう

 

「ただいまぁ〜」

 

タイミング良くまつわを抱っこした貴子さんが帰って来た

 

まつわは俺を見るなり、貴子さんの所から俺の所へと手を伸ばして移ろうとしている

 

「おいでっ」

 

「よいしょ…」

 

まつわを預かると、相変わらず俺の服を力強く握り締める

 

「ありがとう、貴子さん」

 

「いいのよっ。また抱っこさせてね⁇」

 

貴子さんが台所に入り、俺はまつわと一緒にボーちゃんの方を見る

 

まつわはボーちゃんに気付くなり飛び上がる様にビックリし、震えながら俺にしがみ付く

 

《まつわちゃん、怖がらないで》

 

「大丈夫。この子は友達だ」

 

俺とボーちゃんの言葉を聞き、まつわは震えつつもボーちゃんの方を見た

 

《僕はボーちゃん。君のお友達》

 

まつわは口を縦に開けて俺の顔を見た

 

「まつわのお友達だってさ⁇」

 

まつわは服を掴んでいた片方の手を離した

 

ボーちゃんに触れようとしている

 

「まずは手を触ってみるか」

 

まずは俺がボーちゃんの触手に触れ、危険が無い事を教える

 

まつわは何度も俺とボーちゃんの顔を交互に見ながら口を縦に開ける

 

そして、まつわがボーちゃんに手を伸ばす

 

最初はチョンチョンと指先でボーちゃんの触手をつつき、安心だと分かると、ボーちゃんの触手を手の平に置いた

 

《よろしくね》

 

非常に分かり難いが、ようやくまつわが笑った

 

《まーかすさん、約束を守ります》

 

「お…」

 

ボーちゃんはまつわの胸元で持たれ、俺はまつわを膝の上に乗せ換えた

 

《おにいちゃんは、まつわのみかた⁇》

 

「あらっ⁉︎」

 

貴子さんが台所越しに驚き、まつわは更に口を縦に開け、目を大きく見開く

 

「勿論さ‼︎」

 

《たすけてくれて、ありがとう》

 

「此方こそ…生きていてくれてありがとう」

 

親友が出来たまつわは、嬉しそうにボーちゃんを抱き締める

 

「ボーちゃんが喋ってる」

 

「レイは凄いや‼︎」

 

「褒めてくれてありがとう。まっくす、しばらくボーちゃんをまつわに貸してやってくれないか⁇」

 

「うん。いいよ。私に変態行為しなくなるから」

 

《まっくすは柔らかくて、触り心地最高》

 

「まつわ。ボーちゃんに何かされたらすぐ言って。ボーちゃん蹴り飛ばすから」

 

《だいじょうぶ。まつわ、ボーちゃんすき。まっくすさん、ありがとうございます》

 

「でも、たまには私にも貸して。…たまに愛おしくなる」

 

《わかった。かしてくれてありがとう‼︎》

 

まっくすとれーべは再びソファに戻った

 

「ボーちゃん。お前凄いな⁇」

 

《脳波を読み取るのは、ボーちゃん得意》

 

「まつわ、ボーちゃんを大切にな⁇」

 

《うんっ‼︎おにいちゃん、ありがとう‼︎》

 

まつわは俺から離れ、テレビの前に座り、ボーちゃんを膝に置いている

 

「工廠にいるから、何かあったら呼んでくれ」

 

「分かったわ‼︎」

 

ようやく工廠に落ち着き、きその調査を聞いてみる


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