艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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175話 ピクセルガール(3)

「きそ‼︎」

 

「も、もう大丈夫⁇」

 

いつの間にかPシールドを手にしたきそが、工兵を護りながら物陰から出て来た

 

「クラウディア」

 

「はい」

 

「あれが”護る”って行為だ」

 

「護る…」

 

クラウディアは再び右手を前に出し、Pシールドのコピーを造り出す

 

「これは盾だ」

 

「盾…盾は、人を護る道具…」

 

「凄い…」

 

「凄いです…」

 

きそと工兵は、目の前で起きた不可思議な現象にため息を吐く

 

クラウディアは盾をしっかりと記憶した様だ

 

のちの調査結果によると、クラウディアは興味本意で建造装置のシステムを弄ってしまい、モデルを設定した建造装置は、近くに居たAIのクラウディアを取り入れる知能と判断してしまったとの結果が出た

 

 

 

 

次の日…

 

「さ〜て、お仕事お仕事っと‼︎」

 

「ジェミニ様。粗方の執務は終わらせておきました。後はジェミニ様本人が決断する執務のみを残してあります」

 

「あらっ‼︎ありがとぉ〜‼︎」

 

クラウディアは元の横須賀の付き人に戻っていた

 

AIの時に作業を見ていたのもあるだろうが、クラウディアはボディを得てから、まるでスポンジで水を吸うかの様にどんどん記憶を増やして行き、たった一日で粗方の事を覚え、横須賀の雑務を午前中には終わらせる事が可能になった

 

その分横須賀は繁華街を見回りをする時間を増やしたり、艦娘の子達と接する時間を増やす事にした

 

「ジェミニ様は子沢山ですね」

 

「そう⁇こんなモンじゃない⁇」

 

執務室で双子の姉妹に面倒を見られている、三人の妹達

 

そんな彼女達を見つめる、横須賀とクラウディア

 

「ジェミニ様。赤ちゃんはどうしたら出来るのですか⁇」

 

「く、クラウディア‼︎今日はアンタも見回りに行くわよ‼︎」

 

横須賀は上手い具合に話を反らせた

 

「私もですか⁇」

 

「そうよ。朝霜、磯風。みんなをお願いね⁇」

 

「あぁった‼︎」

 

「分かった」

 

朝霜と磯風に子供達を任せ、横須賀とクラウディアは外に出た

 

「あらっ‼︎レイだわ‼︎」

 

外に出たと同時に、滑走路にグリフォンが降りて来た

 

サンダース隊の演習が終わり、今から多分恐らくきっと繁華街に向かう

 

「なるほど…ジェミニ様はよほど創造主様がお好き…と」

 

クラウディアは歩きながら微笑む

 

自分のパートナーである横須賀は、自分の創造主を見ると、とても明るい顔に変わる

 

クラウディアはそんな横須賀の顔を見るのが好きになっていた

 

「喉乾いた‼︎」

 

「足柄の所でラムネ飲むか‼︎」

 

きそとレイがグリフォンから降りて来た

 

「あ‼︎お母さん‼︎」

 

きそは横須賀を見るなりすぐに抱き着きに行った

 

「巡回か⁇」

 

「そっ。繁華街行くから、アンタも来なさい」

 

「分かった。どうだクラウディア⁇横須賀は駄々こねて無いか⁇」

 

「大丈夫です、創造主様」

 

クラウディアの頭を撫で、繁華街に向かおうとした

 

「あ‼︎そうだクラウディア‼︎名前登録しなきゃ‼︎」

 

「名前…ですか⁇」

 

「そっ。みんなAIの時とボディの時と名前が違うんだ」

 

「僕はこの状態の時はきそ。AIの時はグリフォンなんだよ‼︎」

 

「なるほど…」

 

早速工廠に向かい、きそがPCの前に座る

 

「さて、どうしよっか⁇」

 

「クラウディアは付けたい名前はあるか⁇」

 

「う〜ん…」

 

クラウディアは産まれて初めて悩む感情を見せた

 

名前を付けるのには、悩む事を覚えさせる目的もある

 

大体は少し悩んだ後にきそが付けるが、勿論その子がそうしたいと言えばその名で登録する

 

「何だっていいよ⁇」

 

「そう…ですね…」

 

クラウディアは考える

 

そして、ふと自分が造られた数列を思い出した

 

10840ピクセル…

 

自分が電子の海で活動する際に与えられたピクセル数だ

 

そして、昨日朝霜達が数字の語呂合わせをして遊んでいたのを思い出した

 

「お…や…し…お…」

 

「おやしおにする⁇」

 

「はい。”親潮”にします‼︎」

 

「良い名だ」

 

「良い名前ね」

 

「じゃあ親潮で登録するね‼︎」

 

きそに登録を済ませて貰い、ドッグタグを貰う

 

「これは失くしちゃダメだよ⁇クラウディアが親潮である証拠だからね⁇」

 

「ありがとうございます」

 

クラウディア改め、親潮はきそからドッグタグを受け取る

 

親潮がドッグタグを受け取った瞬間、誰かのお腹が鳴った

 

「お腹が鳴りました。これは…」

 

鳴ったのは親潮のお腹

 

「ははは‼︎親潮、それは立派に生きてる証拠だ‼︎」

 

「ご飯食べよっか‼︎僕もお腹空いちゃった‼︎」

 

「ご飯は午前7時14分に頂きました」

 

「それは朝ご飯よ⁇人は朝、昼、晩にご飯を食べるの。さっ、行きましょ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

横須賀はきそと手を繋いで、少し先を歩き始めた

 

親潮は仕事はかなり上達しているが、一般常識はまだまだ足りていない

 

不安な面はまだまだ多いが、横須賀の教育もしっかりしているみたいだ

 

「創造主様。クラ…親潮、まだまだ学ぶ事が多いです」

 

「横須賀が色々教えてくれる。あいつはあぁ見えて、結構母性が強いからな」

 

「ジェミニ様がきそ様と手を繋いでいる行為も、母性の一つですか⁇」

 

「やってみるか⁇」

 

「はい」

 

親潮は俺と手を繋いで歩き始めた

 

「人の手は暖かいのですね…創造主様も母性をお持ちなのですか⁇」

 

「俺のは母性じゃなくて父性だな」

 

「父性…」

 

「女の人は母性。男の人は父性だ」

 

「では、親潮が持つとすれば母性…ですか⁇」

 

「そっ」

 

「なるほど…」

 

前を歩く二人…そして親潮を見ながら思った

 

こうして久々に質問攻めを受けるのも悪くない…と

 

 

 

 

クラウディア改め、”親潮”が横須賀に所属しました‼︎




親潮…スーパーコンシェルジュちゃん

レイがタバコを吸いながら造ったコンシェルジュ型AIの2号、クラウディアがボディを持った姿

1号はアイリスもといはっちゃん

横須賀の為に造られたAIなので、レイの所にいる事は滅多に無いが、産みの親であるレイには、少なからず恋心に似た尊敬は抱いている

AIの時でもボディを持っても、少し見た仕事を瞬時に覚え、更に効率化する事が出来る適応変化能力を備え、誰かの為に尽くす事で喜びを感じる

ただ、一般常識がまだまだ弱く、簡単な事をあまり知らない

ボディを持った時にだけ、適応変化能力が異常に発達し、更に素早く危険を察知出来る様になり、手身近にある武器のコピーを造り出して戦う事も出来たり、自分のボディスペック以上の武器を使用したり出来る様になる

おっぱいは身長相応にあるらしい

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