艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、174話が終わりました

今回のお話は、ちょっと不思議な少女のお話です


175話 ピクセルガール(1)

その日、横須賀の格納庫でクラウディアがメンテナンスに入っていた

 

妖精達が機体の各部位の点検に移り、俺はAIの方のクラウディアのメンテナンスに入っていた

 

「クラウディアには感謝しなくちゃね⁇」

 

「そうだな。一度命を救われてるしな」

 

きそと共に、機体の方のクラウディアを見る

 

《お褒め頂き、光栄です》

 

クラウディアが話す度に、PCに表示された円形のメーターが上がったり下がったりする

 

一時的にPCに移ったAIの方のクラウディアが俺達に話し掛けて来た

 

「そう言えばクラウディアの産まれた経緯聞いてないや」

 

きその疑問は良い疑問だ

 

俺はAIを産む時、理由は必ず要ると思っている

 

それは人間がより快適に暮らせる様になる等、何だって良い

 

極論を言えば、破壊の為に産んだって構わない

 

それが産まれた理由なら、その子にだって産まれて来た意味はある

 

一番情けないのは、何の理由も無くAIを産む事だ

 

俺の産んだAIだけかも知れないが、AIはふとした瞬間、産まれた意味を考える

 

その時に産まれた意味を説明すると、AIはその為に今以上に一生懸命尽くしてくれる様になる

 

現に俺はアイリスをコンシェルジュ代わり、タナトスを破壊の為に産んでいる

 

そう。AIは元来、人間の私利私欲の為に存在する

 

後は周りの人間が如何にして接してやるかが問題だ

 

そして、クラウディアが産まれた理由は…

 

「クラウディアは横須賀が考えたAIなんだ」

 

「お母さんが⁇」

 

「そっ。忠実に動いて、私をサポートしてくれて、絶対に裏切らないAIを産んで欲しいってな」

 

《私のパートナーの設定は創造主様ではなく、ジェミニ・スティングレイ様となっています》

 

クラウディアも本来はアイリスと同じく、コンシェルジュ目的で造られたのだ

 

《現在、ジェミニ様から創造主様へ”貸し付け”をしている状態です》

 

「あ、あはは…お母さんが言いそうだ…」

 

「いいかクラウディア。真似しちゃいけないと思ったら、真似しなくてもいいんだぞ⁇」

 

《畏まりました。次回から言葉を選びます》

 

「良い子だっ」

 

クラウディアは勤勉な子だ

 

人から沢山の事を学んで、沢山記憶する…

 

 

 

 

”大体終わったで‼︎”

 

”えぇ機体や‼︎”

 

メンテナンスを終えた妖精達が足元に来た

 

「サンキューな。お菓子食うか⁇」

 

”食べる‼︎”

 

”ちょうだい‼︎”

 

妖精達を机の上に乗せ、小皿の上にクッキーを数枚置き、早速クッキーを食べ始めた

 

「さてっ‼︎俺達も何か食うか‼︎」

 

「うんっ‼︎クラウディア、お散歩するなら横須賀のネットワークだけだよ⁇」

 

《畏まりました。行ってらっしゃいませ》

 

きそがクラウディアに釘を刺した後、俺ときそは昼ご飯を食べる為に格納庫を出た

 

 

 

 

俺ときそが去った後、クラウディアは電子の海を散歩していた

 

散歩と言っても、きそに言われた通り、ちゃんと基地内のネットワークのみに抑えている

 

AIとは言え、クラウディアだってお年頃。一人でお出掛けしたい

 

《これは…創造主様の秘蔵ファイル…》

 

クラウディアは俺の秘蔵ファイルを開いた

 

《グラーフ様の写真…》

 

そのファイルの中には、グラーフの写真が沢山入っていた

 

極々稀に誰も居ない時にスライドショーで見る事が些細な楽しみだったが、クラウディアに簡単にバレた

 

《…見なかった事にしましょう》

 

クラウディアはファイルをそっと元の位置に戻した

 

《色んなファイルがあります》

 

横須賀の基地には色んなファイルがあった

 

ほとんど開けられないが、幾つかは開ける事が出来た

 

その中の一つに”妙高”と名付けられたファイルがあった

 

クラウディアはそのファイルを開けてみた

 

《わぁ…》

 

中には文章で埋め尽くされたメモが出て来た

 

《…》

 

そのメモには、恋愛描写が沢山出て来る小説が書いてあった

 

クラウディアはそのメモに夢中になった

 

粗方読み終わった後、クラウディアはメモをファイルに仕舞い、元の位置に戻した

 

《これは⁇》

 

次に目に入ったのは、何かの内部システム

 

そこにはモデルを打ち込むか、写真を入れる空欄があり、横には細かな設定が出来る小さな空欄が並んでいた

 

クラウディアは興味本位でそれに触れてみた


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